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第四章 平和への軌跡

42話 ここでも出てくるその名

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「わりぃ……名前なんだっけ」
 ラインハルト団長は頭をかきながら2人の騎士へ尋ねる。

「はい、アベル・ギルマン4等騎士です!」
「チェスター・アーキン、同じく4等騎士です!」
 彼ら2人は緊張気味に名乗った。

「おっけーアベル、チェスター、単刀直入に聞くぜ。セシル皇帝陛下が戦争を企んでるって、一体誰に聞いたんだ」

「「っ! 何でその事を……!」」
 2人の顔が引きつる。どうやらビンゴのようだ。
「質問してるのはこっちだ。正直に話せ」
 ラインハルト団長はいつになく真剣な表情でそう尋ねた。

「あ、あの……」
 アベルがブルブルと震え出す。
「すいません……言えません……」
 チェスターが怯えながらそう答えた。

「誰かに口止めされてんのか? ったく、厄介事に首突っ込みやがって……」
 ラインハルト団長は深くため息をついた。

「もし本当に戦争を企んでいるのであれば、私たち、止めたいんです。あなた方が話してくれたこと、絶対その人に告げ口したりしません。既にあなた方が噂をしていたことを、この方が聞いているんです。お願いです、話してください」
 私はそう言って深く頭を下げた。

 すると、チェスターがゆっくりと口を開いた。
「俺ら、城の裏で皇帝陛下と黒豹のヴェイン団長が話しているのを聞いたんです……」

「「またヴェイン団長……」」
 私とラインハルト団長は声を揃えて落胆する。

「ヴェイン団長は『先手を打たれる前に、こちらから行くべきです』って、セシル皇帝陛下に進言なさっていました。それに対し皇帝陛下は『それではただの虐殺です』と……」
 そう報告するチェスターに、アベルが続く。
「そこで俺らの存在がヴェイン団長にバレて……今の話を誰かに話せば殺す、と……。俺らは誰にも言わないと約束をし、すぐに城の中へと逃げ込みました」

「セシル皇帝陛下、戦争するのかなって……廊下で2人で話したのを記憶しています。その方に聞かれたのであれば、この時だと思います……。それから俺らは、怖くて一切その話をしていないので……」
 と、チェスター。

「分かった。お前ら良く話してくれた。他に抱えてることはねぇか? 今のうちに言っとけ、スッキリするぞ」
「いえ、お話できることは全て話したつもりです……」
 と、アベル。
「戦争……止めていただけますか?」
 と、チェスター。
「おうよ、後は俺らに任せとけ。お前らもう行っていいぞ。ありがとな」

「「はい!」」
 アベルとチェスターは揃ってお辞儀をして、訓練場の方へと戻っていった。

「とりあえず、白狼騎士団に持ち帰りだな」
 と、ラインハルト団長。
「そうですね……メルヴィンさんはどうしますか?」
「俺は使用人だからあまり出歩けないが……とりあえず赤鷹騎士団員の格好をしている間は、お前たちに同行しよう」

「では、3人で白狼騎士団の宿舎へと行きましょう」

 こうして新たな情報を手に入れて、白狼騎士団の宿舎へと戻った。
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