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2 不審人物

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「せめて、ゴミ箱に捨てればいいのに」
「まったくそのとおりだ」
 京一の顔はいまや、怒りで歪んでいる。
「黙って人のものを勝手に盗るのも、風呂ののぞきをするのも、ポイ捨てをするのも、本当に許せない。なにがなんでもとっ捕まえて、目の前でヒーヒーいうまで、反省させてやる」
「京一くんって、怒るとこわいわよね」
 苦笑しながら、柚子が言った。
「当然の報いだ」
 そう言うと、京一は片手で、缶をにぎりつぶした。
 その姿を見て、もはや柚子は、怯えて笑うことしかできなかった。
 東に向かってを進めていくと、またいくつかゴミが捨てられており、京一と柚子は、ついでにゴミ拾いをしながら、犯人を探した。
 柚子はその間、終始、幸せそうな顔で歩いていた。
(こうして京一くんと二人でいると、犯人のことなんて、もうどうでもよくなっちゃう。それまではこわかったけど、いまは全然そんなことないし、うれしくて胸がいっぱい)
 次第に、園内にある観覧車などの乗り物や、建物にとりつけてある看板、街灯などの明かりがつきはじめ、園内はまぶしく煌びやかな、幻想的な世界へと変わった。
 まるで、京一と二人でデートをしているような気分だ。柚子は、その嬉々とした気分を、思う存分に味わった。
「結構、ゴミ集まったわね」
 しばらく探したあとに、手に持っている、ビニール袋の中をのぞき込みながら、柚子が言った。
「ああ」
 京一は柚子の持っているビニール袋を、いちべつして言った。
「しかしゴミはあるのに、肝心の犯人が、中々見つからない」
「一体、どこに隠れているのかしらね」
 柚子がいぶかしく思って言った。
「さあな」
 肩をすくめて、京一が言った。
「それにしてもあいつら、ちゃんと探しているのか心配になるな」
「あいつらって、お姉ちゃんとルーカスのこと?」
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