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第八章 ポールの冒険
143話 妖精王との謁見
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⸺⸺ニンファ城⸺⸺
「なんと珍しい、魔法生物のお客とは……」
謁見を許してくれた妖精王オベロンは長身の若いエルフ男性のような見た目であったが、妖精王という名の通り、大きな妖精の羽が背中に付いていた。まるで美しい蝶のような、そんな雰囲気であった。
『こんにちは、オイラはポール。オベロン陛下は何で羽が生えてるの? エルフで妖精の羽が生えてるのは女性だけだよね』
ポールは開口一番にそう尋ねる。そんな彼の言葉に更に驚くオベロン。
「私の羽が気になるのかい? これはね、世界樹より授かりし“妖精王の証”なのだよ。少しばかり他より魔法が得意な、その程度のものだと思っておいてくれ。それで、私に何用かな?」
『あぁ、そうだった。病気で死んじゃいそうな子がいてね、世界樹の輝きで治してあげたいんだ』
「病気で……そうか。君たちはその子にお願いをされて代わりに来たのかい?」
その問いにポールは首を横に振る。
『違うよ。オイラたちが彼女に元気になってもらいたくて、勝手にやってる事なんだ』
『お嬢様の病気が治ったら嬉しい、バンザーイであります!』
オベロンは彼らを興味津々に見つめている。
「ポールは……どうやら魔法生物ではないようだね。彼らとは根本的に別物のようだ。しかし、こちらの魔法生物もまた、感情を理解しようとしているのか……だが……」
彼はそこまで言うと、悲しそうな表情を浮かべる。
『どうしたの? オベロン陛下』
「実は今、世界樹に魔法耐性を持った凶暴な亜種の魔物が棲み着いてしまってね、それをなんとかするまでは世界樹のもとへ行かせてあげる事はできないんだ……。その子は、かなり危ない状況なのかい?」
『えぇ、こんな時に……。そうだよ、もう時間がないんだ……』
ポールはションボリする。
「そうか……。旅の者に呼びかけてはいるのだが……S級の亜種というランクが付いているらしく、とても倒せそうにない者ばかりなんだ……。だからまだしばらくはその通路は通行止めだ。力になれずすまないね……」
『通路? あぁ、世界樹へはこのお城を通って行くんだ?』
「そうだよ。そこに衛兵が立っているだろう? その扉の先が世界樹へと繋がる道だ。あっ、間違っても通ろうとなんて思っちゃいけないよ。本当に危ないからね」
『うん……分かった。とりあえずオイラたち作戦会議をする事にするよ。またね、オベロン陛下』
「あぁ。城下町の酒場でも世界樹の情報は手に入るはずだ。もし亜種が討伐されたらまたおいで」
『分かった、ありがとう』
ポールを中心に横一列に並んで去っていく一同を、オベロンは微笑ましそうに見つめていた。
そんな彼らが部屋から去っていく間際の会話を耳にする。
『お嬢様の不治の病はやはり治らないでありますか?』
『世界樹の輝きがあればきっと治るはずだよ。まだ諦めるのは早いよ』
「不治の病……? まさか、ドロシーの事なのか……? だとすればたとえ世界樹の輝きを使ったとしても……。あぁ、去ってしまったか。どうする、彼らを追いかけてこの事を伝えるべきか……。しかし、せっかく感情を理解しようとしているのにこんな悲しい事実を伝えるのは……なんと、困った事態になってしまった」
悩んだ挙句、オベロンには魔法生物らを追いかけて事実を伝える事は出来なかった。
「なんと珍しい、魔法生物のお客とは……」
謁見を許してくれた妖精王オベロンは長身の若いエルフ男性のような見た目であったが、妖精王という名の通り、大きな妖精の羽が背中に付いていた。まるで美しい蝶のような、そんな雰囲気であった。
『こんにちは、オイラはポール。オベロン陛下は何で羽が生えてるの? エルフで妖精の羽が生えてるのは女性だけだよね』
ポールは開口一番にそう尋ねる。そんな彼の言葉に更に驚くオベロン。
「私の羽が気になるのかい? これはね、世界樹より授かりし“妖精王の証”なのだよ。少しばかり他より魔法が得意な、その程度のものだと思っておいてくれ。それで、私に何用かな?」
『あぁ、そうだった。病気で死んじゃいそうな子がいてね、世界樹の輝きで治してあげたいんだ』
「病気で……そうか。君たちはその子にお願いをされて代わりに来たのかい?」
その問いにポールは首を横に振る。
『違うよ。オイラたちが彼女に元気になってもらいたくて、勝手にやってる事なんだ』
『お嬢様の病気が治ったら嬉しい、バンザーイであります!』
オベロンは彼らを興味津々に見つめている。
「ポールは……どうやら魔法生物ではないようだね。彼らとは根本的に別物のようだ。しかし、こちらの魔法生物もまた、感情を理解しようとしているのか……だが……」
彼はそこまで言うと、悲しそうな表情を浮かべる。
『どうしたの? オベロン陛下』
「実は今、世界樹に魔法耐性を持った凶暴な亜種の魔物が棲み着いてしまってね、それをなんとかするまでは世界樹のもとへ行かせてあげる事はできないんだ……。その子は、かなり危ない状況なのかい?」
『えぇ、こんな時に……。そうだよ、もう時間がないんだ……』
ポールはションボリする。
「そうか……。旅の者に呼びかけてはいるのだが……S級の亜種というランクが付いているらしく、とても倒せそうにない者ばかりなんだ……。だからまだしばらくはその通路は通行止めだ。力になれずすまないね……」
『通路? あぁ、世界樹へはこのお城を通って行くんだ?』
「そうだよ。そこに衛兵が立っているだろう? その扉の先が世界樹へと繋がる道だ。あっ、間違っても通ろうとなんて思っちゃいけないよ。本当に危ないからね」
『うん……分かった。とりあえずオイラたち作戦会議をする事にするよ。またね、オベロン陛下』
「あぁ。城下町の酒場でも世界樹の情報は手に入るはずだ。もし亜種が討伐されたらまたおいで」
『分かった、ありがとう』
ポールを中心に横一列に並んで去っていく一同を、オベロンは微笑ましそうに見つめていた。
そんな彼らが部屋から去っていく間際の会話を耳にする。
『お嬢様の不治の病はやはり治らないでありますか?』
『世界樹の輝きがあればきっと治るはずだよ。まだ諦めるのは早いよ』
「不治の病……? まさか、ドロシーの事なのか……? だとすればたとえ世界樹の輝きを使ったとしても……。あぁ、去ってしまったか。どうする、彼らを追いかけてこの事を伝えるべきか……。しかし、せっかく感情を理解しようとしているのにこんな悲しい事実を伝えるのは……なんと、困った事態になってしまった」
悩んだ挙句、オベロンには魔法生物らを追いかけて事実を伝える事は出来なかった。
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