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君に好きだと伝えていれば
君に好きだと伝えていれば
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「よっ、海斗、久々~。彼女は出来たんか?」
俺の名前は東谷海斗。そして絡んできたこいつは鳩山飛鳥。俺たちは高校の頃の友人で、今は会ってないけどTwitter上でちょいちょいコメントしあってるくらいには仲がいい。
「お前、俺に会う度にそうやって聞くの辞めてくんない?同窓会とか出席したくなくなる。」
「お?ってことはやっぱまだ出来てないんだな。高校の頃から彼女欲しいって言い続けて早7年。大学卒業してもぼっちなんだなー。」
「マジで辞めろ。心の傷をえぐるな。」
そう、今日は大学卒業しての春休み。高校の同窓会的な集まりだ。俺は高校の頃彼女が欲しい、女にモテたいから勉強頑張っていい大学に入る、とオープンにしてきてしまったため、今本当に困っている。会うやつ会うやつに「彼女できた?」と聞かれ、その度にまだ出来てねぇわ!と心の中で毒づく。だから本当なら同窓会とかも出たくなかった。が、
「悪かったって、もう聞かないよ。にしてもさ、久々過ぎて顔みてもパッと名前出てこない人もいるな~。あれは、吉田だろ?で…あ、あれ小田さんじゃね?」
ドキッとする。俺は飛鳥の指さす方にゆっくりと目を向け、その姿を視界に入れる。彼女の名前は小田悠里、高校時代に仲が良く、そして俺の初恋の相手。7年ぶりに姿を見たけど、相変わらず可愛らしい。彼女は特別美人なわけじゃないけど、裏表の無い性格に可愛らしい印象で男子からは結構人気だった。俺が今日、本当は出たくなかった同窓会にわざわざ足を運んだのは、小田さんに会うためだ。
「小田さん、髪とか染めてないしアクセもあんまり付けてないなー。飾らない感じは高校の時から変わんないな。」
「あ、ああ…そうだな。」
「お前…なんか分かりやすいな?」
「は、何が。」
「な~んも。小田さん1人だぜ?俺吉田と話してくるから声かけろよ。じゃあな。」
飛鳥が行ってしまった。確かに飛鳥の言う通り、小田さんは今1人。話しかけるなら絶好のチャンスだ。行くか。
「あ、お、小田さん。久しぶり。」
「ん?あー、東谷くん!?久しぶり~、彼女は出来た?」
「小田さんまで開口一番それ聞くのか…。」
「えぇ、ごめん、あんなに豪語してたから…。」
小田さんは半笑いで、ちょっとバツが悪そう言った。半笑いなところが小田さんらしい。本心が隠せてない。
「そんなに落ち込む?ごめん、そんな深い意味で聞いたんじゃないんだ…。」
「いや、いいよ、いいんだけれども。」
普通にからかわれるのも落ち込むけど、小田さんに聞かれるのは別の意味で落ち込む。というか違う、そうじゃない。俺が今日ここに来て、小田さんに話しかけたのには理由がある。姿が見たかった、会いたかった、だけじゃない。伝えたいことがあるんだ。
「にしても東谷くん全然変わんないね、垢抜けてない感じがする。周りの人みんなキラキラで髪もアレンジしたりしてるから…なんて言うか、嫌いじゃないぜ。」
「嫌いじゃない…。」
「うぇ!?繰り返さないでおくれよ。恥ずかしいじゃあないか。」
「あのさ、」
俺は、今日言おうと、家で何回も練習してきた言葉を口に出す。
「俺、高校の時、小田さんのこと好きだったよ。なんて言うか、今日伝えとこうと思って。」
練習よりちょっと声が上ずって、たどたどしくなってしまったけど、言えた。高校の時、伝えよう伝えようと思って、結局勇気が出なくて伝えられなかったたった2文字の言葉。良かった、伝えられて。
「ほぇ…?あ、えーっと。」
小田さんは顔を赤らめてちょっと混乱気味にあわあわしてる。そう言えば俺が伝えるイメトレはしてたけど小田さんの返事についてのイメトレはしてなかった。ヤバい、なんて言われるんだろ。ってか、この後どうしよう。
「うん…ありがと。てことは、そっか。それを高校の時に伝えていてくれてたら、私たち恋人同士になれてたってことかな。」
「へ、」
「はは、ざーんねん。あ、じゃあ私よっちゃんのとこ行くね。」
彼女は去った。俺は1人呆然として突っ立っていた。そんな俺の頭の中は小田さんの言葉がグルグル回っている。え、伝えていれば恋人?じゃあ高校の時小田さんは俺のことが好きだった?あの時好きだと伝えていれば、恋人同士になれていた?違う、いや違わないけどそうじゃない。今は?今はどうなんだ?俺は今でも小田さんの事好きなのか?そして彼女は今でも俺のことが好きなのか?分からない、分からないけど、そんな過去があったなら、俺が取るべき選択肢は1つ。
「待って!小田さん!」
もう一度、彼女と話す。
