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2 不思議なお城

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 しかし、誰の返事もない。乙葉は仕方なく、上までいくことに決めた。でも、その木のまわりに階段は存在しなかったため、どうやって上までいけばいいのか考えながら、木のまわりをぐるっと一周してみた。
 すると、長いロープが、木の上から垂れているのを見つけ、
「もしかして、このロープを使って上まで登れってこと?」と、眉をしかめながら乙葉が呟いた。
「いやいや無理よ、そんなの。できるわけないじゃない」
 乙葉は自問自答した。
 そしてどうしたらいいのか、しばらく頭をひねって考えた。
「でも、なんだかんだいう前に、まずはやってみるべきよね」
 そのあと、しっかりとロープをつかんで、ありったけの力を出しながら、乙葉はゆっくりと、上まで登っていった。
 しかし、なんとか三分の二くらい登ったところで、乙葉は体が辛くなり、このまま手を離してしまいたい気持ちになっていた。
「きつい、きつすぎるわ……ロープで登るなんて、やっぱり私には無理だったのよ」
 乙葉がロープに吊り下がりながら、そう弱音を吐いた。
「どうしよう。もうここで上まで登るのはあきらめて、ほかの場所を探そうかしら……」
 でも、あとすこしで上まで登りきれるというのに、ここであきらめてしまうの? 乙葉の心の中で、もう一人の自分が、そう言ってくるのが聞こえた。
「ええ、そうよ。だってつらいもの」
 ダメよ。柚子がどうなってもいいの? またしても、もう一人の自分が、乙葉に語りかけた。
「わかったわ、登るわよ。登ればいいんでしょ」
 もう一人の自分に文句を言いながら、乙葉は根性を出して、さらに上まで登り出した。
 腕が引きちぎれるのではないかと思うほど、体が悲鳴を上げていたが、乙葉はまもなくして、なんとか木の上にたどり着くことができた。
「はあ、やっと、これた」
 そう言った途端、乙葉は木の床にドサッと倒れ込んだ。
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