ルーカスと呪われた遊園地（中）

３ 隠し部屋

２０

「いや、なにかどこかで見たことあるなって思って」
　頭の中から記憶を引っ張り出そうとしながら、乙葉が言った。
　この絵は肖像画だ。髭ひげの生えた外国人のおじさんが、威厳たっぷりにこちらを向いて、足を組みながら椅子に座っている姿が描かれている。頭はすこし禿はげているが、髪の色は茶色く、鼻がとても高くて、目は綺麗な青色をしている。それに、着ているスーツがよく似合っていた。なんだかこわい顔をしているけれど、素敵なおじさんだわ、と乙葉は思った。
「どこで見たの？」
　ルーカスが聞いた。
「うーん……思い出せないわ」
　乙葉はもどかしく思いながら、眉をひそめた。
「ふーん」
　そう言いながら、ルーカスは乙葉のとなりにきて、その肖像画を一緒に見た。
「この人は、ここを作った人だよ」
「えっ？」
　おどろいた乙葉は、大きな声で言った。
「ということは、この遊園地の創設者？」
「そう」
　平然とルーカスが言った。
「下に名前が書いてあるよ」
　乙葉はルーカスに言われたとおり、肖像画の下に書かれている名前を見た。
「“グランドーレ・ピエール”」
　早速、英語で書かれている文字を、ぎこちなく乙葉が読み上げた。
「この人、まだ生きてるの？」
「さあ」
　ルーカスは肩をすくめた。
　創設者になぜかすごく興味を惹かれた乙葉は、その姿を頭に焼きつけるようにして、しばらく眺めた。
　するとルーカスがふいに、
「部屋はここだけじゃないんだよ。ほら、あそこに扉があるでしょ？」と言った。
　後ろを振り返った乙葉は、ルーカスの指さす扉を見た。