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5 地獄行きジェットコースター

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 朝、目が覚めると、小屋の中が何だか騒がしいことに気づいた。横を見ると、隣で寝ていたはずの柚子の姿がない。なぜだろうと疑問に思った乙葉は、ひとまず起き上がって伸びをした。そのあと、おもむろに仕切りの隙間を見てみた。すると、皆が集まって何かを話している様子が目に入った。
「おはよう」
 まだ眠そうに目を細めながら、乙葉は仕切りの中から外に出て、皆が集まっている輪の中に入った。
「皆、やけに早いじゃない。それに、一箇所に集まったりなんかして、なにかあったの?」
「あらお姉ちゃん、やっと起きたのね!」
 柚子が驚きと呆れの交じった声を出した。
「もう大変なのよ。起きたらあの三人がいなくなってて」
「まあ、それ、本当なの?」
 乙葉は柚子を見ながら、目を丸くして言った。
 そして皆が囲んでいる輪の中の中心に目を向けると、解けてぐしゃぐしゃになった縄が放置されているのが見えた。
 昨日は三人ともここにいたはずなのに、柚子の言う通り、本当にいなくなっている。
「いつ逃げたの?」
 驚きながらも、考えを巡らせながら乙葉が訊いた。
「わからない」
 京一が顔をしかめながら言った。
「俺が朝早く起きた時には、奴らはもうすでにいなくなっていた」
「なるほどね。これはまずいことになったわ……」
 乙葉はそう言った後、思い出したような顔をした。
「そう言えば、内田さんとルーカスの二人はどこなの?」
「二人とも、まだ眠っていますよ」
 久遠がそう言ったため、乙葉はいつもルーカスが寝ているベッドを確認した。
するとどうやら、久遠の言った通り、ルーカスは腹の上のタオルを上下に大きく揺れさせながら、気持ちよさそうな顔をして、まだ夢の中にいるようだった。
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