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3 洞窟のポワロウ
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すぐさま草むらに近づき、地面にひざまずいた。
そして、ナーラはそれらを、夢中になって、手にいっぱい、とれるだけとった。ところが、残念なことに、それらを入れるためのカゴがない。
「あら、どうしましょう」
困ったナーラだったけれど、カゴがないことは仕方がないことだと思って、とっさに機転を利かし、とったものは、自分の履いている、スカートの両端を持って作った、即席のカゴを使い、持ち運ぶことにした。
「これだけあれば、おかあさんきっと喜ぶわ。今度は、キイチゴのパイができるかもしれない。それに、クリを使って、モンブランだってできちゃうかもしれない」
(といっても、私はまだ、キイチゴのパイも、モンブランも、一人で作ったことはないのよね。今日、おばあさんに渡したチェリーパイだって、おかあさんに教えてもらいながら、初めて作ったものだったんだから)
ナーラは心の中で、そんなことを思いつつも、おかあさんの喜ぶ顔をたのしみにして、森の小道を、鼻歌を歌いながら、幸せな気持ちで歩いた。
そんな平和に歩いていた矢先、これまでずっと、お日さまが出ていて明るかった空は、いつの間にか、雲がお日さまを、すっぽりとおおい隠し、すっかり暗くしてしまった。
それから間もなくして、ナーラの目の前を、なにか大きな影が横切っていった。
その大きな影は、よく見ると、この森一番といっても過言ではないくらいの、人間に恐れられている、くまの親分、スーバでまちがいなかった。
スーバの片目は、昔人間に傷つけられたケガが、痛々しいくらいに、刻み込まれていて、見えないようだった。
ナーラはそんなスーバを見て、つい恐れをなし、尻込みした。
(スーバに、私の存在がバレてしまったら、きっとすぐにやられてしまうわ。気づかれないように、そっと立ち去りましょう)
そう思ったナーラは、ひとまず、元きた道を引き返そうとした。
けれども、運悪く、すぐ下にあった木の枝を踏んでしまい、ポキッと、音を立ててしまった。
こうなったらもうおしまい。
その枝の折れた音で、ナーラの存在が、まんまとスーバにバレてしまったようで、スーバはナーラを見るなり、即座にうなり声を上げて、威嚇をはじめた。
そして、ナーラはそれらを、夢中になって、手にいっぱい、とれるだけとった。ところが、残念なことに、それらを入れるためのカゴがない。
「あら、どうしましょう」
困ったナーラだったけれど、カゴがないことは仕方がないことだと思って、とっさに機転を利かし、とったものは、自分の履いている、スカートの両端を持って作った、即席のカゴを使い、持ち運ぶことにした。
「これだけあれば、おかあさんきっと喜ぶわ。今度は、キイチゴのパイができるかもしれない。それに、クリを使って、モンブランだってできちゃうかもしれない」
(といっても、私はまだ、キイチゴのパイも、モンブランも、一人で作ったことはないのよね。今日、おばあさんに渡したチェリーパイだって、おかあさんに教えてもらいながら、初めて作ったものだったんだから)
ナーラは心の中で、そんなことを思いつつも、おかあさんの喜ぶ顔をたのしみにして、森の小道を、鼻歌を歌いながら、幸せな気持ちで歩いた。
そんな平和に歩いていた矢先、これまでずっと、お日さまが出ていて明るかった空は、いつの間にか、雲がお日さまを、すっぽりとおおい隠し、すっかり暗くしてしまった。
それから間もなくして、ナーラの目の前を、なにか大きな影が横切っていった。
その大きな影は、よく見ると、この森一番といっても過言ではないくらいの、人間に恐れられている、くまの親分、スーバでまちがいなかった。
スーバの片目は、昔人間に傷つけられたケガが、痛々しいくらいに、刻み込まれていて、見えないようだった。
ナーラはそんなスーバを見て、つい恐れをなし、尻込みした。
(スーバに、私の存在がバレてしまったら、きっとすぐにやられてしまうわ。気づかれないように、そっと立ち去りましょう)
そう思ったナーラは、ひとまず、元きた道を引き返そうとした。
けれども、運悪く、すぐ下にあった木の枝を踏んでしまい、ポキッと、音を立ててしまった。
こうなったらもうおしまい。
その枝の折れた音で、ナーラの存在が、まんまとスーバにバレてしまったようで、スーバはナーラを見るなり、即座にうなり声を上げて、威嚇をはじめた。
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