上 下
211 / 244
6 乙葉大ピンチ

13

しおりを挟む
 そう言う京一自身は、こんな状況にもかかわらず、やけに冷静に見える。
「こんな状況で、落ち着けるわけないでしょ!」
 乙葉が叫んだ。
「これから私たち、死んじゃうかもしれないのよ!」
「いや、すべては計画通りだ」
「計画?」
 すると、京一の姿は見えなくなった。どこにいったのか探すと、いままで立ちっぱなしだった京一は、安全バーを下げて、座席に座っていることがわかった。
「もう、一体なんのことよ……」
 呆れながら乙葉が言った。
 この道のさきには、京一が意図的に爆発をさせて途切れてしまったレールがある。京一は計画をしていると言ってはいたが、どう考えても、爆発をさせるなんていうバカげた計画は、無謀むぼうとしか思えない。一体なにを考えているのか、乙葉には見当もつかない。しかし、もうここまできたら、京一たちのことを信じるしか、ほかに道はない。この暴走したジェットコースターに翻弄ほんろうされながら、乙葉はそう思った。
「まあ、それは時期にわかることだ。それはそうと、もうすぐ坂道だぞ」
「え?」
 京一が言った直後、乙葉は忘れていたように前を向くと、みるみる顔を青ざめさせた。目の前に、一周目に下ったばかりの急な坂があらわれたからだ。車両は、乙葉がまだ心の準備ができていないから待ってくれと願っても、当然待ってはくれず、容赦ようしゃなく猛スピードで進んでいった。
「ぎゃあーーーーーーー!」
 乙葉は喉が切れそうなくらいの、叫び声を上げた。

                 ♢♢♢
しおりを挟む

処理中です...