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1 絶対絶命ゴーカート

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 不思議そうな顔で、久遠が乙葉を見た。
「いまさらだけど、私のこと、こんな危険なところまで助けにきてくれて、ありがとう」
 すこし照れながら、乙葉が言った。
 その言葉を聞いた久遠は、あからさまに動揺し、
「い、いえっ。その、ぼ、僕は、乙葉さんがいない教室は、なんだかいつもよりさみしかったというか、あっ、いや、そうじゃなくて、とにかく、警察も誰も助けにいかないのなら、僕が助けにいくしかないと思いましてっ……」と、息継ぎするのがやっとのように言った。
「ふふっ、うん、ありがとう」
 機嫌よく乙葉が言った。
 久遠はもう、なにもいうことができないくらい、顔を赤くし、感情を高ぶらせているようだった。
 そこへ、カートがやってくるエンジンの音がした。
「おい、お前ら。さっきからなにをそんなに話しているんだ? 鍵探しは、ちゃんとやっているんだろうな?」
 乙葉たちのカートのすぐ横で走りながら、乙葉と久遠をいちべつして、京一が言った。
「京一! あなた、どうしてわざわざ、私たちのとなりで走るのよ」
 けげんそうな顔をしながら乙葉が言った。
「お前らが喋ってばかりで、サボっているんじゃないかと思って、視察しにきたんだ」
 京一は、とり澄ました顔をしている。
「別に、サボってなんかないから大丈夫よ。ほんのすこし話をしていただけじゃない。だからはやく後ろにいって。探しづらいから」
 うっとうしく思いながら、乙葉が言った。
「本当だろうな?」
 しつこく京一が疑った。
「本当よ」
 即座に乙葉が言った。
「わかった。でも、次喋ってばかりだったら、またお前たちのとなりで、監視しながら走るからな」
 京一はそう言うと、すぐに速度を落として、また乙葉たちの後ろに戻った。
 乙葉には、京一がまるで、先生のように思えてきて仕方がなかった。
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