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入学式
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その日はまるで入学する俺たちを祝福するみたいに桜が綺麗に咲いていた。気温も温かく、風も気持ちよく吹いていて、入学式にもってこいの天気だった。
俺はママ友と仲良く喋っている母親を置いて中庭に向かっていた。新しく入学するこの高校はかなり広く、敷地内の至るところに緑が植えてある。俺は中でもオープンキャンパスで来た時に見つけた、中庭の桜の木が好きだった。オープンキャンパスで来た時は季節的にも桜は咲いてなかったけど、今日なら咲いてるだろう、そう思って中庭に向かった。けどそこには先客がいた。
その人は長い髪をサラサラと揺らし、そこにある桜の迫力に圧巻されたような顔で大きな桜の木を見上げていた。
「き...」
俺は思わず出かかった言葉を飲み込む。するとその人は俺に気づき、声をかけてきた。
「あ、えっと、君も新入生?だよね。俺もそうなんだ。俺は白鳥千紘、よろしく。」
「え?ああ、よろしく...って、ええ?”俺”?」
その人は長い髪を揺らし、綺麗な顔で微笑んでいた。でも俺はそれどころじゃなかった。てっきり長い髪できれいな顔だったから女の子かと思ってたけど、確かによく見るとズボンはいてるし、のどぼとけも出てる。さっきの会話の中でも一人称は「俺」だったし、まぎれもなく”男”だ。
「え?」
「ああ、ごめん。その髪、き...いや、長いんだなと思って。俺は鳥越卓、よろしくな。」
「?よろしく。あ、俺親から早く戻ってこいって連絡来てたからもう行くね。」
そう言って白鳥は歩いて行った。その後ろ姿を見送っていると、白鳥はくるっとこちらを振り返り、笑顔で俺に叫んだ。
「その桜、綺麗だよね!」
その瞬間、風がぶわっと白鳥の長い髪をなびかせた。その景色は思わず目を奪うほど綺麗だった。そういえば気になってた君を伸ばしてる理由は聞きそびれたけど、これから同級生になるならどこかで聞くタイミングはあるだろう。俺はこれからの高校生活に胸を躍らせた。
そしてこれが俺と白鳥千紘との出会いだった。
俺はママ友と仲良く喋っている母親を置いて中庭に向かっていた。新しく入学するこの高校はかなり広く、敷地内の至るところに緑が植えてある。俺は中でもオープンキャンパスで来た時に見つけた、中庭の桜の木が好きだった。オープンキャンパスで来た時は季節的にも桜は咲いてなかったけど、今日なら咲いてるだろう、そう思って中庭に向かった。けどそこには先客がいた。
その人は長い髪をサラサラと揺らし、そこにある桜の迫力に圧巻されたような顔で大きな桜の木を見上げていた。
「き...」
俺は思わず出かかった言葉を飲み込む。するとその人は俺に気づき、声をかけてきた。
「あ、えっと、君も新入生?だよね。俺もそうなんだ。俺は白鳥千紘、よろしく。」
「え?ああ、よろしく...って、ええ?”俺”?」
その人は長い髪を揺らし、綺麗な顔で微笑んでいた。でも俺はそれどころじゃなかった。てっきり長い髪できれいな顔だったから女の子かと思ってたけど、確かによく見るとズボンはいてるし、のどぼとけも出てる。さっきの会話の中でも一人称は「俺」だったし、まぎれもなく”男”だ。
「え?」
「ああ、ごめん。その髪、き...いや、長いんだなと思って。俺は鳥越卓、よろしくな。」
「?よろしく。あ、俺親から早く戻ってこいって連絡来てたからもう行くね。」
そう言って白鳥は歩いて行った。その後ろ姿を見送っていると、白鳥はくるっとこちらを振り返り、笑顔で俺に叫んだ。
「その桜、綺麗だよね!」
その瞬間、風がぶわっと白鳥の長い髪をなびかせた。その景色は思わず目を奪うほど綺麗だった。そういえば気になってた君を伸ばしてる理由は聞きそびれたけど、これから同級生になるならどこかで聞くタイミングはあるだろう。俺はこれからの高校生活に胸を躍らせた。
そしてこれが俺と白鳥千紘との出会いだった。
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