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第四章 幸せの形

63話 冷凍魚のその後

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「クラン黒狼の牙の三牙狼の皆様、この度は我が愚女、愚息が大変ご迷惑をおかけしました」
 そう言って私たちの前に姿を現したのは、クラニオ族のおじさんだった。その隣にはリュカが立っている。

「あ、もしかして……」
 私がそう言いかけると、リュカが頷いて続きを話す。
「うん、僕のお父様、アングスト・ラメール国王陛下。記事、見たって」

 それに対しレオンが苦い顔をする。
「……こちらこそ、貴殿のご子息ご息女、半殺しにしました……申し訳ない」

「いえ、我が国にはあの様に制裁を下せるような者がおりませんで、正直手を焼いておりましたので……。リュカが国を出ていってしまったのも、私がリュカを甘やかし、彼らの嫉妬を誘ってしまったのが原因だったと猛省しております」

「お父様、だからあえて僕のこと探さなかったんだって」
 と、リュカ。

「はい、どこでどうしているのか心配で心配で仕方がありませんでしたが、リュカのためにもこのまま自由にしてあげて、我が国は残りの子たちに継がせようと思っていました。ですが、あの子たちは他国までリュカを追い詰め、愚行に走りました……。あのコロシアムでの記事を見たとき、私は全員で首を釣ろうかと思いました……」

「あわわわ……」
 私は冷や汗を垂らす。

「ですが、ラメールの国民のため、そういう訳にもいきません。私はあの子らの母親であるルージュ王妃共々、あの子らの王族権を剥奪し、国外永久追放としました」

「ほら、そっちのも記事になってんぜ」
 マルクス様がそう言って新聞を私たちの机にポンと置く。

「わぁ、本当だ。『焼き魚と冷凍魚の王族権剥奪に賞賛の声』……『行き場の無くなった焼き魚と冷凍魚。行く先々で石を投げられる』だって」
 私はそう読み上げてジェイミの方を見る。
「ちょ、僕の筋書き通りになりすぎて自分が怖い……」
 彼は苦い顔をして縮こまっていた。

「記事も焼き魚だとか冷凍魚って言い方すんだな……。結構悪意あるな……こえぇ」
 と、ジャン。
 それに対し私も心の中でそう思ってたなー……と、反省した。

 ここでレオンがある疑問をぶつける。
「全員追放して、今ラメール城に残られてるのは……?」
「ええ、王族は私のみですね」
 と、アングスト国王。それに対しリュカがこう続く。
「それ僕も思ってて触れないようにしてたんだよ……。僕、王位なんて継ぎたくないよ?」

「リュカ、分かっているよ。お前がこうしてこの国で伸び伸びと暮らしていてくれて、お前の芸術のセンスが存分に発揮されて、私は嬉しいんだよ」
「……じゃぁ、後継ぎはどうすんのさ……」

「それなんだが、私ももう一度婚活してみようかなー、なんて」
 アングスト国王はそう言って照れ笑いをしていた。
「こ、婚活!? お父様、マジで言ってんの……?」
 息子はドン引きしていますよ。

「マジだよー。私もラメール王家を絶やさないように必死だからね。という訳でさくらさん、おじさんなんてどうでしょうか?」
「何でみんなとりあえず私に言ってくんの!?」

「がははは、アングスト国王も隅に置けませんな! 実は猫娘は俺も狙っているのですよ」
 カーサ国王がここぞとばかりに介入してくる。
「やや、カーサ国王、もしやライバルですな?」
 おい、おっさん共。勝手に盛り上がるなやい。

「お父様、さっき、さくらにはもう3人も旦那がいるって言ってたでしょ。諦めて。僕もさくらがお母さんになるのはちょっと恥ずかしいからさ……」
「旦那ではないんだけどね……」
 私はそう悪あがきをする。

「やはりダメですか。仕方がありません、他を当たりますか……」
 ショボンとするアングスト国王へ、ビクトリア王妃が歩み寄る。
「エルフなら選び放題ですよ?」
「やや、ビクトリア王妃、お気遣い感謝致します。ですが私は、できれば卵を生んでくれるおなごがいいのですが……」
「まぁ、それは残念。クラニオかプラムでないと、ですね……」

「じゃぁ私もダメじゃん!」
 私がそう発狂すると、周りからは笑いが起こった。
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