97 / 228
第五章 欲望渦巻くレユアン島
97話 騎士の誓い
しおりを挟む
⸺⸺エーベル商会豪華客船ラウンジ⸺⸺
昨夜のメンバーで朝食を済ませ、皆がコーヒーを飲んで寛いでいると、急にそれは始まった。
「この変態野郎っ!」
ミオがピシッと隠し持っていた鞭を床へ叩きつける。
「おっ……」
と、ケヴィン。皆の顔が一気にニヤける。
「結局こういうタイミングで始まるのね、それ……」
エルヴィスは静かに笑ってコーヒを机へ置くと、ミオの方へ身体を向けた。
「毎日アタシのこと嫌らしい目で見て、飽きたら売るなんてそんなの許さないわよっ!」
ミオはピシッと鞭を振る。
「うっ……売ろうとしたのは事実だわ……。8割濡れ衣だけど事実が混ざっている以上言い返せない……」
エルヴィスはその言葉を重く受け止めることにした。
そんな彼のボヤキを聞いて、周りからは笑いが起こる。
「あんたはこれから一生、アタシの奴隷として……うっ……」
ミオはそこまで言って言葉に詰まる。
「え、バケツいる?」
と、チャド。
「待て、今回は違うみてぇだ」
と、クロノ。
「やっぱ奴隷は違うわ……。こんなんいるかー!」
ミオはそう言うと、持っていた鞭を放り投げた。
「おっ、どしたのミオっち……」
戸惑うエルヴィス。
そして、ミオは目に涙をいっぱいにためて再度口を開いた。
「エルヴィスは、私がこの世界に来てから色んなことたくさん気遣ってくれた」
「うん……」
エルヴィスは静かに相槌を打つ。
「初めての酒場で何を頼んだらいいのか分からなかったらおすすめを教えてくれたり、目の前で人が死んだときは無理しないでって言ってくれたり……」
「うん……」
「私が温泉のあとにはコーヒー牛乳を飲むって話をしたら私の湯上がりに毎晩コーヒー牛乳を作ってくれるようになった」
「うん……」
「他にもたくさん、言い切れないくらい気遣ってくれたけど、それは全部演技だったの? 私を連れ出すための罠だったの?」
エルヴィスはそれに対しすぐに反論をする。
「それは違う! それは全部本心からだ。君があまりにも真っ直ぐで純粋で良い子だから……ついついお節介を焼きたくなるんだよ。勿論、大好きだって言ったのも嘘じゃない。今だって君のこと、大好きさ」
「だったら……! 今回のこと悪いと思ってるんだったら、私のお願い何でも聞いて!」
「……何でもお申し付けを」
エルヴィスはそう言ってミオの前に片膝をつく。
「私、“幻想”に売られそうになったとかそんなこともうどうだっていい! だから、船、降りないで……お願い……! 奴隷は……嫌だから……騎士として、私の側で一生私のこと守りなさい!」
ミオがそう言い終えると、エルヴィスは目をつぶり涙をこらえるような仕草を見せ、やがてこう言った。
「ミオ姫の、仰せのままに……」
エルヴィスは、そのままミオの手を取り、その手の甲にキスを落とした。
ミオは恥ずかしくなりはにかむと、「ありがとう」とお礼を言った。
周りからは拍手が起こったが、ケヴィンとチャドがズカズカと前に出てくる。
「ちょ、何、ケヴィンまで?」
と、チャド。
「いやいや、お前こそ」
と、ケヴィン。
「え、2人ともどうしたの?」
ミオはエルヴィスのキスから解放され、2人へと向き直る。
すると、2人は声を揃えてムキになりながらこう言った。
「僕も騎士の誓いする!」
「俺も騎士の誓いする!」
「えっ、何で!?」
戸惑うミオに、ふっと吹き出すエルヴィスとクライヴ。ざわつくエーベル組に、深くため息をつくクロノ。
「僕だってミオのこと守るよ」
「俺だってミオのこと守るぜ」
「え、えっと……」
「僕はミオのこと大好きだからいいけど、ケヴィンはなんなのさ」
「俺だってミオのこと大好きだぜ? あん時ミオに話きいてもらってスッキリしてから、俺、ミオのこと絶対まーもろっ! って決めてたんだからな!」
「ケヴィンは話聞いてもらっただけでしょ? 僕は抱きしめてもらったもんねーだ」
「はぁっ!? んだよそれずりーじゃねぇか!」
「わー、2人とも喧嘩しないで……。あ、ありがとう。騎士の誓い、なのか分かんないけど、しよ?」
ミオはそう言って両手を彼らの前へ差し出した。
「いいの!?」
「いいのか!?」
2人はサッと片膝をつく。
「ケヴィンもチャドも、騎士として私の側で私のことを守ると誓いなさい!」
「「ミオ姫の仰せのままに」」
2人は声を揃えて返事をすると、それぞれミオの手を取り、チュッとキスをした。
そのノリでクライヴもちゃっかり騎士の誓いを交わす。
そして皆に視線を向けられ最後まで顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたクロノも、ミオが「無理しなくていいんだよ?」と言うと、「無理はしていない」と言って諦めたように誓った。
フランツはその光景を見て、クロノはんが1番ベタ惚れちゃうか、と思うのであった。
