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2 不思議なお城

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「おい、兄ちゃん。頼む、なるべく俺の前を歩いてくれねえか?」
 ようやく、長い長い階段を、三人で上りきろうとしていたところで、突然、銀司が言った。
「え? いきなりどうしたんですか?」
 銀司の近くにいた久遠が、おどろいて言った。
「いや、別になんでもねえんだけどよ」
 そう言いながら、バツが悪そうに、銀司が視線をそらした。
「はっはーん。さては銀司、先頭に立って歩くのがこわいんだ?」
 ルーカスが空中で浮かびながら、銀司を見下ろして、バカにしたように言った。
「ちがっ……そんなことあるわけ、ね、ねえだろ?」
 あきらかに動揺しながら、銀司が言った。
「わかりやすーい」
 ぷぷぷと口を押さえて笑いながら、ルーカスが言った。
「久遠、臆病な銀司のために、先頭に立ってあげたら?」
「う、うるせえぞ、てめえ。一言余計なんだよ」
 もはや銀司がこわがっていることは、二人には見え見えだった。
 久遠は顔をしかめると、
「わかりましたから、みなさん、すこし静かにしてください。バーサークが起きてしまうかもしれませんよ」と注意した。
「すまねえ」
 申し訳なさそうに銀司が謝った。
「そうだよ、銀司。静かにしないと」
 すかさずルーカスも、久遠と同様、銀司に向かって注意した。
「いや、おめえもだろ」
 銀司が歯切れよく言った。
「だから二人とも、うるさいですよ」
 苛立ちながら久遠が言った。
 そのあと、久遠は銀司に言われたとおり、先頭に立って、二階に向かって歩いた。
 三人は二階にたどり着くと、階段の前でまわりの様子を警戒して見ながら、一旦立ち止まった。
 二階には部屋がいくつもあって、すべての部屋を見終わるには、かなりの時間がかかりそうだった。一見、危険な仕かけなどはなにもないように見えるが、久遠には、それがまたこわく思えた。誰かが不用意に行動すれば、すぐにでも、なにかよからぬことが起きてしまいそうな雰囲気だからだ。
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