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6 乙葉大ピンチ

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 内田はそう言って、銀司の肩に手を置いた。
 そこへ柚子がきて、銀司と内田の間にひょっこりと顔を出した。
「そうそう! 私もこの一件で、あんたのことすこし見直したわ」
 内田と柚子に褒められて、銀司は途端に顔を赤くすると、
「な、なんだよ」と言いながら、人さし指で頬をぽりぽりとかいた。
「うるせえな、二人して柄にもないこというんじゃねえよ。照れるじゃねえか」
「別に照れなくてもいいじゃない、本当のことなんだし」
 そう言うと、柚子は内田の反対側に立ち、銀司の腕を、ひじで何度か軽くつついた。
「そうだよ、このこのー!」
 内田も柚子とおなじく、銀司の腕をからかうように、ひじでつついた。
「おい、やめろ! うっとうしい」
 銀司は口ではいやがっているようなことを言いつつも、二人に認められたことがうれしいのか、にやにやと笑っている。
 乙葉と久遠は、そのほほえましい様子を見て笑い合った。しばらく笑ったあと、乙葉は鍵のことを思い出し、
「あ、そうだわ。みんな聞いて! 鍵が見つかったわよ!」と言った。
「え⁉︎ 鍵が? 本当に?」
 信じられないというように、柚子がうたがった。
 他のみんなも、おどろきのあまり、目を丸くして乙葉を見ている。
「本当よ! ほら!」
 乙葉は、紫色の鍵を持った手を、高々と上にかかげた。
「うわあ! よかった!」
 鍵を見た柚子が、まっさきに飛び跳ねてよろこんだ。
 銀司と内田は、園内の鍵を見るのは初めてのようで、めずらしそうに、乙葉が持つ鍵を見つめている。
「なんだ。色が派手なだけで、普通のどこにでもある鍵じゃねえか。このおかしな遊園地の鍵っていうから、もっとすごいのを想像してたのによ」
 不満そうに銀司が言った。
「別に鍵なんて、出られればなんでもいいでしょ」
 柚子がムッとした顔で言った。
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