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2 不思議なお城

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「いやあ、よく寝た」
 肩をまわしながら銀司が言った。
「それはよかったですね」
 棒読みで久遠が言った。
「なんか悪かったな。勝手に一人で寝ちまって」
 悪かったなというわりには、あまり気持ちがこもっていない言い方を銀司がした。
「あれから僕、ずっと一人で探してたんですからね。ルーカスさんもルーカスさんで、遊んでばっかりだったから。二人とも、ちゃんと反省してくださいよ」
 眉をしかめ、不服に思った久遠が言った。
 しかし、二人の頭上を浮いているルーカスは、ほかのことに気をとられていて、久遠の話など、まるで聞いていないようだ。
「その代わり、次は絶対に俺も一緒に探すから。だから兄ちゃん、すこしは機嫌なおしてくれよ」
 久遠の肩をわざとらしく両手で揉みながら、銀司が言った。
「そんなの、当たり前ですよ」
 久遠が断言した。
「次寝たり遊んだりしたら、二人とも置いていきますからね。いいですか? 銀司さん、ルーカスさん」
「うん、わかった」
 ルーカスは返事をしても、あまり危機感を感じていないように見えた。銀司も、なんとかなるだろうと軽く考えているのか、お気楽そうに見える。
 そんな二人を見て、久遠は大きくため息をついた。
 三人はいま、二階からバーサークの眠る頂上へと上っている最中だ。二階にはいくら探しても鍵がなかったため、最終手段として、とうとうバーサークのいる部屋を探すことになったのだ。
 しばらく階段を上っていると、行き止まりになった。右側には鉄でできた頑丈な扉がついていて、ここがバーサークの部屋だということがすぐにわかった。
「着きましたね」
 久遠が小声で言った。
 緊張からか、銀司は唾を飲み込むと、
「ここに、あのイカれた野郎が寝ていやがるんだよな」と言った。
「そうだよ」
 三人の中で唯一ルーカスだけが、平気そうにしながらそう答えた。
「なあ、本当にここに入るのか?」
 入るのがいやなのか、いまさらになって、銀司が確認してきた。
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