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3 隠し部屋

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 完全に一人の世界に入ったようになり、刀を愛おしそうに見つめながら、京一が呟いた。
「これは使えるかもしれない」
 柚子はそんな京一を見て、ただ苦笑した。
 そしてこの時、柚子はなぜだか急に、不安な気持ちが込み上げてきていた。それは、鍵がなかなか見つからなくて苛立つ気持ちと、まだ姿の見えない犯人のことを、おそろしく思う気持ちの両方があるからかもしれない。
 そんな気持ちをどうにかしたくて、柚子はふいに、
「ねえ、京一くん」と、話しかけた。
「なんだ?」
 刀をさやに戻しながら、京一が尋ねた。
「もし、もしこのまま、この遊園地からずっと出られなかったら、京一くんはどうする?」
 不安に思いながら、柚子が言った。
「いきなりどうした? 柚子らしくないぞ」
 言いながら、京一は自分の履いているズボンの、ベルトループに刀をさした。
「いや、もしもの話。出られるとは思うけど」
 柚子が念を押した。
「ああ」
 京一は腕組みをした。
「その時は残念だが、死ぬしかないだろうな」
 平然と京一が言った。
 あまりにもさっぱりという京一にたいし、柚子はひどくうろたえながら、
「ちょっと待って、なに普通に言ってるの? 京一くんはそれでいいの?」と尋ねた。
 すると京一は柚子の顔を見て、まるで毒気を抜かれたような顔になると、
「そうならないために、俺たちは鍵を探してるんだろ?」と、励ますように言った。
「だから、最後まで諦めたらだめだ。生き延びるためなら、なんでもする覚悟でいるんだ。なんなら、ここで野菜を育てるのもいいな。それに、その辺に生えている草だって、食べたら案外、美味うまいかもしれない。あ、そうだ。昨日見たセミとか、虫に挑戦してみるのはどうだ?」
 生き生きとした京一が、早口でそう言った。
「む、虫は遠慮しとく」
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