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第一章 不思議な魔力と旅の目的

14話 緊急クエスト

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「き、緊急クエストって?」
 ミオは赤く光ったクランボードを持ちながらあたふたする。

「とりあえず、どこかに触れると赤いのは収まるから、と」
 チャドがクランボードに軽く触れると、赤い光は収まっていった。

「今見てたページの次のページに変な依頼が来てるだろ」

 クロノにそう言われてミオがクランボードを指でめくると、さっきまではなかった“緊急クエスト”というページが追加されていた。

「ほ、ホントだ……えっと、ハーモニア首長からで、漁村ルーファにて異常発生。管轄内に存在するAランク以上のクランは直ちに漁村ルーファへと向かってください、だって……」

「ルーファか……街道を使うよりこのまま森を抜けて平原を東へ突っ切った方が早えな、行くぞ」

「「「了解」」」

 クロノの一声でミオ以外の3人が一斉に立ち上がったため、ミオも慌てて立ち上がる。
 そして一行は再び双子を先頭に、駆け足で森の奥へと進んでいった。


 道中でポールがミオへと説明をする。
『さっきの依頼はAランク以上、つまりAとSランクのクランにしか届かない通知なんだ。他にも緑色の通知や黄色の通知があったりするんだけど、赤色の通知は緊急クエストと呼ばれて、その名の通り緊急性の高い依頼だよ』

「そ、そう、なん、だ……!」
 歩幅も体力もないミオは息を切らしながら相槌あいづちを打つ。
 それに気付いたクロノが彼女をひょいと抱き上げた。

「あ、ありがとう……ふぇぇ、疲れた」
「ん」

『強制力はないから必ず行かなきゃいけないわけじゃないけど、首長直々の依頼だから成功報酬は弾むよ』
「そっかぁ、そのルーファってところで何が起こってるのかな?」

 ここでクロノが口を挟む。
「緑や黄色の通知はまぁまぁあるんだが、赤の通知は滅多にねぇから、村が壊滅するようなことが起こってると思え」
「ひえぇぇ……」

『クロノたちはA級以上になって何年くらいなの?』
「5年、だな」

『今までに何回緊急クエストの依頼が来たの?』
「2回、これで3回目だ」

「そんなに少ないのか……」
『緊急事態があったときに偶然その管轄に居ないとだから、そんなもんだよ』

「なるほど……これって、何があったかまでは分からないんだね」
『そうだね、スマホとかみたいなお互いに密に連絡取り合ったりとかって便利なものじゃないよ。あくまで魔力やマナでできる範囲のことまで』

「魔力やマナでできることがスマホよりもすごいとき全然あるけどね……」
『魔力のある世界とない世界ではものの価値観はまるで違うからそう思うときもあるよね』
「そういうことですな」


 双子がどんどん魔物を蹴散けちらしながら進んでいくと、やがて森を抜けてハルラ平原の北部へと出る。
 すると、東の方角の肉眼で確認できるギリギリの所に黒い煙が上っているのが確認できた。

「あれか、漁村ルーファ!」
 ミオは目を凝らして言った。

「船長、街道に20人くらいの団体が居る! ルーファに向かってるっぽい!」
「武装してるからハーモニアの自警団かも」
 ケヴィン、チャドがそれぞれ報告をする。

「チャド、先行してその団体に合流しろ。万が一事態を知らねぇ団体なら引き返すよう言え」
「了解!」

 チャドは一気にスピードを上げてどんどん小さくなっていく。その後を残りの皆も追いかけた。


 ルーファの外観が目視できるほどまで迫った所で、ルフスレーヴェ一行は街道にいる団体に合流する。

「船長~! やっぱハーモニアの自警団の人たちだった。こっちの4人は“ピスキス”っていうクランの人たち」
 早くも団体に打ち解けているチャドが軽く報告をする。

 クラニオ族の男女にヒュナム族の男性2人で構成されたピスキスは皆目をキラキラと輝かせながらルフスレーヴェの一行を見つめていた。

 自警団のオーガ族の男が早足で歩きながらクロノの隣へと並んだ。

「ハーモニア自警団長のクラーク・スタインズです」
「海賊クランルフスレーヴェの船長、クロノ・フォスターだ」

「緊急クエストに反応してくださりありがとうございます。今現在ハルラ島に滞在しているA級以上のクランがルフスレーヴェ様だけでして、大変心強いです」
 クラークは深く礼をする。

「俺らだけ? なら、お前らは?」
 クロノは背後にピッタリくっついているピスキスの皆を振り返った。
 皆まだ何処か幼さを残しており、ルフスレーヴェよりは年下だろうとクロノやミオは考えていた。

 彼の問にクラニオ族の青年がすぐに答えた。
「はい、俺らはまだC級なんすけど、自警団の人から偶然このことを聞いて、全員ルーファ出身なんでいても立ってもいられず付いてきてしまったっす」
「そうか」

「彼らには後方支援を任せるつもりです」
 クラークがそう付け加える。
「了解した」

 淡白に返事をするクロノを見て、ピスキスの皆は更に目を輝かせる。
「あ、あの、俺、リーダーのアロルド・テスタっす。こっちは妹のジーナ、後ろの2人はメガネの方がカミッロ・バルディーニ、こっちのイケメンがランベルト・スパーダっす。村のこと聞いたときは頭が真っ白になりましたが、チャドさんが来てくれてS級だって聞いてめちゃくちゃホッとしてます、ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!」」」
 ジーナ、カミッロ、ランベルトの3人も続く。

「礼は全部片付いてからにしろ」
 クロノがそう返すと、4人は声を揃えて「すみません!」と謝った。


 道中でお互いに自己紹介を済ませる。
 
 自警団は前衛戦士、後衛ガンナー、黒魔道士、白魔道士で構成されており、クラーク隊は先発で後からもっとたくさん駆けつけるとのことだった。

 ピスキスの皆はアロルドとジーナが茶髪のクラニオ族、それぞれ剣とボウガンを装備している。
 カミッロは薄緑色のマッシュヘア、メガネをかけて魔法杖を担ぎ、一見ひ弱そうである。
 ランベルトはアロルド曰くイケメンであり、キリッとした凛々りりしい顔立ちに赤毛の短髪、そして背中に装備している立派な槍がよく映えていた。
 ジーナが18歳、他は20歳で幼馴染だという。クランランクはC級に上がったばかりで、C級から受けることのできるフリークランになるための審査へ向けて日々精進しているとのことだった。


 そもそもフリークランが何か分からないミオは後からポールにこっそりと教えてもらった。
 フリークランとはC級以上のクランが審査を経てなることができ、他の島や大陸の検問所を登録証のみで通過できるクランのことを言うそうだ。

 フリークランの中でも定住していないクランを俗に海賊クランと呼んでおり、規則ではないが各クランのシンボルを船体または海賊旗に印すことが習わしになっている。
 ミオはレーヴェ号の船体にも登録証と同じ赤い獅子が描かれていたことを思い出した。
 そして、何でそもそも赤い獅子なのか、今度クロノに聞いてみようと思う、ミオなのであった。


 一同がルーファへと辿たどり着くと⸺⸺


⸺⸺村は火の海に包まれていた。





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