妖精たちと出会った日

大森かおり

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2 マレットの憂鬱

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 けれどもまた、マレットを見ながら、すごく楽しそうに、ゆらゆらと踊るように揺れながら、空中で飛んでいた。
「また私の邪魔をしにきたのね! まったく、こりないやつ!」
 マレットは、筆を持っている手を腰にあて、パレットを持った手を、上にあげながら、ぷんぷんと怒った。
「私は、スッカラカンと遊んでいる暇はないの! はやくどこかにいってよ!」
 加えて、マレットがそう怒鳴ると、スッカラカンは、その名前はちがう、自分にはちゃんと名前があるんだ、とでも言うように、左右に揺れ動いた。
「え? あなたにちゃんと名前がある、ですって?」
 スッカラカンが言いたいことをさっしたマレットは、すぐにそう言った。
 それから、顔をしかめると、
「なによ、どうせ変な名前なんでしょ」と、マレットが嫌味を言った。
 するとスッカラカンは、空中に、アルファベットで、マレットにわかるようにでっかく、自分の名前を書きはじめた。
「フィ…ング……あなた、フィングっていうの?」
 空中に書いてある文字が、なにかわかったマレットが、言葉に詰まりながら言った。
 フィングはそれに答えるように、また上下に揺れ動いた。
「そう。そうなの」
 マレットは一瞬、フィングが悪い妖精だということを忘れて、まともに返事をしてしまった。
 そのことに気がついたマレットは、慌てて、
「あっ、そんなことどうでもいいから、はやくどこかにいって!」と、フィングを追い返すように、強い口調で言った。
 そしてマレットは、そのへんに置いてあった絵の具と筆を、フィングに向かって、思いきり投げつけた。
 ところがフィングは、それらを全て、見事によけた。
 それを見たマレットは、悔しさから、たちまちわなわなと、怒りに震えながら、思わず歯を噛み締めた。
「もう! どうして私の邪魔ばかりするの! 私、あなたになにかした?」
 大きな声でマレットが言うと、フィングは、どうして? とでも言うように、斜めに傾げながら飛んだ。
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