昨夜のメンバーで朝食を済ませ、皆がコーヒーを飲んで寛いでいると、急にそれは始まった。
「この変態野郎っ!」
ミオがピシッと隠し持っていた鞭を床へ叩きつける。
「おっ……」
と、ケヴィン。皆の顔が一気にニヤける。
「結局こういうタイミングで始まるのね、それ……」
エルヴィスは静かに笑ってコーヒを机へ置くと、ミオの方へ身体を向けた。
「毎日アタシのこと嫌らしい目で見て、飽きたら売るなんてそんなの許さないわよっ!」
ミオはピシッと鞭を振る。
「うっ……売ろうとしたのは事実だわ……。8割濡れ衣だけど事実が混ざっている以上言い返せない……」
エルヴィスはその言葉を重く受け止めることにした。
そんな彼のボヤキを聞いて、周りからは笑いが起こる。
「あんたはこれから一生、アタシの奴隷として……うっ……」
ミオはそこまで言って言葉に詰まる。
「え、バケツいる?」
と、チャド。
「待て、今回は違うみてぇだ」
と、クロノ。
「やっぱ奴隷は違うわ……。こんなんいるかー!」
ミオはそう言うと、持っていた鞭を放り投げた。
「おっ、どしたのミオっち……」
戸惑うエルヴィス。
そして、ミオは目に涙をいっぱいにためて再度口を開いた。
「エルヴィスは、私がこの世界に来てから色んなことたくさん気遣ってくれた」
「うん……」
エルヴィスは静かに相槌を打つ。
「初めての酒場で何を頼んだらいいのか分からなかったらおすすめを教えてくれたり、目の前で人が死んだときは無理しないでって言ってくれたり……」
「うん……」
「私が温泉のあとにはコーヒー牛乳を飲むって話をしたら私の湯上がりに毎晩コーヒー牛乳を作ってくれるようになった」
「うん……」
「他にもたくさん、言い切れないくらい気遣ってくれたけど、それは全部演技だったの? 私を連れ出すための罠だったの?」
エルヴィスはそれに対しすぐに反論をする。
「それは違う! それは全部本心からだ。君があまりにも真っ直ぐで純粋で良い子だから……ついついお節介を焼きたくなるんだよ。勿論、大好きだって言ったのも嘘じゃない。今だって君のこと、大好きさ」
「だったら……! 今回のこと悪いと思ってるんだったら、私のお願い何でも聞いて!」
「……何でもお申し付けを」
エルヴィスはそう言ってミオの前に片膝をつく。
「私、“幻想”に売られそうになったとかそんなこともうどうだっていい! だから、船、降りないで……お願い……! 奴隷は……嫌だから……騎士として、私の側で一生私のこと守りなさい!」
ミオがそう言い終えると、エルヴィスは目をつぶり涙をこらえるような仕草を見せ、やがてこう言った。
「ミオ姫の、仰せのままに……」
エルヴィスは、そのままミオの手を取り、その手の甲にキスを落とした。
ミオは恥ずかしくなりはにかむと、「ありがとう」とお礼を言った。
周りからは拍手が起こったが、ケヴィンとチャドがズカズカと前に出てくる。
「ちょ、何、ケヴィンまで?」
と、チャド。
「いやいや、お前こそ」
と、ケヴィン。
「え、2人ともどうしたの?」
ミオはエルヴィスのキスから解放され、2人へと向き直る。
すると、2人は声を揃えてムキになりながらこう言った。
「僕も騎士の誓いする!」
「俺も騎士の誓いする!」
「えっ、何で!?」
戸惑うミオに、ふっと吹き出すエルヴィスとクライヴ。ざわつくエーベル組に、深くため息をつくクロノ。
「僕だってミオのこと守るよ」
「俺だってミオのこと守るぜ」
「え、えっと……」
「僕はミオのこと大好きだからいいけど、ケヴィンはなんなのさ」
「俺だってミオのこと大好きだぜ? あん時ミオに話きいてもらってスッキリしてから、俺、ミオのこと絶対まーもろっ! って決めてたんだからな!」
「ケヴィンは話聞いてもらっただけでしょ? 僕は抱きしめてもらったもんねーだ」
「はぁっ!? んだよそれずりーじゃねぇか!」
「わー、2人とも喧嘩しないで……。あ、ありがとう。騎士の誓い、なのか分かんないけど、しよ?」
ミオはそう言って両手を彼らの前へ差し出した。
「いいの!?」
「いいのか!?」
2人はサッと片膝をつく。
「ケヴィンもチャドも、騎士として私の側で私のことを守ると誓いなさい!」
「「ミオ姫の仰せのままに」」
2人は声を揃えて返事をすると、それぞれミオの手を取り、チュッとキスをした。
そのノリでクライヴもちゃっかり騎士の誓いを交わす。
そして皆に視線を向けられ最後まで顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたクロノも、ミオが「無理しなくていいんだよ?」と言うと、「無理はしていない」と言って諦めたように誓った。
フランツはその光景を見て、クロノはんが1番ベタ惚れちゃうか、と思うのであった。
2
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる