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第五章 欲望渦巻くレユアン島
78話 イリス島大粛清
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クロノは実地訓練中の大事件について語る。
「ある時実地訓練で、イリス島の魔物討伐があった。『討伐祭』と呼ばれ定期的に行われているもので、中佐率いる大隊がイリス島に押しかけ自警団と協力して島中の魔物を討伐する。その名の通り、祭りみたいなもんでこの時のイリス島はえらく賑わうんだ」
「あれ、なんか楽しそうだけど……」
と、ミオ。
「そう、通常であれば楽しいはずのもので、参加する候補生は自由に下級生を連れてもいけた」
「ケヴィンとチャドも参加したってこと?」
ミオがそう尋ねると、双子は揃ってうんうんと頷いた。
「僕らは船長につきまとってたから、候補生が連れてきたって言うよりは勝手についてきた、が正しいけどね~」
チャドはそう言ってヘラヘラと笑う。
『うわぁ、その関係性なんか想像できちゃう……』
「だろ?」
と、ケヴィン。
ここでクロノが一息つき、神妙な面持ちで再び口を開いたため、皆黙って真剣に聞き始めた。
⸺⸺
俺はケヴィンとチャドとエルヴィス、それから俺の普段の小隊長であるガイアスとパーティを組んで戦闘に参加した。
祭りが終わると次は魔物を一掃した領土で自由に野営が行われ、島全体での宴が開かれた。
俺らは、俺が久々の帰省ということもあり、俺の実家であるフォスター宅で一泊することとなった。
「いやぁ、悪いですなぁフォスターさん、俺まで泊めてもらっちゃって」
隊長はガハガハと豪快に笑う。彼はその笑い方の通り豪快なオーガ族の男で、性格が正反対な俺を何故か気に入りよく面倒を見てくれた。
「何を言いますか、うちの息子が大変お世話になっているようで……。どうですか、クロノは。ハイアットの軍人としてやっていけそうでしょうか」
と、おじさん。
「クロノはめっちゃんこ強くて真面目で優秀で、軍に入ってもすぐに俺なんか飛び越えていきますよ」
隊長はそう言って再びガハガハと笑った。
「いや、隊長大袈裟過ぎだから……」
「クロノ、お前はもっと自分に自信を持っていい! 特待生になればちょっとは天狗になるかとも思ったけど、逆にいつまでそんなに謙虚でいるつもりなんだ」
「いや……別に……俺、もう2階行くから」
俺は気恥ずかしくなり逃げるように2階へと上がっていった。
「あらあらクロノったら」
階段を上がる途中、おばさんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
その後も遅くまで隊長とおじさんおばさんは盛り上がっていた。
夜も更け、外でも宴が終わり皆死んだように寝静まった頃、イリス島は突如謎の賊の奇襲を受けることとなる。
急に騒がしくなった外に2階で寝ていた俺らも飛び起きる。
辺りは焦げ臭く、隊長とおじさんおばさんの姿がなかった。
残りの4人で武装をして1階へ降りると、部屋のあちこちから火が上がっており、もう少しで逃げられなくなるところだった。
外には複数の殺気があり、姿の見えない3人が心配になり慌てて外に出る。
すると⸺⸺⸺
⸺⸺⸺目の前に血塗れのおじさんの遺体が横たわっていた。
そのすぐ横には腹から大量に出血しているおばさんの姿もあり、今にも息絶えそうであった。
「親父! お袋!」
エルヴィスの引きつった悲鳴が響く。
「お前ら……起きてくれて良かった……」
そう言ったのは、横たわる二人の前で自身も傷だらけで大剣を構える隊長だった。
そして、家は何人もの賊に囲まれていた。
「俺が突破口を開く。お前らは海岸につけてある潜水艇で脱出だ、いいな?」
「隊長は!?」
と、チャド。
「おばさんも置いていけない」
俺はまだ息のあるおばさんを抱き上げようとする。すると、おばさんは力なく抵抗した。
「あなたたちだけなら……逃げ切れるわ……。生き延びるの……いい、わね?」
「そんな、おばさん……」
「行くぞお前ら! これは隊長命令だ!!」
隊長は血昇のアウラを発動させると、奥義を放って海岸への突破口を開き、周りの賊がバタバタと倒れていく。
そして、力を使い果たした彼自身もそのままその場へと倒れた。
「来い! こっちだ!!」
そう先陣を切ったのはエルヴィスだった。放心状態の俺らに一喝し、我に返った俺らを引っ張り海岸へ先導した。
海岸への森へ入る瞬間、火の海に包まれるイリスの地を一望した俺の目に入ったのは、本来この島にいるはずもない別の大隊を率いていた中佐だった。
彼は火の海のど真ん中で、狂ったように高笑いをしていた。
俺らは討伐祭のときに使用していた潜水艇に乗り込みイリス島を脱出し、リヴァール大陸の西を広く治めるブライリアント王国へと辿り着く。
金を稼ぐためにクラン赤獅子を結成した俺らは、表向きではその当時の事件がどう処理されていたかを知ることとなる。
⸺⸺イリス大粛清⸺⸺
翌日になってもイリス島へ向かった大隊が帰還しなかったため、少数精鋭の調査隊を派遣。
調査隊が目撃したのは黒魔症の島民やハイアット兵たち。
そのため調査隊はやむを得ず黒魔症の人々を殲滅。
調査隊の隊長は、黒い地脈の影響で突如黒い気が噴き出し、黒魔症を発症してしまったか、と報告書を上げる。
後に“イリス大粛清”と呼ばれたその悲惨な事件は周辺諸国を震撼させた。
