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1 小さなリス

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「まったく、なによあいつ。なにが俺たちだけで探す、よ。ずいぶんと威張いばったこと言ってくれちゃって。本当にあの四人だけで、探すことができるっていうの?」
 乙葉が噴水で洗濯をしながら、腹を立てて言った。
「すこしは私たちのことも、信用してくれたっていいのに」
「まあまあ乙葉ちゃん」
 おなじく内田も、乙葉のとなりで、洗濯をしながら言った。
「きっと京一くんは、城で危険なことがあっても、自分の手で乙葉ちゃんを守りきれないんじゃないかと、不安に思っているんだと思うよ」
「え? 別にそんなこと……」
 乙葉の声は先細りになった。
「だって、ジェットコースターの時だってそうだったでしょ? 乙葉ちゃんを助けたのは、京一くん自身じゃなくて、結局ルーカスの方だった。だから次も万が一そうなってしまったら、京一くんはもう一生、立ち直れないと思うんだ。だから、そういう京一くんの気持ちも、すこしは考えてあげてよ。ほら、京一くんだっていってたでしょ? 大切な幼なじみの乙葉ちゃんたちを、これ以上危険な目にわせたくないんだって」
 優しくたんたんと、内田が話した。
「だから、ね? そんなにおこらないであげてよ」
「それはそうかもしれないけど、本人がいきたいっていうんだから、それをすこしは尊重してくれてもいいのに」
 まだ納得できない乙葉は、不満を口にした。
「まあ、それはそうだけどね」
 困りながら内田が言った。
「でも、京一くんは根っからの頑固者だっていうし、仕方ないよ」
「はい……ああ、もう、むしゃくしゃする!」
 そう言うと、乙葉は洗濯物を、強めにゴシゴシと洗いはじめた。
 内田はそんな苛立った様子の乙葉を見て、
「あはは……」と、苦笑いをするだけだった。
 やがて洗濯が終わり、乙葉と内田が洗い終わったばかりの洗濯物が入った洗濯物カゴを持ちながら小屋に向かって歩いていると、小屋のある方角から、柚子が追加の洗濯物を持ってあらわれた。
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