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10話 寝室
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大きなお風呂でばあや様とレベッカ様に身体を洗ってもらっていると、私も知らないうちにあちこちに古い傷痕があることが分かった。
政略結婚だからそんな事はないと思うけど、もし仮にオスカー様と身体を重ねるなんてことがあれば、こんな傷見られたら嫌われてしまうかもしれない。
そう思うととても悲しくなったが、ここまで古い傷だと回復薬ではもう治せないようで、ばあや様とレベッカ様に何度も謝らせてしまったため、もう気にしていないフリをすることにした。
⸺⸺夜。
可愛いネグリジェを着せてもらい、寝室のあるという扉を開けてみる。
すると、とても1人用とは思えないくらいの大きなベッドが真ん中に1つだけ置いてあり、向かいの壁にももう1つ扉があることが分かった。
まさか、あの扉の向こうにはオスカー様のお部屋が!?
廊下から見たオスカー様のお部屋の配置からして、この隣がそうだし、こんな状況そうとしか考えられない。
私なんかが、オスカー様と一緒に寝てもいいの?
そう思うと同時に、アーレンス城でのトラウマが蘇る。
いつも私のベッドは下半分が水浸しになっていて、思えばベッドで寝たことなんてなかった。
そして毎朝召使さんに「またおねしょですか」って怒られる。私、いつも床の上で寝ていたからそんなところでおねしょなんてできるはずないのに。
そのトラウマが私の頭の中を支配して、どうしてもベッドへと潜り込むことができなかった。
ベッドの前でウロウロする私。このタイミングでオスカー様が来てしまったらどうしよう……。
っていうかこういうのって、オスカー様が来るまで待つべき? 勝手に1人で寝てていいのかな……。そもそも政略結婚なのになんでベッド1つだけなんだろう。
考えすぎて頭が破裂しそうになる。
ふと時計を見ると、23時を回っていた。ひょっとして、オスカー様ここには来ないんじゃないか。
実はオスカー様のお部屋には別の寝室の入り口があって、あの扉の先は物置かなんかだったりして。
そうに違いない。よし、それなら私は床の上で寝よう。
そう信じて、ベッドのすぐ下の床の上で横になった。
⸺⸺
翌朝。
「んー……」
あれ、もう朝か。なんだかとてもぐっすり眠れてスッキリしている。
そして身体を起こすと、私はあの大きなベッドでしっかり布団を被って寝ていることに気が付いた。
「あれ、どうして……」
ふと横を見るが、当然のようにオスカー様の姿はそこにはない。
きっとレベッカ様が運んでくれたんだろう。そうに違いない。
それにしても、ベッドで寝るってこんなに気持ちが良いんだ……。今日からベッドで寝てみようかな……。
うーんと、大きく伸びをして、自室へと入る。すると、ばあや様とレベッカ様が既に部屋の中で待機をしていた。
「「おはようございます、フローラ様」」
「ばあや様、レベッカ様、おはようございます」
服を着せてもらいながら、昨日のことを尋ねる。
「昨日は、レベッカ様が私をベッドへと寝かせてくれたのですか?」
「ベッド、ですか……? 私は寝室には入ってはいませんが……」
レベッカ様はそう不思議そうな顔をして答えた。
「えっ?」
私は唖然とする。すると、ばあや様がこう教えてくれた。
「わたくし共は、昼間のお掃除の時以外、オスカー様とフローラ様の寝室には入りませんよ。特にお二人がお休みになっている夜の間など、絶対に入りません」
「え、やっぱりあの寝室はオスカー様と一緒の寝室だったのですか!?」
「あれま……ご存知なかったのですね……。お知らせせず、申し訳ございませんでした」
と、ばあや様。
「あの寝室でオスカー様と会われてないのですか?」
と、レベッカ様。
「はい、私が寝るときには誰もおらず、起きてからも誰もいませんでした……」
「そうですか……。それにしてもフローラ様は、ベッドでは寝られなかったのですか?」
と、レベッカ様。
ここで、私は過去のトラウマから床で寝たことを告げる。
「そんな、お可哀想に……。このお屋敷に来たからには、水浸しになっているなど絶対にありえませんので、宜しければベッドの上で寝てくださいね」
レベッカ様は寂しそうな表情でそう言ってくれた。
「はい……ありがとうございます……」
オスカー様もあの部屋には来られてないようだったし、寝ぼけて自分で登ったのだろうか。そんな事を考えながら、楽しみな朝食のお部屋へと向かった。
政略結婚だからそんな事はないと思うけど、もし仮にオスカー様と身体を重ねるなんてことがあれば、こんな傷見られたら嫌われてしまうかもしれない。
そう思うととても悲しくなったが、ここまで古い傷だと回復薬ではもう治せないようで、ばあや様とレベッカ様に何度も謝らせてしまったため、もう気にしていないフリをすることにした。
⸺⸺夜。
可愛いネグリジェを着せてもらい、寝室のあるという扉を開けてみる。
すると、とても1人用とは思えないくらいの大きなベッドが真ん中に1つだけ置いてあり、向かいの壁にももう1つ扉があることが分かった。
まさか、あの扉の向こうにはオスカー様のお部屋が!?
