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39話 竜騎士団長
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「ひぃっ……何十年も注いできた古代兵器の魔力が……たった一人の小娘なんぞに……!」
セルフィス国王は絶望しながら王都を出ていこうとする。そんな彼を余所に、ジークが私に歩み寄り、両手を握ってきた。
「ユア、王都を守ってくれてありがとう。自分の魔力を使うのは嫌だっただろうに」
ジークは私の事をよく理解してくれている。
私にとって自分の魔力は嫌悪の存在でしかなく、そのせいでずっと苦しめられてきた。だから魔道士とかにもならなかったし、魔力は使わないまま過ごそうと思ってた。
でも……。
「ラックが二人を守った時に、初めて自分の魔力を誇らしく思えた。だから、この魔力を、私を普通の女の子として受け入れてくれたこの王都を守るために使いたいって思ったの」
「そっか……まだ魔力は残ってそうだな」
「うん、まだ、大丈夫そうだけど……」
私が首を傾げたその瞬間、王都の上空にドラゴンの大群が押し寄せてきた。
先頭は真っ黒な一際大きなドラゴン。あれってもしかして……。
「長老様!?」
『ジークハルト、ユア。遅くなった』
長老様はそうテレパシーを送ってくると、高らかに雄叫びを上げた。
「……という訳だユア。その魔力、俺に分けてくれ。全部ケリつけてくる」
「え、魔力を分けるって、どうやって?」
「こうすりゃいい」
手を握ったまま、お互いに目を閉じ額をくっつける。すると、私の魔力がジークの中へと流れていくのを感じた。
「こんなもんで良いだろ。これであの愚王の魔力装甲を突破出来る……俺の騎士団員も揃ったみてぇだな」
「えっ?」
驚いて振り返ると、綺麗に整列した騎士たちが私たちへ敬礼をしていた。いつの間に来ていたんだろう、全然気付かなかった。しかも、俺の騎士団員……!?
「ジークハルト団長! 今日この時のために我々はラグーン殿らと共に飛行の訓練を積んで参りました! いつでも出陣できます!」
「あぁ、俺のわがままに付き合ってくれてありがとな。長老様、みんな、力を貸してくれ」
ドラゴンの勇ましい雄叫びが王都の空から降り注ぐ。
そしてジークは長老様に、騎士のみんなもそれぞれドラゴンに乗ると王都のすぐ外の平原を占拠していたセルフィス王国軍めがけて飛んでいった。
「僕らも行こう、ユア」
「えっ、行っていいの?」
レイに言われて驚いていると、巨大化したウィングとエールが目の前に降り立った。
「行っていいからウィングとエールは残ってるんだよ」
レイはそう言ってウィングに飛び乗る。そのため私も極力首を下げてくれているエールの背中へとよじ登った。
ラックもエールの首に捕まったのを確認すると、ドラゴンたちはゆっくりと浮き上がり、前方の竜騎士団を追いかけた。
ジークの乗る長老様が逃げるセルフィス国王へあっという間に追い付く。
ジークはセルフィス城下町で威嚇した時のような赤いオーラを全身にまとうと、王都からすぐの平原に逃げ込んだセルフィス国王めがけて双剣を引き抜き斬撃を放った。
「え、あっ……これって……」
ジークがあまりにもあっさりと敵軍の大将の首を討ち取ってしまったため、唖然としてしまった。
「セルフィス軍にこれ以上の戦意がない限り、うちの勝利だろうね。まぁ、あのドラゴンの大群を見てすっかりビビっちゃったようだけど……」
ザッと見て1万くらいはいるんじゃないだろうかというセルフィス王国軍は、王妃様を先頭に皆一様に土下座をしていた。
マギアウェポンの魔力を失い、指導者も失った彼らは、30あまりの竜騎士団の圧倒的な気迫になす術もなくなってしまったようだった。
「セルフィス王国の王妃でございます。我ら、無条件での降伏を致します。どうか、御慈悲を……」
王妃様……。もしかしたら私の将来の姿になっていたかもしれない立場の人。きっと、自分の魔力が結界を維持していると信じて今まで務めを果たしてきたはずだ。彼女も被害者なんだ。
