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5 地獄行きジェットコースター
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乙葉が危険な目に遭っていてよほど心配なのか、思い詰めたような顔をして、久遠が言った。
「よし、もうこうなったら、俺が一人でレールを渡って、あの暴走ジェットコースターを追いかける」
思い切った京一が言った。
「えっ⁉︎」
久遠は驚愕した顔をして、京一を見た。
「それ、本気で言ってます?」
「本気に決まってるだろ。こんな時にわざわざ冗談を言ってどうする」
大まじめに京一が言った。
「じゃあ久遠、お前はここで、乙葉の様子を見ていてくれ」
「いや、レールを渡るって、なにも本当に、あのジェットコースターが走っているレールの上で、あとを追いかけるわけじゃないですよね?」
久遠がおそるおそる確認した。
「ああ、当たり前だろ。俺が言っているのは、その横に設置してある通路のことだ」
京一が言った。
「まあレールの上でも渡れないことはないが、歩きづらそうだからな」
「でも、レール横の通路を渡るにしても、あんな高さを命綱なしで歩くなんて、とても危険ですよ。やめておいた方がいいです」
京一の身を案じてか、久遠が必死な様子で止めた。
「いや、こうするのが一番いい気がするんだ。このままあいつが危なくなっているところを、ただ指をくわえて見ているだけなんて、とてもじゃないけど、俺にはできないからな」
自信たっぷりに、京一が言った。
「それに俺は大丈夫だ。絶対にあいつを助け出してみせる」
「そうですか……」
久遠はもうそれ以上、なにもいう気はないように見えた。
「これ、トランシーバー」
京一は久遠に、ポケットの中に隠し持っていた携帯くらいのサイズのトランシーバーを、投げ渡した。
トランシーバーを受けとった久遠は、おどろいた顔をしながら、
「えっ、こんなもの、一体どこから……」と言った。
「前に倉庫の中で見つけたから、いざという時のために拝借しといた」
なんでもないように、京一が言った。
「じゃ、これで状況を教えてくれ。頼んだぞ」
「はい、わかりました」
覚悟を決めたように、久遠が言った。
京一はそのまま操作室のドアに向かって歩き出すと、なにか忘れ物をしたとでもいうように振り返り、久遠の近くまでいった。そして、
「ん」とだけ言って、久遠の前に、こぶしを突き出した。
「あ……はい」
それがなにかを察した久遠は、感動したように目を輝かせると、京一のこぶしに、自分のこぶしをコツッと音を鳴らしながら合わせた。
用がすんだ京一は、ふたたび、無言でドアに向かって歩きはじめた。
「あの、京一くん」
すでにドアの近くまできていた京一に向かって、久遠が後ろから呼びかけた。
「なんだ?」
後ろを振り返って、京一が言った。
「絶対に、乙葉さんを助けてくださいね」
念を押すように、久遠が言った。
「当然だ」
それだけ言うと、京一はふっと笑った。
「よし、もうこうなったら、俺が一人でレールを渡って、あの暴走ジェットコースターを追いかける」
思い切った京一が言った。
「えっ⁉︎」
久遠は驚愕した顔をして、京一を見た。
「それ、本気で言ってます?」
「本気に決まってるだろ。こんな時にわざわざ冗談を言ってどうする」
大まじめに京一が言った。
「じゃあ久遠、お前はここで、乙葉の様子を見ていてくれ」
「いや、レールを渡るって、なにも本当に、あのジェットコースターが走っているレールの上で、あとを追いかけるわけじゃないですよね?」
久遠がおそるおそる確認した。
「ああ、当たり前だろ。俺が言っているのは、その横に設置してある通路のことだ」
京一が言った。
「まあレールの上でも渡れないことはないが、歩きづらそうだからな」
「でも、レール横の通路を渡るにしても、あんな高さを命綱なしで歩くなんて、とても危険ですよ。やめておいた方がいいです」
京一の身を案じてか、久遠が必死な様子で止めた。
「いや、こうするのが一番いい気がするんだ。このままあいつが危なくなっているところを、ただ指をくわえて見ているだけなんて、とてもじゃないけど、俺にはできないからな」
自信たっぷりに、京一が言った。
「それに俺は大丈夫だ。絶対にあいつを助け出してみせる」
「そうですか……」
久遠はもうそれ以上、なにもいう気はないように見えた。
「これ、トランシーバー」
京一は久遠に、ポケットの中に隠し持っていた携帯くらいのサイズのトランシーバーを、投げ渡した。
トランシーバーを受けとった久遠は、おどろいた顔をしながら、
「えっ、こんなもの、一体どこから……」と言った。
「前に倉庫の中で見つけたから、いざという時のために拝借しといた」
なんでもないように、京一が言った。
「じゃ、これで状況を教えてくれ。頼んだぞ」
「はい、わかりました」
覚悟を決めたように、久遠が言った。
京一はそのまま操作室のドアに向かって歩き出すと、なにか忘れ物をしたとでもいうように振り返り、久遠の近くまでいった。そして、
「ん」とだけ言って、久遠の前に、こぶしを突き出した。
「あ……はい」
それがなにかを察した久遠は、感動したように目を輝かせると、京一のこぶしに、自分のこぶしをコツッと音を鳴らしながら合わせた。
用がすんだ京一は、ふたたび、無言でドアに向かって歩きはじめた。
「あの、京一くん」
すでにドアの近くまできていた京一に向かって、久遠が後ろから呼びかけた。
「なんだ?」
後ろを振り返って、京一が言った。
「絶対に、乙葉さんを助けてくださいね」
念を押すように、久遠が言った。
「当然だ」
それだけ言うと、京一はふっと笑った。
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