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季節話
龍神様と笑い
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夏の暑さもいよいよ厳しくなった頃。龍平はあまりの暑さに縁側で伸びておりました。
「あ…あつい…。」
人間ならば伸びてしまう暑さも、神様である龍神様は何ともありません。ただ屈強な龍平ですら伸びているのですから余程暑いことは理解しています。
「龍平、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ…もう何のやる気もおきません…。」
龍平の言う通り、普段なら一日の大半を費やす畑作業も今日は一切手をつけていません。
「重症だのぉ…。だが暑いとはいえずっとこの様子だと気が滅入ってしまうだろう。」
「とはいえ暑いものは暑いですから…。」
「むぅ…。ではせめて笑うことくらいはすると良い。」
「笑う、ですか。」
「病は気から、と言うがぁ。まず滅入ってしまったのなら笑顔からだのぉ。これなら横になったままでも出来るぅ。」
「それは…まあ。」
確かに、最も労力を使わずこの状態を脱する最適解かもしれません。が、人間笑えと言われてすぐ笑えるものではありません。
「私が笑わせてやろう。ん゛ん、この間のことだぁ。ちょいと海に移動しようと瞬間移動をしたのだがな、なんと到着したのは湖だったのだぁ。」
「…今の何が面白いのですか?」
「辛辣だなぁ!水のある場への移動だが海と湖の大きさを間違えておったという話だぁ!」
「いや解説されてもさっぱりですが。」
神様の冗談は人間の龍平にはいまいち理解できません。
「む、むぅ…!ではこの話ならどうだぁ!」
龍神様はその後、色々な神様あるあるな失敗談を話して聞かせましたがどれもこれも龍平はぴんと来ません。しばらく粘っていましたが、ついに龍神様が折れてしまいました。
「むぁー、どれもだめかぁ!そもそも龍平が腹を抱えて笑っているところを見た記憶は無いぞぉ!あぁー!」
龍神様が頭を抱えて悶絶していると「クス」っと笑う声が聞こえました。
「む?龍平、今お主…。」
「あぁ、すみません。いえだって天下の龍神様が人間1人笑わせるためにそんなに頭抱えて…ははっ。」
龍平は面白い話をしようとしても出来ない龍神様をみてクスリと笑いました。決して腹を抱えた大爆笑ではありませんが、気分を晴らすには十分です。
「さ、気分も切り替わったし俺は畑仕事をしてきますよ。」
「そ、そうかぁ。」
「そうだ龍神様。今度は俺を笑わせられるくらいの話を考えておいてくださいよ。」
「それは難解だなぁ。」
こうして、ささやかな笑みを浮かべながら二人は暑い夏を過ごすのでした。
「あ…あつい…。」
人間ならば伸びてしまう暑さも、神様である龍神様は何ともありません。ただ屈強な龍平ですら伸びているのですから余程暑いことは理解しています。
「龍平、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ…もう何のやる気もおきません…。」
龍平の言う通り、普段なら一日の大半を費やす畑作業も今日は一切手をつけていません。
「重症だのぉ…。だが暑いとはいえずっとこの様子だと気が滅入ってしまうだろう。」
「とはいえ暑いものは暑いですから…。」
「むぅ…。ではせめて笑うことくらいはすると良い。」
「笑う、ですか。」
「病は気から、と言うがぁ。まず滅入ってしまったのなら笑顔からだのぉ。これなら横になったままでも出来るぅ。」
「それは…まあ。」
確かに、最も労力を使わずこの状態を脱する最適解かもしれません。が、人間笑えと言われてすぐ笑えるものではありません。
「私が笑わせてやろう。ん゛ん、この間のことだぁ。ちょいと海に移動しようと瞬間移動をしたのだがな、なんと到着したのは湖だったのだぁ。」
「…今の何が面白いのですか?」
「辛辣だなぁ!水のある場への移動だが海と湖の大きさを間違えておったという話だぁ!」
「いや解説されてもさっぱりですが。」
神様の冗談は人間の龍平にはいまいち理解できません。
「む、むぅ…!ではこの話ならどうだぁ!」
龍神様はその後、色々な神様あるあるな失敗談を話して聞かせましたがどれもこれも龍平はぴんと来ません。しばらく粘っていましたが、ついに龍神様が折れてしまいました。
「むぁー、どれもだめかぁ!そもそも龍平が腹を抱えて笑っているところを見た記憶は無いぞぉ!あぁー!」
龍神様が頭を抱えて悶絶していると「クス」っと笑う声が聞こえました。
「む?龍平、今お主…。」
「あぁ、すみません。いえだって天下の龍神様が人間1人笑わせるためにそんなに頭抱えて…ははっ。」
龍平は面白い話をしようとしても出来ない龍神様をみてクスリと笑いました。決して腹を抱えた大爆笑ではありませんが、気分を晴らすには十分です。
「さ、気分も切り替わったし俺は畑仕事をしてきますよ。」
「そ、そうかぁ。」
「そうだ龍神様。今度は俺を笑わせられるくらいの話を考えておいてくださいよ。」
「それは難解だなぁ。」
こうして、ささやかな笑みを浮かべながら二人は暑い夏を過ごすのでした。
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