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6 乙葉大ピンチ

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 乙葉はそのころ、すでに三周目にさしかかっていた。ジェットコースターはあいかわらず止まることなく、ひたすら突き進んでいるが、一度おそくなったと思われた車両の動くスピードが、ふたたび速度を上げてきて、乙葉の悩みの種が、また一つふえてしまった。
 そんな中、乙葉はなすすべもなく、ただ一心に、ジェットコースターが止まるのを待ち望みながら、車両の座席に座って、揺られているしかなかった。
「三周目なんてうそでしょ? もういや、はやくおろして……」
 乙葉は思わず弱音を吐いた。
 さきほど乗り場で、操作室にたった一人でいた久遠とすれちがう時、久遠がなにやら、どこから持ってきたのかわからないトランシーバーを持って、真剣な表情をしながら、誰かと通信をしている姿が目に入った。しまいには乙葉のことを、これでもかというくらいに、心配そうなまなざしで見つめてきていたのが、乙葉の目に、痛いほど焼きついていた。
 その様子を見るに、きっと久遠たちは、乙葉を助けるためにいろいろと必死になって、行動を起こしてくれているにちがいない。最初から、必ず助けてくれると信じてはいたけれど、あらためて身に感じた乙葉は、そんなみんなに感謝をせずにはいられなかった。
 しかし、ジェットコースターも三周連続となると、さすがにもうおりたくてたまらなかった。
 一体いつまでこのジェットコースターに乗り続けなければならないのか、そう思うと、胃の中のものをすべて吐き出したいくらいの気持ち悪さにおそわれた。
 そのあと、乙葉は気持ちを切り替えるように、顔を空に向け、
「ダメダメ、こんな気持ちでいたら。みんなを信じて待たなきゃ」と言った。
 いまのところ、車両はふたたび、急な坂道を比較的ゆっくりと上っていっている。ここが唯一ゆいいつの休憩ポイントだ。もう下り坂やカーブはこりごりだと思っている乙葉にとって、ここはまるで天国のような場所だった。
 これまでとはちがって、心穏やかに揺られながら坂道を上っていたところで、なにやら頂上付近に人影が見え、乙葉はまさかと思い、自分の目を疑った。
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