ジークはセルフィス王国軍を見渡し、皆武器を捨てているのを確認したからか、「その降伏を受け入れよう」と宣言をして王妃様の前へと降り立った。
セルフィス国王は絶望しながら王都を出ていこうとする。そんな彼を余所に、ジークが私に歩み寄り、両手を握ってきた。
「ユア、王都を守ってくれてありがとう。自分の魔力を使うのは嫌だっただろうに」
ジークは私の事をよく理解してくれている。
私にとって自分の魔力は嫌悪の存在でしかなく、そのせいでずっと苦しめられてきた。だから魔道士とかにもならなかったし、魔力は使わないまま過ごそうと思ってた。
でも……。
「ラックが二人を守った時に、初めて自分の魔力を誇らしく思えた。だから、この魔力を、私を普通の女の子として受け入れてくれたこの王都を守るために使いたいって思ったの」
「そっか……まだ魔力は残ってそうだな」
「うん、まだ、大丈夫そうだけど……」
私が首を傾げたその瞬間、王都の上空にドラゴンの大群が押し寄せてきた。
先頭は真っ黒な一際大きなドラゴン。あれってもしかして……。
「長老様!?」
『ジークハルト、ユア。遅くなった』
長老様はそうテレパシーを送ってくると、高らかに雄叫びを上げた。
「……という訳だユア。その魔力、俺に分けてくれ。全部ケリつけてくる」
「え、魔力を分けるって、どうやって?」
「こうすりゃいい」
手を握ったまま、お互いに目を閉じ額をくっつける。すると、私の魔力がジークの中へと流れていくのを感じた。
「こんなもんで良いだろ。これであの愚王の魔力装甲を突破出来る……俺の騎士団員も揃ったみてぇだな」
「えっ?」
驚いて振り返ると、綺麗に整列した騎士たちが私たちへ敬礼をしていた。いつの間に来ていたんだろう、全然気付かなかった。しかも、俺の騎士団員……!?
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「あぁ、俺のわがままに付き合ってくれてありがとな。長老様、みんな、力を貸してくれ」
ドラゴンの勇ましい雄叫びが王都の空から降り注ぐ。
そしてジークは長老様に、騎士のみんなもそれぞれドラゴンに乗ると王都のすぐ外の平原を占拠していたセルフィス王国軍めがけて飛んでいった。
「僕らも行こう、ユア」
「えっ、行っていいの?」
レイに言われて驚いていると、巨大化したウィングとエールが目の前に降り立った。
「行っていいからウィングとエールは残ってるんだよ」
レイはそう言ってウィングに飛び乗る。そのため私も極力首を下げてくれているエールの背中へとよじ登った。
ラックもエールの首に捕まったのを確認すると、ドラゴンたちはゆっくりと浮き上がり、前方の竜騎士団を追いかけた。
ジークの乗る長老様が逃げるセルフィス国王へあっという間に追い付く。
ジークはセルフィス城下町で威嚇した時のような赤いオーラを全身にまとうと、王都からすぐの平原に逃げ込んだセルフィス国王めがけて双剣を引き抜き斬撃を放った。
「え、あっ……これって……」
ジークがあまりにもあっさりと敵軍の大将の首を討ち取ってしまったため、唖然としてしまった。
「セルフィス軍にこれ以上の戦意がない限り、うちの勝利だろうね。まぁ、あのドラゴンの大群を見てすっかりビビっちゃったようだけど……」
ザッと見て1万くらいはいるんじゃないだろうかというセルフィス王国軍は、王妃様を先頭に皆一様に土下座をしていた。
マギアウェポンの魔力を失い、指導者も失った彼らは、30あまりの竜騎士団の圧倒的な気迫になす術もなくなってしまったようだった。
「セルフィス王国の王妃でございます。我ら、無条件での降伏を致します。どうか、御慈悲を……」
王妃様……。もしかしたら私の将来の姿になっていたかもしれない立場の人。きっと、自分の魔力が結界を維持していると信じて今まで務めを果たしてきたはずだ。彼女も被害者なんだ。
ジークはセルフィス王国軍を見渡し、皆武器を捨てているのを確認したからか、「その降伏を受け入れよう」と宣言をして王妃様の前へと降り立った。
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