【完結】赤獅子の海賊〜クマ耳の小人種族となって異世界の海上に召喚されたら、鬼つよの海賊が拾ってくれたのでちやほやされながら使命果たします〜

るあか

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第六章 白鳥の姫と7人の小人

102話 地下都市パドヴァリア

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 ヴァース暦1684年12月12日、ルフスレーヴェ、シェルテーレ島上陸。

⸺⸺シェルテーレ島⸺⸺

 島の南東部に位置する活火山テレニア山。その地下にはドワーフの住む都市『パドヴァリア』が広がっており、ここではドワーフの様々な職人たちが日々己の技術を磨き、レベルの高い武器や防具を生産していた。

 中でも“魔具職人の聖地”とも呼ばれ、ドワーフの得意分野である魔具の職人技術は世界トップクラスである。

⸺⸺パドヴァール共和国、テレニア火山港⸺⸺

「みんなヤバイ。めっちゃ暑い」
 先陣を切ってレーヴェ号から飛び降りたクライヴが、秒で船内へと引き返してくる。

「やっぱりか……」
 クロノはそう返事をするとコートを脱ぎ出し、他の皆もそれぞれ薄着に着替えに行った。

 ミオも幼稚園の夏服のような服に着替え、ネコ耳ローブを羽織る。
 マキナの島のミュラッカ島に居た時はこのローブはもこもこしていたが、この火山港に入った瞬間もこもこがスッと消えていき、サラサラの素材へと早変わりした。
 ミオが初めて訪れた温かい気候のハルラ島の時のような肌触りである。

 それぞれ夏の格好でコートを片手に船を降りた。
 クラン用の検問所を通ったことからクラン支部があることが分かり、一行は港から地下に降りてパドヴァリアへ入るとクラン支部を目指すことにした。

⸺⸺地下都市 パドヴァリア⸺⸺

「うわぁ、あれマグマ!?」
 ミオが柵から身を乗り出し下を覗き込む。パドヴァリアは都市の中心部が筒抜けになっており、ドーナツが何層にも重なったような構造の大都市であった。

「マグマがあんな近くにあるのに、町の中はあんまり暑くないんだね」
 チャドもそう言って一緒に覗き込む。
「ここの結界が特殊なんだろ。なんたってドワーフの国だからな」
 と、クロノ。
「うん……チビちゃんがいっぱい……」
 エルヴィスは微笑ましそうにすれ違う人を眺めていた。

「そう言えば、白い気の気配するか?」
 ケヴィンの問いに対し、ミオはブンブンと首を横に振る。
「全然ダメですわ」

「なら、予定通りクラン支部でいいな」
 クロノはそう言って案内板を見つめる。すると、クライヴも一緒になって覗いてきた。
「うっわ、こういうフロアが20層もあるってこと!? ここは第10層で、クラン支部は第15層か……」

「ミオが迷子にならねぇようにしねぇとな……」
 クロノは苦い顔をする。
「だねぇ……」

 一行は第10層の“魔導昇降機”で第15層へ移動すると、クラン支部へと顔を出した。

⸺⸺クラン支部⸺⸺

「街ん中はドワーフだらけだったけど、クラン支部は割と他種族で落ち着くな」
 と、ケヴィン。
「ん~、クエストはどれも専門技術がいるようなものばかりだね……こういう時はハントに限るね」
「こういう時じゃなくてもチャドはハントじゃない?」
 ミオに即ツッコまれ、チャドは「バレた?」と返事をしてヘラヘラ笑っていた。

 ここでクライヴがあることに気付く。
「ハントするなら、島の南東部しか管轄じゃないみたいだから気をつけて。この『テレニア火山内』と、火山周辺の『テレニア大森林』の2つだけが管轄らしい」

「ん、北に広がる山脈はアウトなんだな。そういうことすると山脈から強い魔物が火山や森に流れてきそうだけどな」
 と、クロノ。
「ロスカ王国みたいになんか大人の事情があったりして……」
 チャドはロスカ王国のミュラッカ地下空洞に落ちた時のことを思い出す。

「まぁ、とりあえず大人しく管轄内で狩ることにするか。ミオ、どこ行きたい?」
 クロノはそう判断し、隣で島の地図を見上げているミオへと尋ねた。

「ん~……そうだな。私はこの『テレニア火山洞窟』っていう所が気になるよ」
「また暑そうな所をチョイスしたな~」
 クライヴが苦笑いをする。それに対しエルヴィスがわざと真面目な顔をしてこうツッコんだ。
「ミオ姫の決定事項に文句を言うな。騎士としてあるまじき言動だぞ」

「うわぁ、おじさんが新しいキャラを定着させようとしてる……」
 落胆するクライヴに、周りからは笑いが起こった。

 一行はクラン支部のすぐ隣にあった宿屋を取り、それぞれコートを置いて皆で『テレニア火山洞窟』へと向かった。
 ここでクロノに悲劇が訪れるなど、この時は誰も予想だにしなかった。
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