11 / 19
11話 求められていたのは-エメリーヌ視点-
しおりを挟む
姉の子は姉の財産を全て手に入れるために生かしておいた。
姉の子にも感染したらマズいと思い心配しているふりをして隔離をしたかったけど、姉の子は必死に自分の親を看病していた。
あの子にもかかってしまってもし死んでしまったら、わたくしの財産が……そうヒヤヒヤしていたが、幸いにもあの子に病が移ることはなかった。
姉には致死量の3倍のウイルスを送り込んだから、日に日に死に近づいていき、わたくしの計画通りにわたくしに富を託し、あっけなく死んでいった。その後娘もウイルスを注入してやろうかと思い再び研究所へ向かったが、病原体を手に入れる事は出来なかった。
まぁ、餓鬼を処分する方法なんて沢山ある。焦る必要はない。
それにしても姉が死んで皆悲しみに暮れる中、お父様と国王陛下だけはなぜか焦っているようだった。婚姻が出来なくなってしまったから体裁を気にしているのか。でも、まだ世間には婚約の発表すらしていないし、一体なぜ……? それに、姉がいなくなってもわたくしがいる。
それからはしばらくその話は出て来なくなってしまった。
わたくしはお父様の会社で働いているが、取引先に姉の子を育てているという話をすると商談が上手く行ったので、あの子は将来わたくしの仕事をサポートさせる形で立派な貴族に育て上げよう。まぁ、姉の面影があってウザいけど……。
そんな新たな目標も出来たところで、やっとわたくしのもとへ王太子との縁談がきたのである。やはりエイムズ伯爵家との縁談だったのだ。つまり、本来のあるべき縁談の姿へと戻っただけ。わたくしは自力で自分の地位を守ったのですわ。
⸺⸺エイムズ伯爵の屋敷⸺⸺
「ただいま戻りましたわ」
「おぉ、エメリーヌ。商談はどうだったかね?」
と、お父様。そう言えば隣町まで商談に行くって言っておいたのでしたわ。
「そ、それが……」
わたくしは迫真の演技で落ち込んでみせる。
「何っ、破談になったのかね!? というかティニーはどうしたのだ?」
「そう、その事で残念なお話がございますの。実は……城下で昼食を取っていたところ、気付いたらティニーが勝手にいなくなってしまい、城下の民から“魔の森”の方へ走っていく女の子を見たと伺い、慌ててわたくしも馬を飛ばして森の入り口の方まで見に行ったのですが……見つからなかったのです……商談もそのせいで遅れてしまったため破談に……申し訳ありません」
「なっ、何だと!?」
お父様は絶望の表情を浮かべている。1つ商談が破談になっただけで何て顔をするのでしょう。
「ティニーがいなくなってしまったというのに、お前は見つけもせずに諦めて商談なんかに行ったのか!?」
「えっ……?」
そっち……? あの子がいなくなった事にそんな絶望しているの? 一体なぜですの?
「商談なんかどうだっていい! 早くティニーを見つけなくては! あぁ、大変な事になった! まだ7つの子どもだぞ。それにもう、“あの子しかいないというのに”」
「一体なぜそんなに慌てているのですか? 魔の森に行ったのですよ。もう、きっとあの子は……」
「魔の森ならきっとまだ生きている! 何をしているのだ、早く見つけて来ないか! ティニーを見つけてくるまでお前は帰ってこなくていい!」
お父様の表情は今までにないほど険しかった。一体あの子が何だと言うのでしょう。
「そ、そんな……! あの魔の森ですよ!? 魔除けも持たずに行ったのですよ!? それにわたくしは王族になる身です! なぜその王族のわたくしが、勝手にいなくなってしまった赤の他人の問題児を探しに行かなくてはならないのですか?」
その後のお父様の一言は、わたくしの顔を真っ青にするのに十分だった。
「うるさい黙れ! お前が王太子殿下と婚約出来たのはティニーのおかげだぞ!? あの子がいなければ今回の婚約の話もなしになるぞ!」
「嘘、嘘ですわ……。そ、そんなはずありません!」
求められていたのはわたくしではなく、あの子の方!?