廊下から見たオスカー様のお部屋の配置からして、この隣がそうだし、こんな状況そうとしか考えられない。
私なんかが、オスカー様と一緒に寝てもいいの?
そう思うと同時に、アーレンス城でのトラウマが蘇る。
いつも私のベッドは下半分が水浸しになっていて、思えばベッドで寝たことなんてなかった。
そして毎朝召使さんに「またおねしょですか」って怒られる。私、いつも床の上で寝ていたからそんなところでおねしょなんてできるはずないのに。
そのトラウマが私の頭の中を支配して、どうしてもベッドへと潜り込むことができなかった。
ベッドの前でウロウロする私。このタイミングでオスカー様が来てしまったらどうしよう……。
っていうかこういうのって、オスカー様が来るまで待つべき? 勝手に1人で寝てていいのかな……。そもそも政略結婚なのになんでベッド1つだけなんだろう。
考えすぎて頭が破裂しそうになる。
ふと時計を見ると、23時を回っていた。ひょっとして、オスカー様ここには来ないんじゃないか。
実はオスカー様のお部屋には別の寝室の入り口があって、あの扉の先は物置かなんかだったりして。
そうに違いない。よし、それなら私は床の上で寝よう。
そう信じて、ベッドのすぐ下の床の上で横になった。
⸺⸺
翌朝。
「んー……」
あれ、もう朝か。なんだかとてもぐっすり眠れてスッキリしている。
そして身体を起こすと、私はあの大きなベッドでしっかり布団を被って寝ていることに気が付いた。
「あれ、どうして……」
ふと横を見るが、当然のようにオスカー様の姿はそこにはない。
きっとレベッカ様が運んでくれたんだろう。そうに違いない。
それにしても、ベッドで寝るってこんなに気持ちが良いんだ……。今日からベッドで寝てみようかな……。
うーんと、大きく伸びをして、自室へと入る。すると、ばあや様とレベッカ様が既に部屋の中で待機をしていた。
「「おはようございます、フローラ様」」
「ばあや様、レベッカ様、おはようございます」
服を着せてもらいながら、昨日のことを尋ねる。
「昨日は、レベッカ様が私をベッドへと寝かせてくれたのですか?」
「ベッド、ですか……? 私は寝室には入ってはいませんが……」
レベッカ様はそう不思議そうな顔をして答えた。
「えっ?」
私は唖然とする。すると、ばあや様がこう教えてくれた。
「わたくし共は、昼間のお掃除の時以外、オスカー様とフローラ様の寝室には入りませんよ。特にお二人がお休みになっている夜の間など、絶対に入りません」
「え、やっぱりあの寝室はオスカー様と一緒の寝室だったのですか!?」
「あれま……ご存知なかったのですね……。お知らせせず、申し訳ございませんでした」
と、ばあや様。
「あの寝室でオスカー様と会われてないのですか?」
と、レベッカ様。
「はい、私が寝るときには誰もおらず、起きてからも誰もいませんでした……」
「そうですか……。それにしてもフローラ様は、ベッドでは寝られなかったのですか?」
と、レベッカ様。
ここで、私は過去のトラウマから床で寝たことを告げる。
「そんな、お可哀想に……。このお屋敷に来たからには、水浸しになっているなど絶対にありえませんので、宜しければベッドの上で寝てくださいね」
レベッカ様は寂しそうな表情でそう言ってくれた。
「はい……ありがとうございます……」
オスカー様もあの部屋には来られてないようだったし、寝ぼけて自分で登ったのだろうか。そんな事を考えながら、楽しみな朝食のお部屋へと向かった。
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