【完結】赤獅子の海賊〜クマ耳の小人種族となって異世界の海上に召喚されたら、鬼つよの海賊が拾ってくれたのでちやほやされながら使命果たします〜

るあか

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第二章 刻の魔法と闇の暗躍

25話 肉じゃが

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 結局アロルドはチャドのお下がりの剣をもらい、兄妹合わせて装備だけは一丁前になった。

 マウロいわく、ランベルトやカミッロの様にそこまでお金がある訳ではなかったため、安い装備しか買い与える事ができなかったとのことであった。
 しかしクロノはそれに対し、クランを組んだならいつまでも親に頼るのではなく、自分たちで武器もランクアップさせていくべきだ、と彼をフォローした。


 日が傾き始めた頃、レーヴェ号のキッチンは夕飯の支度したくでてんやわんやだった。
 ミオを料理長として、料理長補佐役のマウロ、見習いのランベルト、包丁担当チャド、総監督のポール、雑用ジーナがメンバーである。
 残りの皆は先に大浴場で汗を流していた。

「ミオ~、切れた~!」
「え、チャド早っ、てかうまっ!」
 ミオが確認しにいくと、人参や玉ねぎが皆同じ大きさで綺麗きれいに整列していた。

「切るのだけは得意~」
「なるほど」

「ミオちゃん、お出汁の味はこんなもんでいいかい?」
 マウロが小皿を渡す。
「どれどれ……うん、もう少し入れてもいいかも」
「はいよ」

「あっ、ランベルト! 火強いよ、落としぶたあふれそう」
「あわわ……」

「ジーナ、そのお皿まだ持ってっちゃだめ」
「あれ? どれだっけ?」
『ジーナ、こっちこっち』

「……よし、私はいためよう……」
 ミオは台に上り、コンロの前へと立った。

⸺⸺

 炒めた食材の入った鍋に水を入れ、砂糖や醤油などの調味料を加え、味を整えていく。

 風呂組が帰還する頃には、食堂中にいい匂いがただよっていた。
「うわぁ、すげーいい匂いだ!!」
 ケヴィンのテンションが一気に上がる。

「……アメノカク産のものを使うとホントにアメノカクで食った料理みてぇな匂いがすんだな」
 クロノは以前に一度だけ行ったことのあるアメノカク諸島を思い出した。


 テーブルに料理が次々と運ばれていく。
 ハルラ菜のお浸しにだし巻き卵、味噌汁にハルラフィッシュの煮付け、白いご飯、そしてミオの一番自信のある肉じゃがが並んだ。


「いただきまーす!!」


 皆は一口食べると「美味い美味い」と言いながらどんどん皿を空にしていった。

「いつも見ているハルラフィッシュが完全に別の魚だ……こんな料理があったなんて。帰ったら妻にも伝授しよう」
「この卵焼きも美味しい……!」

「船長はどれが美味しいと思う?」
 チャドに問われてクロノは既に何度もおかわりをしている皿を指差した。
「あ~、肉じゃがね、美味しいよね~」

「そういえば肉じゃがね……」
 肉じゃがに反応したミオは、不思議な思い出を語り出した。


「おばあちゃんと二人暮らしで、お手伝いで料理はいつもしてて、高校生……16歳くらいになった頃から本格的に料理を教えてもらうようになったんだけど……」

「この懐かしいような味はお祖母様直伝じきでんだったんだね」
 と、マウロ。

「あはは、うん。それである日突然、私の部屋の机の上にメモを見つけてね、そのメモには私の字で“肉じゃがを絶対美味しく作れるようになる!!”って書いてあったの」

「その言い方だとミオには書いた覚えがないんだな」
 そう言うケヴィンに対しミオは大きく頷いた。

「寝ぼけてたとか?」
 と、チャド。

「あはは、そうなのかな。でも覚えがなくてもなんか気になってお婆ちゃんに持っていったら、肉じゃがは作れるようになった方がいい! ってお婆ちゃんも張り切っちゃって……」

「それでこんな美味いのね~、お婆ちゃんさまさまだね~」
 と、エルヴィス。

「そう言ってもらえたなら頑張ったかいがあったよ」
 

 その後も皿はどんどん空になり、明日の朝までのつもりで作っていた肉じゃがはクロノが鍋を抱えて食べきってしまった。
 あまり言葉には出さなかったが、美味しいと思ってもらえているようでミオは嬉しくなった。

⸺⸺

 翌日もそれぞれ甲板で好きなように過ごし、一日があっという間に過ぎていった。
 
 更にその翌日、夜の見張り番だったケヴィンが一睡して起きてきた昼頃、前方にフェリス島の姿が見えてきた。




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