【完結】赤獅子の海賊〜クマ耳の小人種族となって異世界の海上に召喚されたら、鬼つよの海賊が拾ってくれたのでちやほやされながら使命果たします〜

るあか

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第六章 白鳥の姫と7人の小人

110話 天狗様

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 それから数日、ルフレヴェはシェアハウスを拠点にクエストやハントをこなして過ごすことになる。
 クロノは武器屋で適当に大剣を買ってハントをしていたが、それでもめちゃくちゃに強かった。

 カーラー兄弟は昼間は仕事をこなし、夕方家に戻るとそれぞれの観点から独自に鬼丸の解析をし、現状と打開策見出していった。

⸺⸺

 ある日の夜。

「シースネっ!」
「フラリス様っ!」
 2人の周りにハートが飛び交う。

「シスネって後々融合するけど、フラリス王子大丈夫かな……」
 ミオが心配そうに見つめる。
「それは多分フラリス王子も分かってるからこそ、あんなに燃えるんじゃない?」
 と、クライヴ。

 いつものようにシスネとフラリスがイチャイチャしていると、不意にその時は訪れる。

「皆待たせたな。結論が出た」
 ホワイトを先頭に、カラフルな小人が作業室からリビングへと顔を出した。

「おぉ!」
 ルフレヴェの皆はわくわくして彼らの言葉を待った。

「すまないが事態は深刻だ」
「えぇ……」
 ホワイトの言葉に皆落胆する。

「まず大前提として、この刀はこのままではもう打ち直せへんねん」
 と、刀鍛冶のレッド。
「グリーンと一緒に魔剣にできんかとも頑張っただけど、それも無理そう」
 魔導武器職人のパープル。それに対し魔剣鍛冶師のグリーンがうんうんと頷く。

「いっそアタシの魔力で魔具にしちゃおうかとも思ったけどそれも無理。アタシ色に染めちゃおうと思ったのに、残念……」
 と、装飾魔具職人のブルー。それを聞いてクロノはアタシ色に染められないで良かったと心から思った。

「この刀は今妖力は感じられない、刀とは別の気配は確かにまだここにいる」
 黒魔道士のブラック。
「その気配は……残念ながら黒魔症に侵されているであります」
 結界技師のイエロー。

「黒魔症!」
 驚く一同。

「元々黒い気や魔力を吸う妖刀に、元は人間だった者の魂が込められてる。ありえない話じゃない。ハッキリ言おう。黒魔症は治せない、つまり、この刀を元に戻す方法はない」
 そう最後にホワイトが締めくくった。

「えっと、黒魔症が治せたら、元に戻す方法はあるの?」
 と、ミオ。
「黒魔症は治せないから、その方法はまだ考えてない」
 ホワイトがそう答える。

「ミオ、頼んだ」
 と、クロノ。うんと頷くミオ。

「ミオ……一体何を……」
 ホワイトだけではなく、カーラー兄弟全員が興味津々にミオと鬼丸を取り囲む。
 そのため視界を遮られたルフレヴェの皆も、立ち上がって小人の背後からミオを覗き込む形となった。

⸺⸺浄化の光⸺⸺

「おおぉぉぉぉ!」

 ミオが祈りを捧げると、鬼丸の刀身からスーッと黒い気が抜けていく。そしてカーラー兄弟の歓声と共に、黒い気が完全に天へと昇っていった。

⸺⸺その瞬間。

 鬼丸の刀身から白く淡い光が飛び出し、その光はまたたく間に人の姿を形成していく。
 背中に大きな鳥の翼を持ったその光が収まると、そこには懐かしの国綱くにつなの姿があった。

 白髪のオールバックに黒と赤の羽根が混じった鳥の翼。
 首にはカラスのくちばしのような赤いマスクがかかっており、黒と赤と白の3色の立派な着物を着ている。
 ミオの想像する天狗とは少し違う雰囲気だった。言うなれば“現代版天狗”だ。

「ミオ、黒い気からの解放、感謝じゃ! お前さんら、久しぶりじゃのう!」
 国綱は若い容姿とはギャップのある口調で、元気に腕を振り上げ挨拶の仕草を見せる。

「『国綱~!?』」
「前代未聞の事態が起こったー!」
 ルフレヴェとカーラー兄弟の絶叫が、シェアハウス中へと響いた。

⸺⸺

「は、初めまして、国綱。私はミオで、クロノたちと一緒に……」
 ミオが興奮気味にそう話しかけると、国綱はすぐにそれを制した。
「だぁー、それはもう聞いとる。いっちばん初めにえらい長い紹介をしてくれたじゃろうが。何じゃ、やっぱワシの声は届いとらんかったんか」

「あ、独り言のつもりで言ってたのに、全部聞いててくれたんだ」
「まぁ、お前さんが話しかけて来る頃には、もう黒い気の侵食が始まっとったからのう。全部聞けとったかは正直ワシにも分からん」
 国綱はそう言って寂しそうに笑った。

 そんな彼へ、クロノが申し訳なさそうに話しかける。
「国綱……黒い気に苦しんでたってのに、気付いてやれなくて悪かった」

「お前さんが気にすることじゃなかろうて。ワシが天狗として未熟だっただけの話。じゃが、ミオが神々しい力を授けてくれたからのう。ワシはただのあやかしじゃなく、神のそれに近い形となれた。もう黒い気には負けんよ」

「そっか。けど、鬼丸はもう……」
 クロノが残念そうに言う。すると、国綱は大きな声で自信満々にこう言った。
「その折れた刀身を使ってワシがもう一度イチから鬼丸を打ち直す。今まで蓄えた力もそのままに、更に強力になるじゃろう」

「マジか!」
「おぉぉぉ!」
 あちこちから歓声が上がる。

 その歓声に国綱が気分良く笑っていると、フラリスとイチャついていたはずのシスネがまるで何かに心を撃ち抜かれたかの様な驚きの表情で、トボトボと彼の前へとやってきた。

「ん、何じゃお前さんは」
 国綱は笑うのをやめてシスネに向き合う。
「わ、わたくし、あなた様に恋をしてしまいました……!」
 彼女はそう言ってポーッと見惚れている。

「えっ!?」
 唖然とする一同。
「シスネ!?」
 一瞬で絶望の表情へと変わるフラリス。

「なっ、恋じゃと!? ワシはそんなもんに興味はない。そんな神を崇めるような顔で寄るな、あっちへいけ」
 国綱はあからさまに嫌そうに手を払う。

「あれ、神の近いそれになったって喜んでたから、崇められるならいいんじゃないの?」
 と、チャド。彼はもう既におちょくりモードへ切り替わっている。
「チャド、いらん事を言うな!」
「あの、お名前だけでも、お聞かせ願えませんか」
「お前さんに名乗る名などない!」
「シスネ~、そいつの名前は国綱だ」
 と、ケヴィン。

「国綱様……! 素敵なお名前です!」
「ええい、寄るな、鬱陶うっとうしい!」

「シスネ……そんなぁ……」
 床に這いつくばるフラリスの肩へ、エルヴィスがポンっと手を置いた。
「どうせ別れなきゃならない運命だったんだからさ。ほら、ヤケ酒ならおじさん付き合うよ」
「シスネェ~……」

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