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42話 ナーガ談
しおりを挟む「最後はいよいよナーガだ……!」
ボクはワクワクが最高潮に達する。
「ナーガ様すみません。子供たちを寝かせたいので私たちはこれで失礼します」
と、アンナ。
「うん、君らとも久々に会えてよかったよ。またゆっくりお話しよう」
ナーガがそう返す。
「ええ、ぜひ。それでは失礼します」
シャンディがそう言うと、彼女たちは合わせてお辞儀をして、他のみんなとも挨拶を交わし、自らの子を連れて転送の間から出ていった。
⸺⸺
「ワシは、結婚してない。だから多分、1番つまらないかもしれん……」
そっか、やっぱ結婚はしてなかったか。
「結婚が全てじゃないよ、ナーガ! 天空の島もすごい楽しみだよ」
ボクがそう言うと、他のみんなもうんうんと頷く。
「それなら、良かった。じゃぁ、こっち……」
ボクたちはナーガについて、左の祭壇へと足を踏み入れた。
⸺⸺天空の島 ルフトインゼル⸺⸺
ボクたちが祠から外に出ると、ドワーフたちの地下都市のように真ん中が吹き抜けの背の高い町が広がっていた。
⸺⸺空中都市ルフトシュタット⸺⸺
「わ、空気が独特だ」
ボクは思わず鼻をくんくんさせる。澄んで冷たい空気と、温かい空気が入り混じっているような不思議な感覚だ。
「この島の空気と、空の空気が混ざってるから。地上とは違う感じがして、ワシは好き」
と、ナーガは答えた。
「だな。うわー、なんか俺、飛びたくなってきた」
ウォルトはそう言って足踏みをする。
「いいよ、自由に飛び回っておいでよ」
「マジ? さんきゅー大将! ひゃっほーぅ!」
ウォルトはあっという間に町の吹き抜けへと消えていった。
その吹き抜けはたくさんのプラム族が飛んで行き来をしており、まさに翼の生えた人のための町という感じがした。
「アビス。この島の上空に、魔空城を建てた。そこにアビスの深淵を展開できたら、サタン様もこの島の景色が見渡せる」
「おぉ! ナーガよ、ちゃんと覚えていたのだな! うむ、後で寄らせてもらうとしよう」
アビスは嬉しそうにそう返した。
「うん。じゃぁとりあえず、ワシの家、来る?」
「行きたいいきたーい!」
ボクたちはルンルンでナーガへついていった。
町の昇降機を使って最上階まで上がると、空中に大きな橋がかかっており、その先に空に浮かぶ城が建っていた。
「あれがワシの家、ルフト城。あの少し上に浮いてるのが、魔空城」
「おぉ、すごっ。どっちも天空のお城だ」
⸺⸺ルフト城⸺⸺
「ナーガ様、おかえりなさい!」
城に入った瞬間、大勢のプラム族や猫耳のメスに出迎えられる。100人以上は居るだろうか。
あれ、オスは1人もいない。
しかも、みんななんか露出すごくない?
一言で言って、破廉恥だ。
「ただいま」
ナーガはそう言うなりメスに取り囲まれて動けなくなった。
「また、後で、相手するから。今は、ダメ……」
「はぁ~い……」
メスたちはみんな残念そうに去っていく。
あれ、何だか1番ヤバい雰囲気がしてきたんだけど気のせいかな。
ボクたちはそのまま玉座の間へと案内される。
⸺⸺玉座の間⸺⸺
「よいしょっと」
ナーガはそう言いながら玉座へと座った。
「えっと、ナーガ……結婚してないんだよね?」
ボクはナーガの取り調べを始める。
「うん、してない。ワシそういうのよく分からないから」
ナーガは淡々と答える。
「えっと、じゃぁ、さっきの女性たちは……?」
「彼女らは、パラディース島からのプラム族の女性の移住者と、ワシが力を分けて人化に成功したワシの家来の女性たち」
ナーガは事実を淡々と述べる。
「うん、そういうことじゃなくてね?」
ボクが言葉を選んでいると、見兼ねたフェリクスが口を挟む。
「さっき、後で相手するって言ったね? 一体何をする気なんだい?」
「何って、子作りだけど」
ナーガは……淡々と事実を述べる……。
「け、結婚してないのに!?」
ボクは声を張り上げる。
「? うん」
「さっき100人くらいいたけど……全員かい?」
と、フェリクス。
「流石に1日で全員は無理。3日くらいでローテーションしてる」
「3日で100人ってこと!?」
単純計算して1日30人以上と……?
「? うん。そうだよ」
ナーガ……そんな淡々と言わないで……。
「一気に30人とか? それとも1人ずつ交代か?」
ルナは何故か面白そうに問いかける。
「どっちもあるし、5人ずつとかもある。今日は時間なさそうだし、30人一気かな。見てく?」
普通に見てく? とか聞かないで!?
「若干怖いもの見たさで気にはなるがのう……」
と、ルナ。
「ルナ、やめておこう……。君が新たな扉を開いたら大変だ……」
と、フェリクスが止めに入った。ナイス、フェリクス。
「お、俺様もう、精神を維持できそうに、ない……」
アビスはのぼせ切って仰向けに倒れた。
ボクはアビスをソファへ寝かせながら口を開く。
「ナーガ、ちょっと見るのは遠慮しておくよ。もしかして、ナーガの子供、たくさんいる?」
「うん。雛も卵もいっぱいいる」
「雛!? 卵!?」
あれ、なんだかボクもアビスみたいに倒れそうかも……。
「それも、見ていかない?」
ナーガは首を傾げた。
「えっと、それは見させて……」
「うん、分かった。こっち」
その時、ウォルトが合流する。
「わりぃ、遅くなった。って、アビスどうしたよ?」
「あ、ウォルト。アビスはちょっと、情報が処理しきれなくなった」
「なんっじゃそりゃ」
ボクの答えに対し、ウォルトはそうツッコミを入れた。
⸺⸺卵静室⸺⸺
広くて暖かいフロアに、バレーボールくらいの大きさの様々な柄の卵が綺麗に整頓されていた。
200個はあるであろうそれは、1つずつがふかふかのクッションの上に乗っていて、居心地は良さそうだった。
「なんだこの卵の数!?」
と、ウォルト。
「全部ワシの子」
ナーガはやはり淡々と答える。
「……は?」
ウォルトは言葉を失う。
「ボクはそもそも卵? ってなってんだけど……」
ボクがそう呟くと、ウォルトはハッと我にかえりボクの問いに答えてくれる。
「あぁ、プラム族は元々鳥だからな、女は卵を生むんだよ。あと、元魚のクラニオもだな。まぁ、アビスが倒れる理由はなんとなく分かったわ……」
「そういうことかぁ。じゃぁ人化した猫たちも半分鳥だから卵なんだね……」
「うん、そう」
ナーガが頷く。
その時、卵のうちの1つがピキピキっと音を立てて割れ始める。
「お、孵化、始まった……」
ナーガがそう言ってその卵の目の前までいくので、ボクたちもみんなでその卵を囲んで見守る。
⸺⸺コトコト、ピキピキッ⸺⸺
「にゃぁー、にゃぁー!」
「猫が生まれたー!」
ボクは感動よりも驚きが勝ってしまった。衝撃の光景だ。
「おぉ、よしよーし」
ナーガはすぐに抱き上げあやしている。
「にゃぁ、にゃぁ」
「ナーガ様。お預かりしますね」
すぐに隣の部屋から猫なのか鳥なのか人なのかよく分からないメスが入ってきて、ナーガからその子を受け取り、隣の部屋へと入っていった。
すると、その周りの卵が次々にピキピキと音を立て始め、10匹ほどの猫が次々に孵った。
「わー、ワシの子、いっぱい」
ナーガは嬉しそうだ。
ボクたちも驚いている場合じゃなく、みんなで協力してその子猫たちを隣の部屋へと運んだ。
その隣の部屋には翼を持った小さな子猫がいっぱいいて、数人のメスがミルクを飲ませていた。
もう、ビックリしか出てこない。
でも、子猫たちはみんな天使のように可愛く、ナーガがその子たちに送る優しい視線は親そのものだった。
だからボクは、もう深く考えずにナーガの子の誕生を祝うことにした。
ボクたちは未だ目覚めぬアビスを抱えて、パラディリア城へと帰還した。
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