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2 不審人物

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 柚子はあたりを見回すと、
「誰もいないわね」と言った。
「そりゃ、あれから長い時間たっているし、音がしたあと、すぐに逃げちゃったんじゃない?」
 言いながら、きっとそうにちがいない、と乙葉は思った。
「でも、もしかしたらまだ、どこかに潜んでいるかもしれない」
 用心深く京一が言った。
「たしかに」
 柚子は京一に共感して、うなずいた。
 その時、乙葉はいまだに、自分の腕を掴んでいる柚子を見て、
「ねえ柚子、暑いし、そろそろ離れてよ」と言った。
「いやよ、こわいし」
 即座に柚子が言った。
「もう、じゃあなんでついてきたの?」
 苛立ちながら乙葉が言った。
 柚子は不機嫌そうな顔をすると、
「そんなにいうならわかったわよ」と、いやそうに言って、渋々、乙葉の腕をはなした。
 なんだか、いつもの強気な柚子らしくなく、とても不安そうだ。
「柚子、大丈夫か?」
 京一が言った。
「うん、大丈夫」
 柚子は、あまり大丈夫そうには思えない声のトーンで、返事をした。
「無理するなよ」
 まだ、姿の見えない犯人にたいして、こわがっている柚子に気を遣っているのか、京一はいつもより、優しいように思える。
 それを柚子も感じているのか、すこし顔を赤くして、もじもじしながら、
「そんな、無理なんてしてないわ」と言った。
「そうか?」
 京一が聞くと、柚子はすぐに気持ちを切り替えるように、
「じゃあ私、厨房探してくる!」と言って、京一の顔も見ずに、小走りに厨房に向かった。
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