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2 不思議なお城
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そして銀司は、ルーカスをこれ以上好き勝手にさせないように、片手で脇にはさんだ状態で、捕まえたままにしておくことにしたようだった。
久遠と銀司はそれから、バーサークの広い部屋の中をふたたび探そうとして、それぞれ別の方向に歩き出した。
その瞬間、下に放り投げてあったメリケンサックを、運悪く銀司が踏んでしまい、大きな音を立てて、ルーカスもろとも派手に転び出した。
「いってえ」
しかめ面をした銀司が、自分の尻を痛そうになでた。となりにいるルーカスは、うつ伏せになって、すっかり伸びてしまっている。
久遠はその惨事を見て、みるみると顔が青ざめていった。そしてもうすべてが終わりだと、絶望まで感じていた。
バーサークはというと、派手にうなりだし、ベッドもぎしぎしと大きく揺れて、さすがに起きそうな雰囲気になっていた。
銀司は大急ぎで、青ざめて体が固まっている久遠と伸びているルーカスをつれて、三人が隠れられそうな大きな鉄のクローゼットの中に入り込んだ。
そのあと、三人はすこしだけ開いた隙間から、バーサークをおそるおそる見た。すると、両頬や鼻にかけて大きくマヌケと書かれたバーサークが、パチッと目を開けて、起き上がったのが目に入った。
そして、ヘッドボードに置いてあった目覚まし時計を手にとると、
「ふぁーあ、まだ起きる時間じゃないぞ」と、とても眠たそうにして言った。
「それにしても、さっきはなにか物音が聞こえてきたような気がするんだが、気のせいだったか?」
自分自身に問いかけるように、バーサークが言った。
その時、相変わらずクローゼットの中で息をひそめていた久遠たちは、バーサークが自分たちに気づかないことを、必死に祈っていた。
「まあ、すこしはやいが起きるとするか」
そう言うと、重たい体のバーサークは、どっしりとベッドからおりた。
「ん? なんだ、この機械は……」
バーサークは床に落ちてあるものを見て、けげんそうに言った。
この時、久遠は自分のポケットを触って、しまったと思った。いつの間にか床にトランシーバーを落としてきてしまったのだ。
久遠と銀司はそれから、バーサークの広い部屋の中をふたたび探そうとして、それぞれ別の方向に歩き出した。
その瞬間、下に放り投げてあったメリケンサックを、運悪く銀司が踏んでしまい、大きな音を立てて、ルーカスもろとも派手に転び出した。
「いってえ」
しかめ面をした銀司が、自分の尻を痛そうになでた。となりにいるルーカスは、うつ伏せになって、すっかり伸びてしまっている。
久遠はその惨事を見て、みるみると顔が青ざめていった。そしてもうすべてが終わりだと、絶望まで感じていた。
バーサークはというと、派手にうなりだし、ベッドもぎしぎしと大きく揺れて、さすがに起きそうな雰囲気になっていた。
銀司は大急ぎで、青ざめて体が固まっている久遠と伸びているルーカスをつれて、三人が隠れられそうな大きな鉄のクローゼットの中に入り込んだ。
そのあと、三人はすこしだけ開いた隙間から、バーサークをおそるおそる見た。すると、両頬や鼻にかけて大きくマヌケと書かれたバーサークが、パチッと目を開けて、起き上がったのが目に入った。
そして、ヘッドボードに置いてあった目覚まし時計を手にとると、
「ふぁーあ、まだ起きる時間じゃないぞ」と、とても眠たそうにして言った。
「それにしても、さっきはなにか物音が聞こえてきたような気がするんだが、気のせいだったか?」
自分自身に問いかけるように、バーサークが言った。
その時、相変わらずクローゼットの中で息をひそめていた久遠たちは、バーサークが自分たちに気づかないことを、必死に祈っていた。
「まあ、すこしはやいが起きるとするか」
そう言うと、重たい体のバーサークは、どっしりとベッドからおりた。
「ん? なんだ、この機械は……」
バーサークは床に落ちてあるものを見て、けげんそうに言った。
この時、久遠は自分のポケットを触って、しまったと思った。いつの間にか床にトランシーバーを落としてきてしまったのだ。
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