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22話 島の統一
しおりを挟む王都跡を覆う黒い霧は、ずっと王都内で留まっていた。
ボクは念の為王都跡の周りに2重に結界を張り巡らせ、掲示板でアビス以外の一切の立ち入りを禁止した。
国王もボクたちの目の前で大蛇に食べられたし、実質隣国は消滅した。
そのため国境に築かれていた大きな城壁はボクたちの無双で粉々に打ち砕き、この島の全領域がボクたちの支配下に置かれた。
少し予定外な結末ではあったけど、ボクたち猫の率いる組織が島を統一した瞬間であった。
統一後しばらくはバタバタと開拓を行い、元王都民たちの住居を確保したりとてんやわんやだったけど、数か月も経つ頃には島のあちこちに村や町が建設され、いつも通りの穏やかな日常が戻りつつあった。
ある1つの場所を除いて……。
⸺⸺パラディリア城内⸺⸺
「駄目だ、これと言って何も見つからん。ただカオスフィールドが広がっているのみだ」
アビスがぺちょんと項垂れている。
その真似をしてかアビスのしまい忘れている“猫の使い魔”たちもみんなぐでんと液体になっていた。
「そっかぁ。あの場所も何とかできるといいんだけどね……」
ボクはアビスと使い魔たちを順番にヨシヨシしていった。
その後アビスには使い魔を深淵へとしまってもらい、ご機嫌を取るためアンナに『高級カリカリ御膳』を用意してもらった。
そして『猫吸い』のメンバーの膝で満足して溶けているアビスから一度詳しく話を聞くことにする。
アビス曰くこうだ。
アビスはあれからダンジョン攻略の合間を縫って、ちょくちょく王都跡の調査をしてくれている。
彼と同じく黒い気への耐性を持つ彼の使い魔たちをフル動員しても、未だにあの地への解決策は見出だせてなかった。
そのため前向きな彼も流石に落ち込んでしまったということだった。
ここでボクたちと一緒に城で寛いでルナを撫でていたフェリクスが口を挟む。
「ウォルトの報告では、ここ数か月魔物の出現が緩やからしい。あの例の北の山脈もだ。俺は、王都跡に島中の黒い気が集中しているからではないのかと考えている」
「え、じゃぁ無理にあの場所をなんとかしようとしない方がいいってこと?」
と、ボク。
「かもしれない。だけどあの場所があのままの状態で落ち着いてくれるとも限らないからなぁ……」
「あぁ、そうだね……」
フェリクスとボクが頭を抱えていると、アビスが名乗り出る。
「ならば、今後は調査ではなくパトロールとしてあの地を見守ろう。少しでも変化があればレクスへと報告をすることにしよう」
「それは助かるよ! ぜひお願いします!」
「任せろ竹猫の友よ!」
アビスはそう言って高笑いをしていた。
何はともあれアビスのご機嫌が直って良かったよ。
⸺⸺
こうして王都跡はアビスによって『混沌王国カオスキングダム』と名付けられ、アビスに統治を一任した。
この地で黒魔症を発症して散っていったネロ王の情報もあっという間に島中の人々へ拡散され、村や町を上げて夜通しお祝いの宴を行う場所すら出てきていた。
死んで感謝される国王って……。
ボクはそう思いむしろ国王が不憫になってしまったが、ボクがなんとかする間もなくこの問題が解決してくれたのは正直ホッとしている。
なんとかまた1つ大きな問題が片付きそうだ。そう思っていた矢先の出来事。
ボクがアンナの膝の上でご機嫌にゴロゴロ言っていると、ウォルトがすごい風圧で城内へと駆け込んできた。
「大将! ヤバイことが起こってる!」
「えぇ~、またぁ?」
アビスの次はボクが項垂れる番のようだ。
でもアンナに顎をさすさすしてもらい、ちょっとだけ元気になる。
「今度は何を倒せばいいの?」
ボクがそう尋ねると、ウォルトは豪快に笑っていた。
「はっはっは、今回はちげぇ、そういうんじゃねーよ」
「じゃ、どういうの?」
「聞く覚悟はできてるか? 驚きすぎてアビスみてぇに口微妙に開いちまうぞ?」
ウォルトはそう言ってニッと意地悪そうに笑った。
「フレーメン反応のことね。それは匂いを嗅いだときの生理現象であって、驚いたときとかになるやつじゃないから」
ボクはスパッと言い放つ。
「んなの俺には関係ねぇよ。で、大将、覚悟はできたか?」
「う、うん……できた」
ウォルトがあまりにも煽ってくるのでボクは思わずゴクンと唾を飲んだ。
そしてウォルトが報告する。
「オアシスの町の北東の大草原にな……
お前らみたいな変な猫が何百匹も現れてるんだ」
「にゃ……にゃんですと!?」
ボクは……
フレーメンになった。
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