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1 小さなリス
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しかし運の悪いことに、いくら時間が経っても、バーサークは垣根から動こうとはしなかった。そればかりか、今度は乙葉の近くまで迫ってきていた。そのせいで、乙葉の心臓が、バクバクとうるさく動き出した。
(まずい、このままじゃ見つかる)
どうすればいいか必死で考えていると、乙葉は偶然にも、目の前にある木に、芋虫がいるのを発見した。
「ぎゃっ」
びっくりした乙葉は、思わず声を上げた。
「誰かそこにいるのか?」
バーサークがその声に気づき、尋ねてきた。
しまったと思った乙葉は、即座に、その場から走って逃げた。
「待て!」
後ろからバーサークが大きな声で言った。
当然、乙葉が待つわけがなく、当初の目的地であったトイレに逃げ込んだ。
息を荒げた乙葉は、トイレに入ってすぐに、個室に隠れることにした。
「はあ、はあ……大変なことになったわ。どうしましょう」
胸に手を当てながら、乙葉が言った。
バーサークがここまでやってくるのは時間の問題だ。もしこのトイレにルーカスがいたら、助けてもらおうかと思っていたのに、残念ながら、ここにルーカスの姿はなかった。
乙葉はどうやってバーサークから逃げたらいいのか、トイレの個室でひたすら頭を悩ませた。
「ふはは、そこにいるのはもうわかっている」
はやくもバーサークの声がした。
「君を今年に入って、三人目の獲物にしてあげるよ」
乙葉は、思わず声がもれたりしないように、口を押さえた。
「もう逃がさないぞ」
バーサークは一つ一つ、個室のドアを開けていった。
扉が開く大きな音が、連続で響きわたる。乙葉はそのたびに、肝が冷えていった。
そしてついに、乙葉の扉の番になったとき、乙葉は覚悟を決めたように、目を思いきりつむった。
(まずい、このままじゃ見つかる)
どうすればいいか必死で考えていると、乙葉は偶然にも、目の前にある木に、芋虫がいるのを発見した。
「ぎゃっ」
びっくりした乙葉は、思わず声を上げた。
「誰かそこにいるのか?」
バーサークがその声に気づき、尋ねてきた。
しまったと思った乙葉は、即座に、その場から走って逃げた。
「待て!」
後ろからバーサークが大きな声で言った。
当然、乙葉が待つわけがなく、当初の目的地であったトイレに逃げ込んだ。
息を荒げた乙葉は、トイレに入ってすぐに、個室に隠れることにした。
「はあ、はあ……大変なことになったわ。どうしましょう」
胸に手を当てながら、乙葉が言った。
バーサークがここまでやってくるのは時間の問題だ。もしこのトイレにルーカスがいたら、助けてもらおうかと思っていたのに、残念ながら、ここにルーカスの姿はなかった。
乙葉はどうやってバーサークから逃げたらいいのか、トイレの個室でひたすら頭を悩ませた。
「ふはは、そこにいるのはもうわかっている」
はやくもバーサークの声がした。
「君を今年に入って、三人目の獲物にしてあげるよ」
乙葉は、思わず声がもれたりしないように、口を押さえた。
「もう逃がさないぞ」
バーサークは一つ一つ、個室のドアを開けていった。
扉が開く大きな音が、連続で響きわたる。乙葉はそのたびに、肝が冷えていった。
そしてついに、乙葉の扉の番になったとき、乙葉は覚悟を決めたように、目を思いきりつむった。
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