ルーカスと呪われた遊園地（中）

３ 隠し部屋

８

　なんだか本格的に剣道っぽくなってきた、と柚子は心の中で思った。
　大柄な少年は、興奮しすぎているせいか、京一が傘を持っていることなど、気づいていないように見えた。そしてそのまま、京一に突進していく。
「うおおおおお！」
　また、大柄な少年が雄叫びを上げた。
　京一は傘を持った両手を、頭の上まで振り上げ、ちょうど目の前まできた、大柄な少年の頭を目がけて、思いきり傘を振り落とした。
　傘で頭を面打ちされた大柄な少年は、意外にも、ドタッと音を立てて、呆気なく地面に倒れた。そして両手で頭を押さえながら、うめいているようだった。
「やった！　やったわ！」
　柚子が歓喜の声を上げた。
「おい！　大丈夫か？」
　すぐにひょろ長い少年が近くまでやってきて、心配そうに声をかけた。
「うう……痛え……」
　大柄な少年は、悲痛な声を上げた。
　それまで、ことの成り行きを、落ち着きなく見ていた柚子と陽菜は、傘をおろして、平然と佇たたずんでいる京一の元へ走った。
「京一くん！」
　息を弾ませながら、柚子が言った。
「ああ、柚子」
　柚子に気づいた京一が、気楽に言った。
　それから、京一と柚子たちが話をしていると、ふいに、
「お前、ものを使うとか、卑怯ひきょうだぞ」と、地面に横たわっていた大柄な少年が、怒ったように言った。
　すると京一は、大柄な少年を上から見下ろして、
「ふっ、お前に言われたくないな」と、小馬鹿にするように笑って言った。
　続けて、
「女が相手にもかかわらず、力任せに、解決させようとするやつにはな」と、きまりよく言い放った。
　それを言われた大柄な少年は、悔しそうに、その辺に生えている草をつかむと、
「くっ……」と一言。