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19話 リーテン城へ
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クラウスはテキパキと部隊を編成していく。
私はもちろんクラウスと同じ部隊に編入されて、彼の馬の後ろに乗せてもらった。
そして彼率いる大隊でリーテン王国を目指す。
すると、リーテンの王都『リーティア』から大量の兵士が飛び出て来る。
リーテン軍だ。
「彼らは士気もぐっと低いと聞く。可能な限り殺さずに戦闘不能にし、その場に拘束せよ!」
「了解!」
クラウスの一声で、リーテン軍との交戦が開始され、あっという間にロープでぐるぐる巻にされたリーテン軍の山が出来上がっていく。
そしてクラウスが最後のリーテン軍の兵士へ膝をつかせると、彼へこう呼びかけた。
「俺たちはこの国を邪神教から救いに来た。王都が戦場になるかもしれない。王都民を我が国ステリアへ避難させる手伝いをしてもらえないか?」
「滅ぼしに来たのではないのですね……。俺らももう何のために戦っているのか分からなかったところです。あなたの言葉を信じ、協力しましょう……」
次にその兵士からの説得によりリーテン軍全員の懐柔に成功した私たちは、回復魔法で彼らを回復させると、王都民を次々とステリアへと避難させていった。
そして部隊の大部分が王都民の誘導をする中、クラウス率いる精鋭部隊はガランとした王都を突っ切り、リーテン城へとたどり着いた。
⸺⸺リーテン城⸺⸺
城の中は全く人気がなく、部隊の一部を地下牢へと向かわせ、数人で玉座の間へと侵入する。
するとそこにいたのは、ボロボロの汚い服で四つん這いになって涙を流すジョン王子の姿だった。
「シェリー……来てくれたんだね……」
ええ。あなたのためではないけど。
「ちょっと、足置きの分際で勝手にしゃべるなって何度言ったら分かるのよ」
「あぁん! すみませんエイダ様っ……!」
彼はエイダと名乗る女にハイヒールのかかとでグリグリされて悶えていた。
別にジョン王子のことは好きではなかったけど、ここまで堕ちた彼を見るのは少し不憫な気持ちになった。
「……で? あんた今更この城に何しに来た訳?」
エイダは私を見てそう言う。
「この城をあなたから、いえ、ミラ教から解放しに来たのよ」
「! どこでそれを……」
彼女は少し動揺していた。私は更にある疑問をぶつける。
「というか、あなた、エイダって名乗ってた頃から随分と風貌が変わったのね」
私は彼女を下から上まで順に見る。
私の知るエイダはもう少し人間味があったはずだ。
しかし今の彼女は全身に黒いモヤをまとい、目は赤黒く光り、まるで魔物のような風貌だった。
「んふふ。あたしは今もエイダよ。リーテンもアンカードも私のものよ?」
彼女がそう言うと、牢屋から解放されたリーテン国王陛下と王妃殿下が私たちの部隊の数人に連れられて入ってくる。
「シェリー、クラウス……来てくれてありがとう」
と、国王陛下。
「シェリーちゃん、今回のこと、本当にごめんなさい。あなたに謝れないままになってしまっていたから……」
王妃殿下はそう言って涙を流していた。
「私はもう良いのです。それよりも、今は彼女をなんとかします」
「なんとかするってどうするのかしら? あたし、この“地上界”にはない力を持っているけど?」
エイダは余裕の笑みを浮かべている。
「そんなの、やってみないと分からないじゃない」
私がそう言って杖を構えると、クラウスも剣を引き抜いて私の前へと出た。
「シェリー、大丈夫だ。お前は俺が守る」
「ええ、信じているわ」
エイダを名乗る謎の女との戦闘が開始された。
私はもちろんクラウスと同じ部隊に編入されて、彼の馬の後ろに乗せてもらった。
そして彼率いる大隊でリーテン王国を目指す。
すると、リーテンの王都『リーティア』から大量の兵士が飛び出て来る。
リーテン軍だ。
「彼らは士気もぐっと低いと聞く。可能な限り殺さずに戦闘不能にし、その場に拘束せよ!」
「了解!」
クラウスの一声で、リーテン軍との交戦が開始され、あっという間にロープでぐるぐる巻にされたリーテン軍の山が出来上がっていく。
そしてクラウスが最後のリーテン軍の兵士へ膝をつかせると、彼へこう呼びかけた。
「俺たちはこの国を邪神教から救いに来た。王都が戦場になるかもしれない。王都民を我が国ステリアへ避難させる手伝いをしてもらえないか?」
「滅ぼしに来たのではないのですね……。俺らももう何のために戦っているのか分からなかったところです。あなたの言葉を信じ、協力しましょう……」
次にその兵士からの説得によりリーテン軍全員の懐柔に成功した私たちは、回復魔法で彼らを回復させると、王都民を次々とステリアへと避難させていった。
そして部隊の大部分が王都民の誘導をする中、クラウス率いる精鋭部隊はガランとした王都を突っ切り、リーテン城へとたどり着いた。
⸺⸺リーテン城⸺⸺
城の中は全く人気がなく、部隊の一部を地下牢へと向かわせ、数人で玉座の間へと侵入する。
するとそこにいたのは、ボロボロの汚い服で四つん這いになって涙を流すジョン王子の姿だった。
「シェリー……来てくれたんだね……」
ええ。あなたのためではないけど。
「ちょっと、足置きの分際で勝手にしゃべるなって何度言ったら分かるのよ」
「あぁん! すみませんエイダ様っ……!」
彼はエイダと名乗る女にハイヒールのかかとでグリグリされて悶えていた。
別にジョン王子のことは好きではなかったけど、ここまで堕ちた彼を見るのは少し不憫な気持ちになった。
「……で? あんた今更この城に何しに来た訳?」
エイダは私を見てそう言う。
「この城をあなたから、いえ、ミラ教から解放しに来たのよ」
「! どこでそれを……」
彼女は少し動揺していた。私は更にある疑問をぶつける。
「というか、あなた、エイダって名乗ってた頃から随分と風貌が変わったのね」
私は彼女を下から上まで順に見る。
私の知るエイダはもう少し人間味があったはずだ。
しかし今の彼女は全身に黒いモヤをまとい、目は赤黒く光り、まるで魔物のような風貌だった。
「んふふ。あたしは今もエイダよ。リーテンもアンカードも私のものよ?」
彼女がそう言うと、牢屋から解放されたリーテン国王陛下と王妃殿下が私たちの部隊の数人に連れられて入ってくる。
「シェリー、クラウス……来てくれてありがとう」
と、国王陛下。
「シェリーちゃん、今回のこと、本当にごめんなさい。あなたに謝れないままになってしまっていたから……」
王妃殿下はそう言って涙を流していた。
「私はもう良いのです。それよりも、今は彼女をなんとかします」
「なんとかするってどうするのかしら? あたし、この“地上界”にはない力を持っているけど?」
エイダは余裕の笑みを浮かべている。
「そんなの、やってみないと分からないじゃない」
私がそう言って杖を構えると、クラウスも剣を引き抜いて私の前へと出た。
「シェリー、大丈夫だ。お前は俺が守る」
「ええ、信じているわ」
エイダを名乗る謎の女との戦闘が開始された。
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