ルーカスと呪われた遊園地（下）

１ 小さなリス

４９

　そう言うと、ムムは柚子から、腕時計を受けとった。
「僕、誰かに物をもらうのなんて、とても久しぶりで、本当になんて言ったらいいか……」
　目を輝かせながら、ムムが言った。
「すごく感激しています！」
「それはよかった」
　ほほえましく柚子が言った。
「あの、せっかく感激してるところを邪魔して悪いんだけど、はやく食べる物を持ってきてくれない？」
　あまりの空腹でどうにかなってしまいそうだった柚子は、ムムに食べ物を催促さいそくした。
「はい！　すぐに持ってきます！」
　ムムは一目散に階段を上って、食べ物をとりに地下から出ていった。
　それからしばらく経つと、ムムが腕いっぱいに、リンゴやみかん、ぶどうなどの果物を、大量にたずさえて戻ってきた。
「わあ、こんなにたくさん」
　柚子はおどろいて目を丸くした。
「すてきな腕時計のお礼です」
　ムムが笑顔で言った。
「どうぞ、好きなだけ食べてください」
　そう言うと、ムムは胸に抱えていた溢れんばかりの果物を、次々に檻の中へと入れていった。
　柚子はその瞬間、ものすごい勢いで果物を受けとった。しかし、途中で我慢ならずに、持っていたリンゴをすこしばかり見つめたあと、思いきりかじりついた。
「おいひい……！」
　もぐもぐと頬張りながら、柚子が言った。
「ムム、あひがほう」
「どういたしまして」
　華麗かれいにお辞儀をしながら、ムムが言った。
「これも柚子様のためですから。あ、でも、食べ終わったあとの皮や芯のゴミは、すべて僕にくださいね。あとでバーサーク様にバレでもしたら、僕がこっぴどく叱られてしまいますから」