魔法少女のファンな俺

世万江生紬

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魔法少女のファンな俺⑦

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 今日はいつものように魔法少女たちの前でモンストルを作り出し、消滅させるまでの光景を目に焼き付けていた俺だったが、いつもと違う点が1つ。

「いつも応援してます!」

「フローラ可愛い~!」

「アクアさん、握手してもらえませんか!?」

「写真とか撮っても!?」

魔法少女たちがファンに囲まれている!俺がそうであるように、この街でモンストルが作り出されてそれを魔法少女が倒している以上、魔法少女の活躍は周知のものとなっている。となれば当然応援しているファンも出来るというもの。今日は人通りの多いところでモンストルを作ったもんだから、消滅させた瞬間魔法少女たちが囲まれてしまった。

「もちろんいいよー!でも周りの人に迷惑にならないように端によって順番にねっ!大丈夫、ボクたちは逃げたりしないよ!」

リーダーのクリムゾンフレイムがそう告げると、周りを囲っていた人たちがお行儀よく並び出した。民度良すぎか。これだから魔法少女のファンはやめられない。ちなみにだが、魔法少女はもはやアイドル的な存在なので、こういったファンサ―ビスも嬉々としてやってくれる。ツーショットの写真も撮ってくれるし、手を差し出せば握手もしてくれる。そして6人それぞれサインもあるので、色紙を渡せばサインも書いてくれる。しかもこのサイン、みんな名前を書くところは一緒だが、それぞれにあるモチーフイラストも描いてくれる。俺は直接お願いするのは恥ずかしくてできなかったので、友人にお願いした結果6人全員のサインを持っている。

「はい!これからもボクたちの応援よろしくね!」

クリムゾンフレイムのモチーフは太陽。名前を囲むようにでっかく描かれた太陽が彼女の存在感の大きさを語る。さすがリーダー。

「ほら、これだけで満足か?写真とか、今なら撮ってやるぜ?」

コバルトアクアのモチーフはロザリオ。名前の一部をイラスト化されて描かれたロザリオは彼女のワイルドな性格とは真逆の神聖さでギャップ萌えさせる。

「はい、どうぞ。大事にしていただけると嬉しいです。」

ピーコックナトゥラのモチーフはクローバー。名前の始まりに描かれた葉から茎を名前の端まで伸ばして描かれるそれは落ち着いた彼女の可愛らしさを完璧に表現する。

「...はい。ありがとね。」

ビオニーウィンドのモチーフは蝶。名前の横をひらひらと舞うように描かれる蝶が、彼女のどこかはかない印象と相まって最高にエモい。

「はいどーぞっ!これからも頑張るねっ!」

レモントネールのモチーフは羽。名前の上から落ちてくるように描かれている羽はまさに天使。いつも元気なイメージの彼女だからこそ、このささやかな可愛らしさがそそられる。

「ありがとねー!これからもイチオシは私にしてね♡」

マゼンタフローラのモチーフはハート。名前の横に添えられて描かれるハートは彼女のあざとさそのもの。一番シンプルなのも、サインに時間をかけず他のファンサに時間をかけるためって言う理由で惚れる。

「じゃあみんな!これからも応援お願いします!ボクたちもずっと頑張るから―!」

「じゃあな!」

「これからもよろしくー♡」

魔法少女たちは周りの人たちみんなを満足させると笑顔で去って行った。俺もそれを笑顔で見送っていたけど、その背中が見えなくなってから一息ついた。

「ふー。今日はちゃんと負の感情もそこそこ集めたし、魔法少女のファンサも見られた。いい日だったな~。」

「そうか、そりゃ良かったな。」

「うおぅ先輩!いたんですか。」

誰もいないと思って大きな独り言を言っていたら真後ろに先輩がいた。いないと思った場所に人がいるだけで怖いのに、さらに強面でたっぱがデカいともなると恐怖は倍増だ。

「お疲れさん。今日はちゃんと仕事してたな。」

「今日は怒らないんですね。怒らないなら何の用ですか。」

「お前、俺が先輩ってこと忘れてねぇか?まあいい、お前に話...というか仕事と言うか。とにかく本部に来い。」

「はー、まあ魔法少女帰っちゃってやること無くなったんでいいですけど。」

「テメェの行動原理は全部魔法少女かよ。」


 かくして俺は仕事終わりに本部まで呼び出されることになった。普段仕事終わりは直帰だからこんなことは珍しい。一体俺に何の用なんだろうか。
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