ルーカスと呪われた遊園地（中）

１ 絶対絶命ゴーカート

２５

「まったく、前にも言ったはずだぞ。俺たちには時間がないんだって」
　京一は、ルーカスの様子が変わったことに気づいていないのか、呆れながらそう言った。
　乙葉はまだ、体が強張っている状態のルーカスを見て、心配しながら首をかしげ、
「ルーカス？」と言った。
　すると、ルーカスはまた元にもどり、乙葉を見て、
「あは、なんでもないよ」と言った。
　乙葉はそのルーカスの突飛な行動を、いぶかしく思った。今日のルーカスは、やっぱりどこかおかしい。
「えー、そっかー」
　残念そうにルーカスが言った。
「じゃあ、最初に見つからなければいいのにな」
　ポツリと小声で言ったルーカスのその言葉の裏には、遊びたいという思いが溢れているようで、それが乙葉の心にひしひしと伝わってきた。
　ルーカスの様子は、いつもより変ではあるけれど、やっぱりルーカスはルーカスだった。
「そんなこと言わないでよ、ルーカス。もし見つけた鍵が本物だったら、そのあとみんなで、いくらでも乗って遊べるんだから」
　乙葉が励ました。
「そうよ、ルーカス。お願いだから、そんなに落ち込まないで」
　続けて柚子が言った。
　ルーカスは、見るからに納得がいかないようだったが、それでも、なんとか我慢をしているように見えた。
「ところで、なんでカートに乗って調べるの？」
　ふいに乙葉が尋ねた。
「私は嬉しいけど、京一が乗り物に乗っていいっていうなんて、なんだか珍しくない？　私はてっきり、自分にも他人にもきびしい京一のことだから、歩いて探すとかなんとか、いうのかと思ってたわよ」
　京一はこれまで、どうしてそんなことを聞くのかというように、けげんそうな顔をしていたが、すべてを聞き終わったあと、なんだそんなことか、というような顔に変わって、
「ああ、それは、歩いて探すよりかは、せっかくカートがあるんだし、乗って探した方が、体力や時間の節約にもなるだろうからな。俺だって、そこまで鬼じゃない」と言った。