上 下
102 / 228
第六章 白鳥の姫と7人の小人

102話 地下都市パドヴァリア

しおりを挟む
 ヴァース暦1684年12月12日、ルフスレーヴェ、シェルテーレ島上陸。

⸺⸺シェルテーレ島⸺⸺

 島の南東部に位置する活火山テレニア山。その地下にはドワーフの住む都市『パドヴァリア』が広がっており、ここではドワーフの様々な職人たちが日々己の技術を磨き、レベルの高い武器や防具を生産していた。

 中でも“魔具職人の聖地”とも呼ばれ、ドワーフの得意分野である魔具の職人技術は世界トップクラスである。

⸺⸺パドヴァール共和国、テレニア火山港⸺⸺

「みんなヤバイ。めっちゃ暑い」
 先陣を切ってレーヴェ号から飛び降りたクライヴが、秒で船内へと引き返してくる。

「やっぱりか……」
 クロノはそう返事をするとコートを脱ぎ出し、他の皆もそれぞれ薄着に着替えに行った。

 ミオも幼稚園の夏服のような服に着替え、ネコ耳ローブを羽織る。
 マキナの島のミュラッカ島に居た時はこのローブはもこもこしていたが、この火山港に入った瞬間もこもこがスッと消えていき、サラサラの素材へと早変わりした。
 ミオが初めて訪れた温かい気候のハルラ島の時のような肌触りである。

 それぞれ夏の格好でコートを片手に船を降りた。
 クラン用の検問所を通ったことからクラン支部があることが分かり、一行は港から地下に降りてパドヴァリアへ入るとクラン支部を目指すことにした。

⸺⸺地下都市 パドヴァリア⸺⸺

「うわぁ、あれマグマ!?」
 ミオが柵から身を乗り出し下を覗き込む。パドヴァリアは都市の中心部が筒抜けになっており、ドーナツが何層にも重なったような構造の大都市であった。

「マグマがあんな近くにあるのに、町の中はあんまり暑くないんだね」
 チャドもそう言って一緒に覗き込む。
「ここの結界が特殊なんだろ。なんたってドワーフの国だからな」
 と、クロノ。
「うん……チビちゃんがいっぱい……」
 エルヴィスは微笑ましそうにすれ違う人を眺めていた。

「そう言えば、白い気の気配するか?」
 ケヴィンの問いに対し、ミオはブンブンと首を横に振る。
「全然ダメですわ」

「なら、予定通りクラン支部でいいな」
 クロノはそう言って案内板を見つめる。すると、クライヴも一緒になって覗いてきた。
「うっわ、こういうフロアが20層もあるってこと!? ここは第10層で、クラン支部は第15層か……」

「ミオが迷子にならねぇようにしねぇとな……」
 クロノは苦い顔をする。
「だねぇ……」

 一行は第10層の“魔導昇降機”で第15層へ移動すると、クラン支部へと顔を出した。

⸺⸺クラン支部⸺⸺

「街ん中はドワーフだらけだったけど、クラン支部は割と他種族で落ち着くな」
 と、ケヴィン。
「ん~、クエストはどれも専門技術がいるようなものばかりだね……こういう時はハントに限るね」
「こういう時じゃなくてもチャドはハントじゃない?」
 ミオに即ツッコまれ、チャドは「バレた?」と返事をしてヘラヘラ笑っていた。

 ここでクライヴがあることに気付く。
「ハントするなら、島の南東部しか管轄じゃないみたいだから気をつけて。この『テレニア火山内』と、火山周辺の『テレニア大森林』の2つだけが管轄らしい」

「ん、北に広がる山脈はアウトなんだな。そういうことすると山脈から強い魔物が火山や森に流れてきそうだけどな」
 と、クロノ。
「ロスカ王国みたいになんか大人の事情があったりして……」
 チャドはロスカ王国のミュラッカ地下空洞に落ちた時のことを思い出す。

「まぁ、とりあえず大人しく管轄内で狩ることにするか。ミオ、どこ行きたい?」
 クロノはそう判断し、隣で島の地図を見上げているミオへと尋ねた。

「ん~……そうだな。私はこの『テレニア火山洞窟』っていう所が気になるよ」
「また暑そうな所をチョイスしたな~」
 クライヴが苦笑いをする。それに対しエルヴィスがわざと真面目な顔をしてこうツッコんだ。
「ミオ姫の決定事項に文句を言うな。騎士としてあるまじき言動だぞ」

「うわぁ、おじさんが新しいキャラを定着させようとしてる……」
 落胆するクライヴに、周りからは笑いが起こった。

 一行はクラン支部のすぐ隣にあった宿屋を取り、それぞれコートを置いて皆で『テレニア火山洞窟』へと向かった。
 ここでクロノに悲劇が訪れるなど、この時は誰も予想だにしなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...