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第七章 イリス島奪還作戦

123話 陽気な日本人

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「そっ、それもしかしてエーベル商会のネコ耳ローブじゃねぇの!?」
 ジンは興奮気味に言う。
「あ、はい、そうです。ほら」
 ミオがネコ耳のフードを被ってみせると、ジンは床に倒れて這いつくばり「かっ、かわっ、かわいっ……!」ともだえていた。

「えぇ……」
 思ってた人物像ではない彼にミオはドン引きする。
 更にクロノも悶ている彼を思いっ切り蹴飛ばした。
「きゃうんっ!」
「ふざけんな話が進まねぇからいちいちオーバーなリアクションとんじゃねぇ」

「あはは、ジン君全然変わってないや!」
「あぁ、あの頃のまんまだ」
 双子はそう言ってお腹を抱えて笑っている。

「で、お前が黒い獅子の面の組織のリーダーでいいんだな?」
 クロノは床に転がっているジンの胸倉を掴んで無理矢理彼の身体を起こす。
「うっす……そうです。“黒獅子”と名乗っております……って、何その格好かっこよ!?」
 ジンは今度はクロノの背後から不思議そうに覗き込んでいた国綱を見て再び雷に打たれた。

「なんじゃ忙しい奴じゃのう」
「しゃべり方もかっこよ!?」
「いい加減にしろこっちは真面目な用事で来てんだよ」
 クロノの胸倉を掴んでいる手が怒りでわなわなと震える。

「だぁー、ごめんって。ちょ、タンマタンマ。じゃ、改めて、初めましてなそちらの鬼カワ幼女と中二病のプラムと、そっちのイケメン君にも自己紹介っと……」
 ジンはそう言って立ち上がり、お尻をパンパンと払う。

「俺はジン・アサギリ、36歳……じゃなかった25歳独身。表の顔はハイアット軍少将、裏の顔は謎の義賊“黒獅子”のリーダー、よろしくぅっ!」
 ジンはそう言ってニッと笑った。

「何で自分の年齢11歳も間違えるの?」
 と、ミオ。
「前世が36歳のおっさんだったんだよ」
 クロノが即答する。
「ちょぉ、クロノ君プライバシーの侵害が過ぎる!」

「えっと、ってことは、転生したって事?」
 ミオがそう言って首を傾げると、ジンはその言葉に興味を持った。
「そだよ。君、タダの可愛いマキナじゃないね」
「あっ、私はミオ・アスマ、日本からこの世界に召喚されました」
 ミオはペコッとお辞儀をする。
「召喚……マジか。俺の他にもそういう事ってあちこちであんのかな……。なら、お互い情報共有しないとだし、ウチのアジト、案内するよ」

「やっと話が進みそうだ……」
 クロノはそう言って大きなため息をついた。

⸺⸺黒獅子地下アジト⸺⸺

 石造りの地下を進むと、すぐに天井の高い大きなフロアへと抜け出る。
 そこでは沢山の人が談笑をしており、賑やかな組織だと言うことが一目瞭然だった。

「ここ……城の地下か?」
 と、クロノ。
「ご名答。さ、ここはちょっとうるさいからこっちで話そうか」
 ジンはそう言って応接間の様なソファとテーブルがあるだけの小さな部屋へと皆を案内した。

「ねね、船長はジン君だって分かってたんでしょ? 何で?」
 と、チャド。
「お、チャド、知りたい? 知りたい?」
 チャドはクロノに尋ねたにも関わらず、なぜかジンが反応する。
「うん、知りたい」
「まま、みんなそこ座ってよ」
 
 皆がソファに座ったのを確認すると、ジンは口を開いた。
「候補生だった頃、クロノと一緒に聖獣の本を見たことがあって、そん時に2人して獅子の聖獣に惚れたんだ。で、赤は俺の好きな色。黒はクロノの好きな色。分かった理由なんてそんなもんだろ?」
 ジンがそうクロノへ語りかけると、彼は小さく頷いた。

「じゃぁ“獅子の誓い”って?」
 と、ケヴィン。
「クロノがイリスの『討伐祭』に旅立つ前夜、面白半分で俺が合言葉を考えたんだ。“獅子の誓い”って親友の誓いを立てて、何かあった時に“獅子の誓いを果たしに来た”って助けに来たら格好いいよなって、俺が一方的に話したんだ。ちゃんと覚えててくれて嬉しかったよ、クロノ」

「……それが、お前との最後の会話だったからな」
 クロノはそう言って小さく微笑んだ。 

 そして皆は今までの経緯いきさつを彼に説明をする。そして、ポールもひょこっと顔を出し彼に挨拶をしていた。

⸺⸺

「やっぱレユアンの騒ぎのエーベルの裏にいたのはルフスレーヴェだったか……。これ、クロノだろ?」
 ジンはそう言ってレユアン島での講演会の新聞記事を皆へ提示する。
 そこには、フランツ会長の後ろでエーベル商会の制服を着て立っているクロノが写っていた。

「あはは、ホントだあん時の船長写ってる!」
 ケヴィンはそう言ってお腹を抱えて笑う。

「“幻想”は俺らもめちゃくちゃ手を焼いてたからさ、解体してくれてありがとな。助かった」
 と、ジン。
「次はお前の番だぞ。何で軍の少将にまで上り詰めておきながら、裏の組織なんて運営してるんだ?」
 そのクロノの問にジンは軽く頷くと、今までの事を振り返るように遠い目をしていた。
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