わたくしは屋敷を飛び出して、城の王太子殿下のもとへと向かった。
姉の子にも感染したらマズいと思い心配しているふりをして隔離をしたかったけど、姉の子は必死に自分の親を看病していた。
あの子にもかかってしまってもし死んでしまったら、わたくしの財産が……そうヒヤヒヤしていたが、幸いにもあの子に病が移ることはなかった。
姉には致死量の3倍のウイルスを送り込んだから、日に日に死に近づいていき、わたくしの計画通りにわたくしに富を託し、あっけなく死んでいった。その後娘もウイルスを注入してやろうかと思い再び研究所へ向かったが、病原体を手に入れる事は出来なかった。
まぁ、餓鬼を処分する方法なんて沢山ある。焦る必要はない。
それにしても姉が死んで皆悲しみに暮れる中、お父様と国王陛下だけはなぜか焦っているようだった。婚姻が出来なくなってしまったから体裁を気にしているのか。でも、まだ世間には婚約の発表すらしていないし、一体なぜ……? それに、姉がいなくなってもわたくしがいる。
それからはしばらくその話は出て来なくなってしまった。
わたくしはお父様の会社で働いているが、取引先に姉の子を育てているという話をすると商談が上手く行ったので、あの子は将来わたくしの仕事をサポートさせる形で立派な貴族に育て上げよう。まぁ、姉の面影があってウザいけど……。
そんな新たな目標も出来たところで、やっとわたくしのもとへ王太子との縁談がきたのである。やはりエイムズ伯爵家との縁談だったのだ。つまり、本来のあるべき縁談の姿へと戻っただけ。わたくしは自力で自分の地位を守ったのですわ。
⸺⸺エイムズ伯爵の屋敷⸺⸺
「ただいま戻りましたわ」
「おぉ、エメリーヌ。商談はどうだったかね?」
と、お父様。そう言えば隣町まで商談に行くって言っておいたのでしたわ。
「そ、それが……」
わたくしは迫真の演技で落ち込んでみせる。
「何っ、破談になったのかね!? というかティニーはどうしたのだ?」
「そう、その事で残念なお話がございますの。実は……城下で昼食を取っていたところ、気付いたらティニーが勝手にいなくなってしまい、城下の民から“魔の森”の方へ走っていく女の子を見たと伺い、慌ててわたくしも馬を飛ばして森の入り口の方まで見に行ったのですが……見つからなかったのです……商談もそのせいで遅れてしまったため破談に……申し訳ありません」
「なっ、何だと!?」
お父様は絶望の表情を浮かべている。1つ商談が破談になっただけで何て顔をするのでしょう。
「ティニーがいなくなってしまったというのに、お前は見つけもせずに諦めて商談なんかに行ったのか!?」
「えっ……?」
そっち……? あの子がいなくなった事にそんな絶望しているの? 一体なぜですの?
「商談なんかどうだっていい! 早くティニーを見つけなくては! あぁ、大変な事になった! まだ7つの子どもだぞ。それにもう、“あの子しかいないというのに”」
「一体なぜそんなに慌てているのですか? 魔の森に行ったのですよ。もう、きっとあの子は……」
「魔の森ならきっとまだ生きている! 何をしているのだ、早く見つけて来ないか! ティニーを見つけてくるまでお前は帰ってこなくていい!」
お父様の表情は今までにないほど険しかった。一体あの子が何だと言うのでしょう。
「そ、そんな……! あの魔の森ですよ!? 魔除けも持たずに行ったのですよ!? それにわたくしは王族になる身です! なぜその王族のわたくしが、勝手にいなくなってしまった赤の他人の問題児を探しに行かなくてはならないのですか?」
その後のお父様の一言は、わたくしの顔を真っ青にするのに十分だった。
「うるさい黙れ! お前が王太子殿下と婚約出来たのはティニーのおかげだぞ!? あの子がいなければ今回の婚約の話もなしになるぞ!」
「嘘、嘘ですわ……。そ、そんなはずありません!」
求められていたのはわたくしではなく、あの子の方!?
わたくしは屋敷を飛び出して、城の王太子殿下のもとへと向かった。
1,187
お気に入りに追加
2,006
あなたにおすすめの小説

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!
サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。
「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」
飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう――
※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる