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悪だくみ

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~~~パーティー会場から出た時に戻ります~~~


パーティー会場のドアを出ると、
待合ロビーの従者が待っていてくれた。
パーティーの給仕の者が異変を感じて、知らせておいてくれたらしい。

「お嬢様、お帰りでよろしいでしょうか?」

「えぇ、お願いします」

すでに生徒たちはパーティー会場に全員が入ってしまっているようで、
ロビーには、顔を青くした学院の関係者だけがいた。
軽く彼らに会釈をし、従者にエスコートされ正面の車寄せに用意された馬車へ乗り込んだ。

「これで、終わったのね」

独り言が思わず口から洩れてしまう。

馬車が動き出し、見慣れた学院からの帰り道を進んでいく。
混雑していない道なので、行きと違い20分ほどで屋敷に到着する。
馬車のドアが開き、
ドアを開けてくれたのは、従者ではなく兄のトルスタインだったことに気づく

「お帰り、僕のお姫様」

いつもの笑顔で迎えてくれる。
玄関ドアの前には父と侍女のディー、執事たちが待っていてくれた。

「お帰り、大変だっただろう?
とりあえず、着替えてくるかい??
ゆっくり休みなさい。話は明日でもよいだろう」

優しい父の言葉を受けて、
泣きそうになってしまう。悲しいわけではないはず。
悔しいのか、寂しいのが、後悔しているのか………
自分の気持ちすら理解できなくなっている。

「………お父様。書状は届いておりますか?
届ける。という話でしたが………
お父様がよろしければ、
確認したいので湯あみの時間だけいただけますか?」

悪いことは先送りしても改善することはない。
早く対処できるものは、出来るだけ早く処置してしまいたかった。

「わかった、トルスタインと書斎で待っているから準備出来たらおいで。
ディー、あとは頼んだよ」

「かしこまりました」

お父様の後ろに控えていたディーが私のところまで来てくれて手をとった。

「お嬢様、湯あみの準備は出来ております。
さぁ、まいりましょう」

きっと、状況を理解してくれているのであろう。
それならば、あとは任せよう。
それが最善なのだろうから。


湯あみが終わり、部屋着に着替えると、
用意してくれた紅茶を飲みながら、髪を火と風の魔石を利用して乾かしてもらう。
屋敷に到着して1時間くらいだろう、だいぶ落ち着いてきた。
部屋付きの侍女の1人に書斎へ先ぶれをしてもらい、
ディーと一緒にゆっくり自室を出て、父の書斎に向かう。


コンコン

「はいりなさい」

軽くノックをすると、中からすぐに返事があり、
ドアに入ると、父と兄が書斎の応接セットに向き合って書簡を見ていた。

「お疲れ、ダイアナ」

「お帰り、ダイアナ」

父と兄が笑顔で私を迎えてくれる。
その表情は、王家から婚約破棄を言い渡された家族の物とは思えない。

「とりあえず座りなさい。
ディー、ワインとダイアナには紅茶………
あー、軽食も用意してくれ」

「かしこまりました」

「それから、ワトソンにこっちは勝手にやるから、
家の者は寝るように言っておいてくれ。
ディーも飲み物を持ってきたら、そのまま下がってくれ」

「はい」

ワトソンは家の執事である
冒険者として経験のある私たちは、基本的な事は自分でできる。
魔獣を狩るときは、野宿をする事もあるので、当然ではある。

「ダイアナ、とりあえず今日の出来事を話してくれるかい?
送られてきた書状については、その後に話をしよう……」

父にうながされ、
昨日の王子からの手紙から始まり、パーティー会場での事を話す。
途中でディーが飲み物を持ってきてくれたが、
彼女の顔が真っ青になっていた。



「だいたい理解した。辛かっただろう……」

優しく声をかけてくれるお父様
こんな事になったのに、怒ることもない。

「いえ、申し訳ありませんでした。
王子との婚約破棄は決定だと思います。
明日、王宮へお父様にご一緒していただく事になります。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「ダイアナ……謝るのは俺の方だ。
お前の母、アンナの希望とはいえ、ウィリアム王子との婚約を決めたは私だ。
ダイアナ、お前はよくやってくれたよ。
確認するが、ウィリアム王子への好意はなかったのだろう?」

好意………
申し訳ないが、持てなかった。

なぜだろう?

お妃教育として王宮にあがると、必ず時間を作って会ってくれた。
学院に通うようになると、顔を合わせる機会は増えたが、
王子が他の女性と行動する事を目や耳に入ることも多くなった。
嫉妬する事はなかったような気がする。

あまりにも度が過ぎるときは、注意した事もあるが、
王子の評判の方が気になってしまっただけだ。
それがいけなかったのだろう

「好意という事が私には、まだ理解できません。
王子が他の方を気にされていても、
何というか……それは、それで良い。と、おもってしまっていました。
ただ、嫌い。というわけでもなかった思います」

一瞬、部屋の中がシーンと静まり返った。

「……無関心かぁ~………
ちょっとウィリアム王子が可哀そうな気もしてきたよ。
彼は、昔からダイアナのことを気に入っていたように思えたし、
わざと嫉妬して欲しくて、目の前で他の女の子に手を出している。
ぐらいに見えてたからなぁ~」

兄が大きなため息を付きながら独り言ちた。

「まぁ、ダイアナがその気持ちなら、先に進めよう。
書状の確認をしてくれ。
私は、この婚約を解消させたい。と、思っていた。
ダイアナには好きな人と一緒になってもらいたい。と思っているし、
お前には、王宮は窮屈すぎる。
もっと自由に生きてほしい。
その為に、下準備はしてきた」

お父様が切り出した。

聞き捨てならない事を言ってないですか??
下準備って、もしかして、破談がご希望だったのかしら?

「ごめんなさい。お父様、少し気になったんですが………
婚約破棄については、お父様としても希望どおり。という事なのでしょうか?」

「あー、どっちでも良かったんだよ。
もしダイアナがウィリアム王子と結婚したければ、それで良いし、
どうやら違うようなので、破談でもよいかなぁ……って動いていたんだよね」

答えてくれたのは、お父様でなくお兄様だった。

なんだか、良からぬ事を陰でしてそうですね。聞くのも怖いので、追及はしない。

ローリック家の恥になってしまった。と、今までの行動や気持ちを反省もしていたのですが、

そうなのですね。大丈夫なのですね!!

「お父様、お兄様。
私、ローリック家の家名に泥を塗ってしまった。と、本当に心配しておりました
大丈夫なのでしょうか?お二人に恥をかかせてしまったのでは、ないでしょうか?」

「家名などは、気にしなくて良い。
そもそも、王家からの要望で婚約をしたのだ。
婚約破棄に関しても、書状を確認するまでもなく冤罪である事はすぐにわかる。
お前が心配する事でなはいよ…………
ただ、この書状を上手に使えば、
俺もトルスタインもダイアナも自由になれる」

なんだか、お父様がスッゴク悪い顔で笑ってらっしゃる。

なぜでしょう?
先ほどのパーティー会場よりもよっぽど背筋が寒いです。

「そうだよ、ダイアナ。
せっかくローリック家にケンカを売ってくれたんだ!!
高く買わないと申し訳ないだろう??
ちゃんと準備はしてあるよ、う~ん2年ぐらいかけたから。
絶対、うまくいくよ……」

お父様の悪い顔とは反対に満面の笑顔のお兄様。
うん。王家のみなさん、リリーさん、その他のみなさん。
本当にごめんなさい。
私では、抑えられません。
健闘を祈ります。

「お任せいたします」

二人の笑顔に圧倒されて、
口を挟む事をやめてみた。

恐ろしく綿密で周到な悪だくみに震えながら夜も更けていくことになる。

あぁ~疲れましたので、

早く寝たいです。

私、寝てよろしいですよね??






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