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1 小さなリス
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やがてすることもなくなり、全員が小屋に集まってきた。その時には、ルーカスも目を覚ましていて、小屋の天井付近を、のんびりぷかぷかと浮かんでいた。そこで、いまだ食料の箱の前で、頭を悩ませていた内田を気にしたみんなは、内田のまわりに円を作るように、だんだんと群がっていった。
「内田さん、どうかしたの?」
乙葉が最初に声をかけた。
「残った食料で、すこしでもなにか美味しいものが作れないかなって思ってね」
内田が答えた。
「でも、なにも思い浮かばないから、頭を悩ませていたところなんだ」
「これだけ少ない量しかなかったら、もうなにも作れないでしょ」
箱の中身を見て、顔をしかめながら、柚子が言った。
箱の中にはもう残りわずかしかないチョコレートや飴、ビスケット、カップ麺、鯖の缶詰くらいしかなかった。当初はもっとたくさんの非常食があったはずだが、盗まれたり、料理に使われたりして、一気になくなってしまったのだ。
「あーあ、昨日内田さんがあんなに使わなければ、少しは余裕があったのに」
柚子が聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小声で、小言を言った。
「柚子、それはもう言わないことに決めたでしょ」
乙葉が叱責した。
「それに、柚子だって内田さんの料理、すごくおいしそうに食べてたじゃない」
「まあ、そうだけど」
痛いところを突かれたのか、柚子は苦い顔をした。
「内田さん、もう料理はあきらめるしかないです。もし料理をするとなると、余計に食材を使ってしまうことになります。それだけは絶対に避けたいので、鍵を見つけるまで、ここにある数少ない食料を、なにも加工を加えず素材のままで、みんなでわけ合って食べるのが一番いいと俺は思います」
京一がきっぱりと言った。
「内田さんの料理を食べられないことは残念ですが、生き延びるためには、そうするしかないんですよ」
「うん、わかったよ」
悲しそうに内田が言った。
「内田さん、どうかしたの?」
乙葉が最初に声をかけた。
「残った食料で、すこしでもなにか美味しいものが作れないかなって思ってね」
内田が答えた。
「でも、なにも思い浮かばないから、頭を悩ませていたところなんだ」
「これだけ少ない量しかなかったら、もうなにも作れないでしょ」
箱の中身を見て、顔をしかめながら、柚子が言った。
箱の中にはもう残りわずかしかないチョコレートや飴、ビスケット、カップ麺、鯖の缶詰くらいしかなかった。当初はもっとたくさんの非常食があったはずだが、盗まれたり、料理に使われたりして、一気になくなってしまったのだ。
「あーあ、昨日内田さんがあんなに使わなければ、少しは余裕があったのに」
柚子が聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小声で、小言を言った。
「柚子、それはもう言わないことに決めたでしょ」
乙葉が叱責した。
「それに、柚子だって内田さんの料理、すごくおいしそうに食べてたじゃない」
「まあ、そうだけど」
痛いところを突かれたのか、柚子は苦い顔をした。
「内田さん、もう料理はあきらめるしかないです。もし料理をするとなると、余計に食材を使ってしまうことになります。それだけは絶対に避けたいので、鍵を見つけるまで、ここにある数少ない食料を、なにも加工を加えず素材のままで、みんなでわけ合って食べるのが一番いいと俺は思います」
京一がきっぱりと言った。
「内田さんの料理を食べられないことは残念ですが、生き延びるためには、そうするしかないんですよ」
「うん、わかったよ」
悲しそうに内田が言った。
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