上 下
220 / 228
最終章 刻の軌跡

220話 最強のスキル

しおりを挟む
「おぉぉぉ、クロノかっこいい!」
 ミオは大興奮でぴょんぴょんと飛び跳ねる。聖霊らも同じように歓喜の声を上げていた。

 一方でハミルトン卿やジン、そして遠くで見ていた国綱らは目を真ん丸にして唖然としており、クロノの姿の答えを求めてミオのもとへと集まってくる。
 その彼らとすれ違うように、クロノはミオに「行ってくる」と告げると、翼をはためかせてプレイアデスのもとへと戻っていった。

 ミオは国綱やマルクスらが自分の周りに集まったのを確認すると、説明のため口を開く。
「クロノが異世界転生の時に得たスキルの名は“龍神”」
「龍神!? 竜の神様って事か……」
 と、マルクス。
「龍神の状態となっているクロノはステータスが大幅にアップしていて、実質無敵の状態。でも、ただ単にステータスがアップしているだけじゃない。龍神の状態の時にだけオートで発動するスキルがある」
「そ、それは一体……!?」
 ハミルトン卿がミオへと迫ると、彼女はクロノを指差し、皆に彼を見るよう促した。

「お前、ちょっと姿が変わったからって俺の暗黒を突破出来ると思ってるのか?」
 プレイアデスは喉でくっくと笑う。
 そんな彼へ、クロノは冷たくこう言い放った。

「“ひざまずけ”」

「!?」
 プレイアデスはその瞬間ビターンと効果音を上げながら土下座のポーズをした。
「船長かっけぇ! マジかっけぇ!」
 興奮するケヴィン。プレイアデスと対峙していた皆もわーっと盛り上がる。

 一方でプレイアデスはダラダラと冷や汗を流していた。
「な、何だ……? 一体何が起こっている……!?」
「“頭を垂れろ”」
「!?」
 プレイアデスは両手を前に突いて勢い良く頭を地面に叩きつけ、その衝撃で額からは血が流れていた。

 圧倒されているジンたちへ、ミオは説明を再開した。
「龍神の状態の時にだけオートで発動するスキル。そのスキルの名は”デーモンテイマー”。魔人、魔族、魔物……。私たちが“黒い気”と呼ぶ元素をその身体の構成要素としている全ての生き物を問答無用で使役するスキル」

「そ、そんな力が……!」
 ハミルトン卿は目をパチクリとさせる。
「……やっぱ異世界転生ってチート行為だよな……。俺も次元の狭間でもうちょいわがまま言えば良かったかな……」
 難しい顔をしてうーんと腕組みをしているジン。

「クロノは前世で竜人の王子として常に前線で魔人と戦い、そして散った。魔人を超えられなかった無念を抱えたクロノは、竜としてもっと強く、人としてもっと膨大な魔力を。そして、今度こそ魔人を圧倒する。彼の魂はそんな強い願いを持って次元の狭間へと飛ばされた」
 静かに淡々と語るミオの言葉を、皆は真剣に聞き入っていた。彼女は更に続ける。

「その彼の願いを聞き入れて次元の狭間で作られたスキルが“龍神”と“デーモンテイマー”だった。だけど“神”と名の付くスキルは世界の根底を覆す恐れがあり、次元の狭間の管理局の審議にかけられた。結果、そのスキルは保留となって、長い間次元の狭間で大切に保管されていた」

「管理局って何だよ……あそこ確か何もないんだけど……」
 ジンはそうボソッと独りでツッコむ。

「しかし今、その“神”と名の付くスキルこそが世界のことわりを守るものだと管理局で認められ、クロノへと返却されることになったの。本当は私がもっと早くもらってるはずだったけど、もらい損ねちゃってこんなギリギリになっちゃったんだって……ごめんなさい」
 ミオは最後にてへっとウインクをして誤魔化した。

「いや、可愛いから許す! けど、ミオは何で、んな事情まで知ってんだ?」
 と、マルクス。
「クロノのスキルを次元の狭間の管理人さんから預かった時に、今話した情報が全部頭に入って来たの。クロノも同じ情報を得たはずだから、ああやって即座に使いこなせてるんだと思う」
「なるほどな」

「なら、クロノが“死ね”とでも言えば、全部解決するのではないか?」
 と、国綱。
「どうなんだろう。クロノはどうやって解決するつもりなんだろう……」
「そこまではミオでも分からないのだな」
 そう言うパーシヴァルにミオがうんと頷くと、皆は再びクロノの動向を見守った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

処理中です...