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第九章 人魚姫と刻の解放
171話 懐中時計の精神世界
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⸺⸺懐中時計の精神世界⸺⸺
クロノとミオは、ある高貴な部屋の中にいた。
「ここは……俺の生まれた部屋……」
「本当だ。ナディアさんが生まれたばかりのクロノを抱いていた部屋だね」
『クロノ。なるほど、時計に刻んだ“クロノス”からそう名付けてもらったのね』
「っ!」
彼らがその声に驚き振り返ると、そこには優しい表情のナディアが立っていた。
「あっ、ナディアさん……!」
「俺の……母親……」
『少し話しましょう。そこへ座って』
クロノとミオはナディアに言われるがままにベッドへと腰掛ける。
ナディアはベッドの前にあった椅子に座ると、再び口を開いた。
『すごく大きくなったのね、レオ……いえ、クロノ。今はいくつなの?』
「25……に、なりました」
クロノは少し視線をそらしながら、緊張気味にそう返す。
『まぁ、私よりも大きくなっているのね。まず初めに、こんな事になってしまってごめんなさい。私はあなたを捨てた……。私を、恨んでいることでしょう』
ナディアが寂しそうな表情でそう言うと、クロノは小さく首を横に振った。
「あなたを恨んだ事は一度もない。あんな立派な時計を持たせてくれたんだから、何か理由があるって、そう思っていたから。事情は、兄の“ウィリアム”から聞いた。命懸けで俺を守ってくれてありがとう……」
『……優しい子に育ったのね……』
ナディアはしばらくしくしくと泣いていた。ミオは当たり前のようにもらい泣きをし、クロノも静かに涙を流していた。
『……25と言うことは、ウィルは28ですね。彼は元気? もう、皇帝になっているのかしら。いや、28ではまだカエサル様が……』
「……もう皇帝になってる。元気でやってるよ」
クロノがそう答えると、ナディアは嬉しそうに微笑んだ。
『良かった。あの子ずっと辛い思いをしながら帝王学を学ばされていたから……。あの子はね、あなたにそんな辛い思いをさせたくなくて、自分が皇帝を継ぐって言って頑張っていたのよ。努力が報われて良かった……』
「そうか……。あっちに戻ったら、お礼を言っておく」
『ええ。私の分もお礼を言っておいて。あなたが白い魔力の子とここへ来たと言う事は、ウィルが私のお願いを叶えてくれたと言う事だから』
「……分かった」
『……それでね、ここにはあなたの記憶と魔力が閉じ込められているの』
「魔力……!?」
クロノは驚き目を見開く。
『生まれつき魔力がないと思っていたかしら?』
ナディアのその問いに、クロノは大きく頷いた。
『そうよね……。嫌な思いをさせてごめんなさい。でも、あなたは生まれながらにしてとんでもない魔力を持っていた。その子と同じ、抑えてないと体中から溢れてしまうほどの魔力。それも封じないと、平穏には暮らせないと思ったの』
「そう、だったのか……」
『一体なぜこんなにもすごい魔力を持っているのか……。刻の封印をする時に、あなたの記憶を見てそれを知ったの。あなたは異世界からの転生者』
「何っ!?」
「ええ!」
口をあんぐりと開けるクロノとミオ。
『その子とは違う世界の様だけど、その子が通った次元の狭間と同じ道を通ってきている。だからこんなにも魔力が溢れているんだって、そう思ったの。今から全部あなたに返すわ。急に返すと脳が錯乱しちゃいそうだから、少しだけ伝えておいたからね』
「そ、そうか……それだけでもう、パンクしそうだ……」
クロノは渋い表情で髪を掻き上げる。
『ええ、そうよね。多分記憶が戻ったら、もっとビックリすると思うけど、あなたはあなた。あなたはレオナルドであり、クロノであるの。それを見失わないで』
「……分かった。ありがとう」
『じゃぁ、そろそろ戻してあげないと。今もあなたのために仲間が頑張っているはずだから……』
ナディアは寂しそうにそう言った。
「もう、時計の中からいなくなるのか……?」
『ええ。私の役目は終わったから……』
「……そっか。話せて良かった……お母さん……」