⸺⸺
ちなみに、当時の調査隊の隊長は、イリスの火の海で高笑いをしていた中佐であった。
「ある時実地訓練で、イリス島の魔物討伐があった。『討伐祭』と呼ばれ定期的に行われているもので、中佐率いる大隊がイリス島に押しかけ自警団と協力して島中の魔物を討伐する。その名の通り、祭りみたいなもんでこの時のイリス島はえらく賑わうんだ」
「あれ、なんか楽しそうだけど……」
と、ミオ。
「そう、通常であれば楽しいはずのもので、参加する候補生は自由に下級生を連れてもいけた」
「ケヴィンとチャドも参加したってこと?」
ミオがそう尋ねると、双子は揃ってうんうんと頷いた。
「僕らは船長につきまとってたから、候補生が連れてきたって言うよりは勝手についてきた、が正しいけどね~」
チャドはそう言ってヘラヘラと笑う。
『うわぁ、その関係性なんか想像できちゃう……』
「だろ?」
と、ケヴィン。
ここでクロノが一息つき、神妙な面持ちで再び口を開いたため、皆黙って真剣に聞き始めた。
⸺⸺
俺はケヴィンとチャドとエルヴィス、それから俺の普段の小隊長であるガイアスとパーティを組んで戦闘に参加した。
祭りが終わると次は魔物を一掃した領土で自由に野営が行われ、島全体での宴が開かれた。
俺らは、俺が久々の帰省ということもあり、俺の実家であるフォスター宅で一泊することとなった。
「いやぁ、悪いですなぁフォスターさん、俺まで泊めてもらっちゃって」
隊長はガハガハと豪快に笑う。彼はその笑い方の通り豪快なオーガ族の男で、性格が正反対な俺を何故か気に入りよく面倒を見てくれた。
「何を言いますか、うちの息子が大変お世話になっているようで……。どうですか、クロノは。ハイアットの軍人としてやっていけそうでしょうか」
と、おじさん。
「クロノはめっちゃんこ強くて真面目で優秀で、軍に入ってもすぐに俺なんか飛び越えていきますよ」
隊長はそう言って再びガハガハと笑った。
「いや、隊長大袈裟過ぎだから……」
「クロノ、お前はもっと自分に自信を持っていい! 特待生になればちょっとは天狗になるかとも思ったけど、逆にいつまでそんなに謙虚でいるつもりなんだ」
「いや……別に……俺、もう2階行くから」
俺は気恥ずかしくなり逃げるように2階へと上がっていった。
「あらあらクロノったら」
階段を上がる途中、おばさんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
その後も遅くまで隊長とおじさんおばさんは盛り上がっていた。
夜も更け、外でも宴が終わり皆死んだように寝静まった頃、イリス島は突如謎の賊の奇襲を受けることとなる。
急に騒がしくなった外に2階で寝ていた俺らも飛び起きる。
辺りは焦げ臭く、隊長とおじさんおばさんの姿がなかった。
残りの4人で武装をして1階へ降りると、部屋のあちこちから火が上がっており、もう少しで逃げられなくなるところだった。
外には複数の殺気があり、姿の見えない3人が心配になり慌てて外に出る。
すると⸺⸺⸺
⸺⸺⸺目の前に血塗れのおじさんの遺体が横たわっていた。
そのすぐ横には腹から大量に出血しているおばさんの姿もあり、今にも息絶えそうであった。
「親父! お袋!」
エルヴィスの引きつった悲鳴が響く。
「お前ら……起きてくれて良かった……」
そう言ったのは、横たわる二人の前で自身も傷だらけで大剣を構える隊長だった。
そして、家は何人もの賊に囲まれていた。
「俺が突破口を開く。お前らは海岸につけてある潜水艇で脱出だ、いいな?」
「隊長は!?」
と、チャド。
「おばさんも置いていけない」
俺はまだ息のあるおばさんを抱き上げようとする。すると、おばさんは力なく抵抗した。
「あなたたちだけなら……逃げ切れるわ……。生き延びるの……いい、わね?」
「そんな、おばさん……」
「行くぞお前ら! これは隊長命令だ!!」
隊長は血昇のアウラを発動させると、奥義を放って海岸への突破口を開き、周りの賊がバタバタと倒れていく。
そして、力を使い果たした彼自身もそのままその場へと倒れた。
「来い! こっちだ!!」
そう先陣を切ったのはエルヴィスだった。放心状態の俺らに一喝し、我に返った俺らを引っ張り海岸へ先導した。
海岸への森へ入る瞬間、火の海に包まれるイリスの地を一望した俺の目に入ったのは、本来この島にいるはずもない別の大隊を率いていた中佐だった。
彼は火の海のど真ん中で、狂ったように高笑いをしていた。
俺らは討伐祭のときに使用していた潜水艇に乗り込みイリス島を脱出し、リヴァール大陸の西を広く治めるブライリアント王国へと辿り着く。
金を稼ぐためにクラン赤獅子を結成した俺らは、表向きではその当時の事件がどう処理されていたかを知ることとなる。
⸺⸺イリス大粛清⸺⸺
翌日になってもイリス島へ向かった大隊が帰還しなかったため、少数精鋭の調査隊を派遣。
調査隊が目撃したのは黒魔症の島民やハイアット兵たち。
そのため調査隊はやむを得ず黒魔症の人々を殲滅。
調査隊の隊長は、黒い地脈の影響で突如黒い気が噴き出し、黒魔症を発症してしまったか、と報告書を上げる。
後に“イリス大粛清”と呼ばれたその悲惨な事件は周辺諸国を震撼させた。
⸺⸺
ちなみに、当時の調査隊の隊長は、イリスの火の海で高笑いをしていた中佐であった。
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