30 / 44
30話 魔界
しおりを挟む⸺⸺魔王アビスの深淵⸺⸺
ここはどうやら、地上界と魔界の境目に俺様が無意識に創り出した空間であるらしい。
初めは何もない真っ暗な空間で、俺様の使う鎌が浮かんでいるだけだったようだ。
猫の下僕たちはこの空間内で自由にクラフトができるらしく、この石の壁も部屋に設置されている家具も全て猫下僕が1から創り出したらしい。
ご丁寧に俺様の玉座の間まであり、俺様はここに足を組んで座り、今日もはぐれ魔族らと契約を結んでいく。
一体どのくらいの魔族を使い魔にしただろうか。そろそろ飽きてきたなと思って来たとき、猫下僕のコモリィが俺の所へとやってきた。
「魔王アビス様! ついに魔界への扉が開きました!」
コモリィはそう報告をする。
「何で!?」
俺様は思わずそう問い返す。
「アビス様が使い魔をどんどん増やしていって力をつけたからですよ! 早速行ってみましょうよ!」
「む、そうなのか。よし、パーティを編成する。俺様と、貴様小悪魔のコモリィと、堕天使のセラ、魔族のスラぴょんだ。急いで召集しろ」
俺様がそう言うとコモリィは言いづらそうにこう返した。
「すみません、アビス様。恐らくアビス様が召喚した方が早いかと……」
「む、そうか!」
俺様は慌てて召喚を発動する。すると、黒いドロドロの中からセラとスラぴょんが現れた。
「アビス様、セラ、只今参りましたわ」
セラは堕天使のメス猫だ。
堕天使は回復系の技に優れている。
「スラぴょん、只今参りました」
スラぴょんは初めに魔族を代表して色々教えてくれたスライムだ。
まぁ、ぷにぷにしててふみふみし心地がいいから連れていく。あ、あと魔界の案内もしてもらえるしな。
そしてコモリィは俺様の1番のパシリ役。何でもほいほいやってくれるし、何でも報告してくれる良き下僕だ。
「うむ、お前らよく来てくれた。これから魔界へと進出する。俺様のお供をせよ」
「「はい! 喜んで!」」
こうして俺様は3匹の下僕を連れて、魔界への扉が現れたフロアへと移動をした。
⸺⸺魔界への扉⸺⸺
「で、デカイな……」
そこには圧倒的な大きさの扉がそびえ立っていた。
「ええ、本当に……」
と、セラが相槌を打つ。
⸺⸺キィィィッ⸺⸺
俺様が近付くと扉は勝手に開き、意を決してその中へと飛び込んだ。
⸺⸺魔界 ヤマネコ座の領域 大平原⸺⸺
漆黒の霧が辺りを包み、カオスキングダムのように真っ暗である。
入ってきた扉は既になくなっていた。帰りは何処にいても扉を召喚すれば帰れるらしい。
そんな暗い平原を俺様たちは真っ直ぐに進んでいく。
そこら辺を歩いている魔族らは、俺様たちには特に見向きもせず、魔物のように襲ってきたりもしない。
パラディース島の裏にこんなものがあったとは……。いや、そもそも裏って何? って話だが……。
しばらく何もない平原を歩いていると、不意に目の前にデーモン族のオスが現れる。
地面の黒いドロドロから出てきたそいつは、悪魔の角に悪魔の翼を持ち、まさに今の人の姿である俺様と近い見た目であった。
「お前たち、今地上界の扉を開けてきたのか?」
そのデーモン族のオスはそう聞いてくる。
「そうだ。何か問題でもあるのか?」
郷に入っては郷に従えと言うしな。一応聞いておこう。
「いや、問題はない。サタン様から召喚状を預かってきている。そちらの用事が済んでからで構わない。その召喚に応じてほしい」
そのオスはそう言って1枚のカードのようなものを手渡してきた。
何だこれは、とも思ったが、同時に召喚に応じる手順が脳内に思い浮かんでいた。
「特に用事はない。今すぐに召喚に応じよう」
俺様がそう答えると、そのオスは深くお辞儀をして俺様の持っているカードに触れた。
「感謝する。では、共に参ろう」
「お前らもこのカードに触れていろ」
俺様が下僕らにそう指示を出すと、下僕らはすぐにカードに触れた。
そして俺様が少し念じると、カードが黒く光り俺様たちを包み込んで転送させた。
⸺⸺サタン城 玉座の間⸺⸺
「ふむ、意外に早かったな」
転送先は、玉座に足を組んで座っているデーモン族のオスの目の前だった。
俺様を迎えに来たオスよりは遥かに角が大きく、底知れぬ漆黒の気配を感じた。
「お前がサタンとやらか」
俺様は物怖じせずに問いかける。
「そうだ。貴様は?」
サタンは無表情で返してくる。ちょっと怖い。
「俺様は深淵の魔王アビスだ。使い魔を増やしまくっていたらここへの扉が開いたため、調査にやって来た」
「魔王……? ふむ、どうやらその素質はあるようだな。なんとも面白い気配の奴よ。余に地上での話を聞かせてみろ」
サタンはそう偉そうに言う。
「き、貴様何故そんな偉そうなんだ……」
「ほう、余に興味があるか? いいだろう、特別に答えてやろう。余は、この魔界の魔王らを統べるもの、“大魔王サタン”である」
「だ、大魔王!?」
俺様はその言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。
魔界の魔王を統べるもの、大魔王サタン……。
か、かっこいぃぃぃぃぃ!
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
【完結】赤獅子の海賊〜クマ耳の小人種族となって異世界の海上に召喚されたら、鬼つよの海賊が拾ってくれたのでちやほやされながら使命果たします〜
るあか
ファンタジー
日本からの召喚者ミオがクマ耳の小人種族となって相棒のクマのぬいぐるみと共に異世界ヴァシアスへ転移。
落ちた場所は海賊船。
自分は小さくなって頭に耳が生えてるし一緒に来たぬいぐるみは動くし喋るし……挙句に自分は変な魔力を持ってる、と。
海賊船レーヴェ号の乗組員は4名。
船長のクロノ、双子のケヴィン、チャド。
そして心も身体もおじさんのエルヴィス。
実はめっちゃ強い?彼らの過去は一体……。
ミオは4人で善良にクエストや魔物ハント活動をしていた愉快な海賊の一員となって、自分の召喚者としての使命と船長のルーツの謎に迫る。
仲間との絆を描く、剣と魔法の冒険ファンタジー。
※逆ハー要素があります。皆の愛はミオに集中します。ちやほやされます。
※たまに血の表現があります。ご注意ください。
婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる