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4 財宝強盗
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「あーあー、うるせえなあ。頼んでもないのに、いちいちよ。俺はこういうおせっかいなことが、大嫌いなんだよ!」と、声を張り上げた。
それを聞いた柚子は、
「もう、なんてやつなの! お姉ちゃん、そんなやつ放っておいて、はやくこっちで一緒に食べましょうよ!」と、カンカンにおこって言った。
乙葉は仕方なく、柚子の言うとおりにしようと思って席に戻ろうとすると、どこからか、大きな腹の音が鳴った。
皆はおどろいて、三人の男たちを見た。
「こ、今度は俺じゃないぞ」
疑われたくないのか、まっさきに四郎が言った。
「俺でもねえぞ」
即座に銀司が言った。
そのあと、すぐにみんなの視線が、男に集まった。
「ちょっとあんた、あんだけ強がってたわりに、お腹空かせてるんじゃない」
柚子が拍子抜けしたように言った。
男は腹を鳴らしてしまったことが、恥ずかしくて仕方ないのか、耳を赤くしたまま、ずっとうつむいたままでいる。
その様子を横で見ていた銀司が、
「おいおい、腹減ってんなら、権太も素直に食べればいいだろ? カッコつけてねえでさ。食える時に食っとけよ」と言った。
しかし男は、まだうつむいたままだ。
そんな男を見て、
「あなた、権太っていうのね」と、初めて名前を聞いた乙葉が、おどろきながら言った。
「悪いかよ」
とがった声で権太が言った。
「別に? でも、銀司の言うとおりよ、権太。食べれる時に食べておかないと。それに、これからこの遊園地でしばらく一緒にいることになるんだし、ケンカとかしないで、少ない人数、お互い仲良くやらない?」
笑顔で明るく乙葉が言うと、権太はようやく乙葉の方を向いた。
なにかを言ってくるのかと思いきや、乙葉のことを無言で見つめ出した。一体どうしたのだろうと思っていると、次の瞬間、権太は乙葉がずっとさし出したままでいたおにぎりを、なにも言わずにだまって食べはじめた。
それを聞いた柚子は、
「もう、なんてやつなの! お姉ちゃん、そんなやつ放っておいて、はやくこっちで一緒に食べましょうよ!」と、カンカンにおこって言った。
乙葉は仕方なく、柚子の言うとおりにしようと思って席に戻ろうとすると、どこからか、大きな腹の音が鳴った。
皆はおどろいて、三人の男たちを見た。
「こ、今度は俺じゃないぞ」
疑われたくないのか、まっさきに四郎が言った。
「俺でもねえぞ」
即座に銀司が言った。
そのあと、すぐにみんなの視線が、男に集まった。
「ちょっとあんた、あんだけ強がってたわりに、お腹空かせてるんじゃない」
柚子が拍子抜けしたように言った。
男は腹を鳴らしてしまったことが、恥ずかしくて仕方ないのか、耳を赤くしたまま、ずっとうつむいたままでいる。
その様子を横で見ていた銀司が、
「おいおい、腹減ってんなら、権太も素直に食べればいいだろ? カッコつけてねえでさ。食える時に食っとけよ」と言った。
しかし男は、まだうつむいたままだ。
そんな男を見て、
「あなた、権太っていうのね」と、初めて名前を聞いた乙葉が、おどろきながら言った。
「悪いかよ」
とがった声で権太が言った。
「別に? でも、銀司の言うとおりよ、権太。食べれる時に食べておかないと。それに、これからこの遊園地でしばらく一緒にいることになるんだし、ケンカとかしないで、少ない人数、お互い仲良くやらない?」
笑顔で明るく乙葉が言うと、権太はようやく乙葉の方を向いた。
なにかを言ってくるのかと思いきや、乙葉のことを無言で見つめ出した。一体どうしたのだろうと思っていると、次の瞬間、権太は乙葉がずっとさし出したままでいたおにぎりを、なにも言わずにだまって食べはじめた。
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