あの時、君に好きだと伝えていれば、掴めていたかもしれない未来を、もう一度掴み取るために。
俺の名前は東谷海斗。そして絡んできたこいつは鳩山飛鳥。俺たちは高校の頃の友人で、今は会ってないけどTwitter上でちょいちょいコメントしあってるくらいには仲がいい。
「お前、俺に会う度にそうやって聞くの辞めてくんない?同窓会とか出席したくなくなる。」
「お?ってことはやっぱまだ出来てないんだな。高校の頃から彼女欲しいって言い続けて早7年。大学卒業してもぼっちなんだなー。」
「マジで辞めろ。心の傷をえぐるな。」
そう、今日は大学卒業しての春休み。高校の同窓会的な集まりだ。俺は高校の頃彼女が欲しい、女にモテたいから勉強頑張っていい大学に入る、とオープンにしてきてしまったため、今本当に困っている。会うやつ会うやつに「彼女できた?」と聞かれ、その度にまだ出来てねぇわ!と心の中で毒づく。だから本当なら同窓会とかも出たくなかった。が、
「悪かったって、もう聞かないよ。にしてもさ、久々過ぎて顔みてもパッと名前出てこない人もいるな~。あれは、吉田だろ?で…あ、あれ小田さんじゃね?」
ドキッとする。俺は飛鳥の指さす方にゆっくりと目を向け、その姿を視界に入れる。彼女の名前は小田悠里、高校時代に仲が良く、そして俺の初恋の相手。7年ぶりに姿を見たけど、相変わらず可愛らしい。彼女は特別美人なわけじゃないけど、裏表の無い性格に可愛らしい印象で男子からは結構人気だった。俺が今日、本当は出たくなかった同窓会にわざわざ足を運んだのは、小田さんに会うためだ。
「小田さん、髪とか染めてないしアクセもあんまり付けてないなー。飾らない感じは高校の時から変わんないな。」
「あ、ああ…そうだな。」
「お前…なんか分かりやすいな?」
「は、何が。」
「な~んも。小田さん1人だぜ?俺吉田と話してくるから声かけろよ。じゃあな。」
飛鳥が行ってしまった。確かに飛鳥の言う通り、小田さんは今1人。話しかけるなら絶好のチャンスだ。行くか。
「あ、お、小田さん。久しぶり。」
「ん?あー、東谷くん!?久しぶり~、彼女は出来た?」
「小田さんまで開口一番それ聞くのか…。」
「えぇ、ごめん、あんなに豪語してたから…。」
小田さんは半笑いで、ちょっとバツが悪そう言った。半笑いなところが小田さんらしい。本心が隠せてない。
「そんなに落ち込む?ごめん、そんな深い意味で聞いたんじゃないんだ…。」
「いや、いいよ、いいんだけれども。」
普通にからかわれるのも落ち込むけど、小田さんに聞かれるのは別の意味で落ち込む。というか違う、そうじゃない。俺が今日ここに来て、小田さんに話しかけたのには理由がある。姿が見たかった、会いたかった、だけじゃない。伝えたいことがあるんだ。
「にしても東谷くん全然変わんないね、垢抜けてない感じがする。周りの人みんなキラキラで髪もアレンジしたりしてるから…なんて言うか、嫌いじゃないぜ。」
「嫌いじゃない…。」
「うぇ!?繰り返さないでおくれよ。恥ずかしいじゃあないか。」
「あのさ、」
俺は、今日言おうと、家で何回も練習してきた言葉を口に出す。
「俺、高校の時、小田さんのこと好きだったよ。なんて言うか、今日伝えとこうと思って。」
練習よりちょっと声が上ずって、たどたどしくなってしまったけど、言えた。高校の時、伝えよう伝えようと思って、結局勇気が出なくて伝えられなかったたった2文字の言葉。良かった、伝えられて。
「ほぇ…?あ、えーっと。」
小田さんは顔を赤らめてちょっと混乱気味にあわあわしてる。そう言えば俺が伝えるイメトレはしてたけど小田さんの返事についてのイメトレはしてなかった。ヤバい、なんて言われるんだろ。ってか、この後どうしよう。
「うん…ありがと。てことは、そっか。それを高校の時に伝えていてくれてたら、私たち恋人同士になれてたってことかな。」
「へ、」
「はは、ざーんねん。あ、じゃあ私よっちゃんのとこ行くね。」
彼女は去った。俺は1人呆然として突っ立っていた。そんな俺の頭の中は小田さんの言葉がグルグル回っている。え、伝えていれば恋人?じゃあ高校の時小田さんは俺のことが好きだった?あの時好きだと伝えていれば、恋人同士になれていた?違う、いや違わないけどそうじゃない。今は?今はどうなんだ?俺は今でも小田さんの事好きなのか?そして彼女は今でも俺のことが好きなのか?分からない、分からないけど、そんな過去があったなら、俺が取るべき選択肢は1つ。
「待って!小田さん!」
もう一度、彼女と話す。
あの時、君に好きだと伝えていれば、掴めていたかもしれない未来を、もう一度掴み取るために。
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