上 下
4 / 246
1 小さなリス

しおりを挟む
 食べる手が止まらないといったように手を動かしながら、音を立てて、ガツガツと食べている銀司が言った。
「内田さんって、たしか、シェフを目指しているんでしたよね?」
 柚子がたしかめるように聞いた。
「そうだよ。普段は専門学校に通っていて、昼はコンビニのバイト、夜はシェフのバイトもしているんだ」
 内田が言った。
「へえ、そうなんですね。すごい」
 おどろいた様子の久遠が褒めた。
「別にすごくないよ。ただ、料理をするのが楽しいだけさ」
 なんでもないように内田が言った。
「だから、こんなにおいしいのね」
 感心した様子の乙葉が言った。
「じゃあついでに聞くけど、銀司は外の世界で、普段なにをやっていたの?」
 ふいに、柚子がましながら尋ねた。
「おい、ついでとかいうなよ!」
 若干いらつきながら、小気味こぎみよく銀司がいうと、
「細かいことはどうでもいいじゃない。はやく教えなさいよ」と、柚子がせかした。
「ったく、嬢ちゃん。生意気にもほどがあるぜ——まあ、いいけどよ」
 銀司はそう言うと、急に威張いばったように胸を張り、
「じゃ、仕方ねえから教えてやる。俺はこの街じゃ、結構名が知れてる店の、一流の寿司職人なんだ」と、わざとらしく、鼻の下をこすりながら、つづけざまに言った。
「えっ!」
 目を見張って、乙葉が言った。
「お寿司屋さんで働いていたの?」
「意外だな。本当に一流かどうかは置いといて」
 冷静に京一が言った。
「もしここに材料があったら、にぎって欲しかったなー」
 ルーカスが、むしゃむしゃと食べながら言った。
「まあ無事に出られたら、みんな俺の店にこいよ。おなじ園内に閉じ込められたよしみとして、サービスしてやらねえこともないぜ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作童話『ハクちゃん』

もり ひろし
児童書・童話
ハクセキレイの「ハクちゃん」と、スズメの「チュビーノ」、あるいは、文学のお師匠様と、その弟子、あるいは………。二羽と二人が紡ぐ、自由と絆の物語。

チュヴィン

もり ひろし
児童書・童話
スズメのチュヴィンと和寿のきずなの物語

【完結】お試しダンジョンの管理人~イケメンたちとお仕事がんばってます!~

みなづきよつば
児童書・童話
異世界ファンタジーやモンスター、バトルが好きな人必見!  イケメンとのお仕事や、甘酸っぱい青春のやりとりが好きな方、集まれ〜! 十三歳の女の子が主人公です。 第1回きずな児童書大賞へのエントリー作品です。 投票よろしくお願いします! 《あらすじ》 とある事情により、寝泊まりできて、働ける場所を探していた十三歳の少女、エート。 エートは、路地裏の掲示板で「ダンジョン・マンション 住み込み管理人募集中 面接アリ」というあやしげなチラシを発見する。 建物の管理人の募集だと思い、面接へと向かうエート。 しかし、管理とは実は「お試しダンジョン」の管理のことで……!? 冒険者がホンモノのダンジョンへ行く前に、練習でおとずれる「お試しダンジョン」。 そこでの管理人としてのお仕事は、モンスターとのつきあいや、ダンジョン内のお掃除、はては、ゴーレムづくりまで!? おれ様イケメン管理人、ヴァンと一緒に、エートがダンジョンを駆けまわる! アナタも、ダンジョン・マンションの管理人になってみませんか? *** ご意見・ご感想お待ちしてます! 2023/05/24 野いちごさんへも投稿し始めました。 2023/07/31 第2部を削除し、第1回きずな児童書大賞にエントリーしました。 詳しくは近況ボードをご覧ください。

R:メルヘンなおばけやしき

stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。 雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。 ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆

天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。 魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、 基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。 平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。 王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、 王都をめざすことになったリプルとペブル。 きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。 ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!? 表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。

おはよう リトル

たかや もとひこ
児童書・童話
叔父さんの研究室で出会った不思議な鉱物生命体リトル。 ひょんなことから、ボクの頭の中に住みついちゃったコイツは、面白くて、賢くて、それでいて寂しがり屋。 そんなボクとリトルの日常と冒険、そして別れのお話。

猫神学園 ~おちこぼれだって猫神様になれる~

景綱
児童書・童話
「お母さん、どこへ行っちゃったの」 ひとりぼっちになってしまった子猫の心寧(ここね)。 そんなときに出会った黒白猫のムムタ。そして、猫神様の園音。 この出会いがきっかけで猫神様になろうと決意する。 心寧は猫神様になるため、猫神学園に入学することに。 そこで出会った先生と生徒たち。 一年いわし組担任・マネキ先生。 生徒は、サバトラ猫の心寧、黒猫のノワール、サビ猫のミヤビ、ロシアンブルーのムサシ、ブチ猫のマル、ラグドールのルナ、キジトラのコマチ、キジ白のサクラ、サバ白のワサビ、茶白のココの十人。 (猫だから十匹というべきだけどここは、十人ということで) はたしてダメダメな心寧は猫神様になることができるのか。 (挿絵もあります!!)

いい先生とは・・・

未来教育花恋堂
児童書・童話
いい先生についての評論

処理中です...