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3 隠し部屋

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「柚子、大丈夫か?」
「わあ!」
 言いながら、柚子の顔は、パッと笑顔になった。
「やっぱり! 京一くんだわ!」
 どうやら、柚子が大柄な少年に叩かれる前に、とっさに京一が柚子の前に出てきて、かわりに平手打ちを食らってくれたようだった。その証拠しょうことして、京一の右頬は、見事にまっかに腫れている。
 京一は大柄な少年に向き直ると、
「お前、たかがブランコごときに女に手を上げるなんて、みっともないぞ」と、冷静に言った。
「別に、俺がなにしようとお前に関係ねーだろ!」
 柚子をかばった京一にたいして、大柄な少年はカンカンに怒っている。
「いや、あるね」
 そう言うと、京一は公園の端にあるベンチを指さした。
「俺はさっきまでそこのベンチで本を読んでいた。でも、お前たちのケンカがうるさくて、本に集中できなかった。だから関係大ありだ」
 それを聞いた大柄な少年は、ますます怒った様子になり、
「そんなこと知らねえよ!」と、片足で地面をはげしく踏みながら言った。
 京一は大柄な少年がそう言っている間に、柚子たちと一緒に、大柄な少年から十分に距離をとった。
「くっそー! むしゃくしゃする!」
 大柄な少年は、自分の頭をくしゃくしゃにした。
「俺たちがさきだったんだ! ゆずらないとこうだ!」
 大柄な少年は離れていった京一たちに向かって、鼻息を荒くしながら両手を前に出し、前のめりになって突進していく。
 それを見た京一は、即座に、後ろにいた柚子と陽菜に向かって、安全のためにはやく逃げるように言い渡した。柚子と陽菜は京一の身を心配したが、京一がはやくいけと言うため、渋々、急いで公園の端の方にある、木陰まで移動した。そして二人で寄り添いながら、事態を見守ることにした。
 しばらくすると、京一はまるで闘牛のように、正面から向かってくる大柄な少年を、はらりとかわした。
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