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第四章 氷の女王と氷の少女

53話 マギア

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 昼下がり。大海原を突き進むレーヴェ号の甲板では、ミオとポールが覚えた技の確認を行っていた。

「えっと、とりあえず回復をする白魔法。習得したのは単体初級の“ヒール”、中級の“クラル”、範囲初級の“エリアヒール”、中級の“ホールクラティオ”」
 ミオが“魔法大全”という本を開きながら言う。

『そうだね~、上級魔法は地面に魔法陣を作って、そこから動けなくなって静唱にも時間がかかるから、なんだかんだ1回もやったことないね。ミオの魔力の場合、中級で十分だから必要ないかも』

 ミオは「ふんふん」と相槌あいづちを打つ。

『次に攻撃の黒魔法。炎の聖霊ミシェルと融合をして炎魔法と聖炎せいえん魔法が使えるようになった』

「炎魔法は初級の“ファイア”と中級の“フレイム”。聖炎魔法は“聖魁せいかい豪火ごうか”で、暗黒の核を持つ暗黒種を倒すことができる。私の必殺技の一つ」
『うんうん』

「次に刻魔法ときまほう。これは正直ポールに言われるがままにしてるからよく分かってない」

『刻魔法は、ミオみたいな白い気の魔力を持った人が受け継ぐことのできる魔法。今の所覚えてるのは“白の軌跡きせき”で、アルバウスを辿たどることができる魔法だね』

「私以外にも、白い気の人がいるってこと?」

『そういうことになるね。アルベル婆さんもそうだったし、よく分からないけどこの懐中時計に何らかの細工をした人も白い気の人なんだと思う……多分ね』
 ポールは急に自信なさげに言う。

「まだその辺わかんないんだね。とりあえずアルバウスが探せるってだけで便利だね」
『そうだね、これに関してはまた進展があったらってことで』

「それで、最後に自分の魔力を使った技……。私の場合、白い気の魔力とか聖なる魔力って言われてるけど」

『こういう魔力を使った技っていうのは、気を操る“アウラ”に対して、“マギア”って呼ばれてるんだ。ミオのも一般的なマギアと同類にしていいのか分かんないけど、今後呼びづらいしマギアってことにしよ』

「マギア……か。えっと、私の覚えたマギアは、“白の陣”と“白の領域”。どっちも白い気を地面に張り巡らす技で、範囲の大きさが違う。その中では黒い気の力が抑えられて、魔物は弱体化する」

『そうだね。後は、“浄化の光”と“浄化の炎”で、浄化の光は人の黒魔症くろましょうを治して、浄化の炎は黒い気そのものを消滅させる。おそらくどっちも黒い気をマナに変換させてるのかなって思う』

「ふんふん、普通は地面から湧き出た黒い気は空気中でマナに変換するもんね、自然の摂理せつりに戻してあげたってことでいい?」

『うん、そうやって考える方が良いことしてる感出るし、そういうことにしよ』

「うむ。いやぁそれにしてもこの1ヶ月くらいでいっぱい覚えたなぁ」
 ミオとポールは一通りおさらいを終えると仰向けに倒れ込む。

「白魔法、黒魔法、刻魔法、それにマギア……。あれ、私ってもしかしてすごい魔法使いなんじゃ……?」
 ミオがとぼけたようにそう言うと、ポールは顔を彼女の方へ向けて『今更?』と呆れていた。


 ミオは、ふとあることに気付く。
「そう言えばさ、皆が使ってるアウラって、私にも使えるのかな?」

『身体カチコチにしたりメラメラしたりしたいの?』
「したい」

『アウラとマギアはね、基本どちらかしか習得できないって言われてるよ』

「えー、そうなの? あ、そう言えばポール前にチラッと言ってたような気もしてきた。絶対無理? じゃぁさ、魔法剣士的な人はこの世界にはいないの?」

『絶対無理かどうかは分かんないけど、魔法剣士はいるよ。その人たちは、まず魔法とマギアを習得して、アウラは覚えずに剣技の習得をしてるんだよ』

「ほえー、そうなんだ。まぁ、私は運動苦手だからこのまま魔法系を極めてったほうがいいのかなとは思ってる」

『なんだよ、ちゃんと自分のこと分かってるんじゃないか。じゃぁカチコチにしたいとか欲張らないこと』

「むぅ……」
 ミオは頬をぷくーっと膨らませる。

『じゃぁさ、アウラの代わりに、普通のマギア教えてあげるよ』
「普通のマギア?」

『うん、一般的な魔道士が更なる高みを目指す時に覚える技。とりあえず“魔法障壁まほうしょうへき”かな』
「おぉ、覚える! 覚えたい!」

⸺⸺

 ミオはあっという間にマギアの中の“魔法障壁”という技を覚えた。
 彼女が魔力を押し出しながら身体の前に円をえがくと、魔力の盾が目の前に現れた。

 この盾、つまり魔法障壁は自身に害のある攻撃を通さないものである。
 つまり威力が弱くダメージを受けない攻撃や現象は通し、殺意があったり、威力の高い攻撃は防ぐことができる。

 新たに防御の|術《すべ)を獲得したミオは上機嫌で船内へと戻っていった。

 
 この翌日の11月23日、レーヴェ号は中継地点のメディウム島へと上陸をした。

 この新たに習得した魔法障壁がすぐに役に立つことになるとは、この時のミオは考えもしなかった。



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