『! ありがとう……』
クロノとミオは、時計の中の精神世界から旅立っていった。
クロノとミオは、ある高貴な部屋の中にいた。
「ここは……俺の生まれた部屋……」
「本当だ。ナディアさんが生まれたばかりのクロノを抱いていた部屋だね」
『クロノ。なるほど、時計に刻んだ“クロノス”からそう名付けてもらったのね』
「っ!」
彼らがその声に驚き振り返ると、そこには優しい表情のナディアが立っていた。
「あっ、ナディアさん……!」
「俺の……母親……」
『少し話しましょう。そこへ座って』
クロノとミオはナディアに言われるがままにベッドへと腰掛ける。
ナディアはベッドの前にあった椅子に座ると、再び口を開いた。
『すごく大きくなったのね、レオ……いえ、クロノ。今はいくつなの?』
「25……に、なりました」
クロノは少し視線をそらしながら、緊張気味にそう返す。
『まぁ、私よりも大きくなっているのね。まず初めに、こんな事になってしまってごめんなさい。私はあなたを捨てた……。私を、恨んでいることでしょう』
ナディアが寂しそうな表情でそう言うと、クロノは小さく首を横に振った。
「あなたを恨んだ事は一度もない。あんな立派な時計を持たせてくれたんだから、何か理由があるって、そう思っていたから。事情は、兄の“ウィリアム”から聞いた。命懸けで俺を守ってくれてありがとう……」
『……優しい子に育ったのね……』
ナディアはしばらくしくしくと泣いていた。ミオは当たり前のようにもらい泣きをし、クロノも静かに涙を流していた。
『……25と言うことは、ウィルは28ですね。彼は元気? もう、皇帝になっているのかしら。いや、28ではまだカエサル様が……』
「……もう皇帝になってる。元気でやってるよ」
クロノがそう答えると、ナディアは嬉しそうに微笑んだ。
『良かった。あの子ずっと辛い思いをしながら帝王学を学ばされていたから……。あの子はね、あなたにそんな辛い思いをさせたくなくて、自分が皇帝を継ぐって言って頑張っていたのよ。努力が報われて良かった……』
「そうか……。あっちに戻ったら、お礼を言っておく」
『ええ。私の分もお礼を言っておいて。あなたが白い魔力の子とここへ来たと言う事は、ウィルが私のお願いを叶えてくれたと言う事だから』
「……分かった」
『……それでね、ここにはあなたの記憶と魔力が閉じ込められているの』
「魔力……!?」
クロノは驚き目を見開く。
『生まれつき魔力がないと思っていたかしら?』
ナディアのその問いに、クロノは大きく頷いた。
『そうよね……。嫌な思いをさせてごめんなさい。でも、あなたは生まれながらにしてとんでもない魔力を持っていた。その子と同じ、抑えてないと体中から溢れてしまうほどの魔力。それも封じないと、平穏には暮らせないと思ったの』
「そう、だったのか……」
『一体なぜこんなにもすごい魔力を持っているのか……。刻の封印をする時に、あなたの記憶を見てそれを知ったの。あなたは異世界からの転生者』
「何っ!?」
「ええ!」
口をあんぐりと開けるクロノとミオ。
『その子とは違う世界の様だけど、その子が通った次元の狭間と同じ道を通ってきている。だからこんなにも魔力が溢れているんだって、そう思ったの。今から全部あなたに返すわ。急に返すと脳が錯乱しちゃいそうだから、少しだけ伝えておいたからね』
「そ、そうか……それだけでもう、パンクしそうだ……」
クロノは渋い表情で髪を掻き上げる。
『ええ、そうよね。多分記憶が戻ったら、もっとビックリすると思うけど、あなたはあなた。あなたはレオナルドであり、クロノであるの。それを見失わないで』
「……分かった。ありがとう」
『じゃぁ、そろそろ戻してあげないと。今もあなたのために仲間が頑張っているはずだから……』
ナディアは寂しそうにそう言った。
「もう、時計の中からいなくなるのか……?」
『ええ。私の役目は終わったから……』
「……そっか。話せて良かった……お母さん……」
『! ありがとう……』
クロノとミオは、時計の中の精神世界から旅立っていった。
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